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会社設立時の「見せ金」はNG!正しい資本金の計上方法を解説

見せ金

会社設立直後では、銀行や取引先からの信用を得るための判断材料の一つに資本金の額が挙げられます。当然、資本金が多い方が信用も得られ、融資が受けやすいからです。しかし、設立時に多額の資本金を用意することが難しい場合もあります。そのような場合には、資本金を多く見せるために「見せ金」と呼ばれる方法が使われることがありますが、これは絶対にやってはいけません。

今回の記事では「見せ金」がNGな理由やデメリットについて解説していきます。

会社設立時の資本金「見せ金」は法律違反

会社設立時の資本金を装う「見せ金」は融資者や関係者を欺く犯罪です。まずは「見せ金」の概要について解説していきます。

「見せ金」とは金額を偽装すること

「見せ金」とは、会社設立時などに資本金を実際よりも多く見せるために行われる行為のことを指します。具体的には、自分で資本金を用意するのではなく、一時的に資金を借り入れる等して仮の資金を用意して、登記の際に記載する資本金の金額を偽装し、登記が済んだら借りたお金を返済する方法です。この行為は自社の資本金を大きく見せて信用を得るための悪質な方法として法律で禁止されており、信頼性や透明性を欠いた行動とされています。見せ金が発覚すると、金融機関や取引先からの信用を失うだけでなく、法的な罰則を受けたり、会社設立が無効とされるリスクがあります。

資本金の「見せ金」は違法

資本金の「見せ金」を行うと、以下の3つの法律に違反する場合があります。

1、公正証書原本不実記載等罪(刑法157条)

公正証書原本不実記載等罪は登記官などの公務員に対し虚偽の申し立てをして、登記簿や戸籍簿などの公正な証書の原本に不実な記載をさせるか、または公正な証書の原本として使用される電子記録に不実な記録をさせる罪です。見せ金は資本金の金額を不正に高く見せるので、公正証書原本不実記載等罪が成立します。公正証書原本不実記載等罪で起訴されると最大で5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。

2、特別背任罪(会社法960条)

特別背任罪は、取締役など株式会社において一定の権限を持つ者が自己または第三者の利益のため、または会社に損害を加えるために、会社の任務に違反する行為を行い、会社に財産上の損害を与えた場合に成立する罪です。見せ金は、発覚すると会社に大きな損害を与えるため、特別背任罪が成立します。特別背任罪で起訴されると「10年以下の懲役」「1,000万円以下の罰金」「懲役・罰金の両方」のいずれかに処されます。

3、預合いの罪(会社法第965条)

預合いの罪は、設立者と金融機関が共謀する罪で、資本金を払い込む金融機関からの融資を受け、借りた資金を資本金としてそのまま払込金融機関に資本金として使うことを禁止しています。これも見せ金の一種ですが、金融機関から融資を受け、その融資を資本金にする見せ金だけは「預合いの罪」として個別に刑罰が設定されています。預合いの罪で起訴されると、預合いを行った者、預合いを受けた者の両方が「5年以下の懲役」「500万円以下の罰金」「懲役・罰金の両方」に処されます。

資本金の「見せ金」が禁止されている理由

資本金の「見せ金」が禁止されている理由は、大きく2つにまとめることができます。

1つ目は、株式会社という制度の信頼が損なわれることです。資本金を偽装することで会社の実際の財務状況が隠され、取引先や投資家など関係者に対して誤った情報が提供される可能性があります。これにより信頼を失い、関係者との信頼関係が損なわれることがあります。

資本金の見せ金が横行すると、どの会社の資本金が正しいのかが分からなくなり、経済全体に混乱や不安を引き起こす可能性があります。正確な財務情報が提供されない場合、市場の効率性や透明性が損なわれ、経営者個人だけでなく経済全体に悪影響を及ぼすことがあるので厳しく禁止されています。

2つ目は法律で禁止されているからです。預合いの罪のように、行為そのものが法律で禁止されているため、取引や投資に関わるさまざまなリスクを引き起こす可能性があります。また、預け合い以外の見せ金も公正証書原本不実記載等罪、特別背任罪に問われます。

このように、資本金の「見せ金」は会社や経済に対する信頼を損なうだけでなく、法律違反や経済的リスクをもたらすため、絶対に行ってはいけません。

「見せ金」が発覚したらどうなる?

見せ金や預け合いなどの違法行為は、信頼性や信用を失うだけでなく、罪に問われる可能性があります。そこで見せ金が発覚したらどうなるかを説明します。

見せ金が発覚すると会社設立が無効になる

見せ金が発覚した場合、それに関与した者や会社自体が法的な責任を負う可能性があります。また、見せ金が発覚した場合、会社の信頼性や法的地位に影響が及び、会社設立が無効になる可能性もあります。先ほど紹介したように、株式会社の仕組みを根本から揺るがしかねないため、そもそも見せ金を行った法人は設立させない。という判断が下されます。

金融機関からの融資が困難になる

金融機関は信頼性や財務健全性を重視し、違法行為や不正行為に関与した企業に対しては融資を行わないことがあります。見せ金が発覚すると、企業の信用が損なわれ、金融機関からの融資を受ける障害となります。そのため、法令を遵守し、透明性と正確な財務情報を提供することが重要です。会社設立が無効になると、会社設立を無効にされた事業主との取引は金融機関にとってリスクしかないため、今後の資金調達が困難になります。

顧客からの信頼を失い、ビジネスができなくなる

顧客は信頼できる企業との取引を希望しているので、違法行為や不正行為に関与した企業と取引するメリットはありません。見せ金が発覚すると、企業は顧客との信頼関係を失い、事業を進めることが相当に困難となります。最悪の場合、契約破棄や損害賠償請求を受ける場合があります。したがって、企業は透明性と法令順守を重視し、信頼性を維持することが極めて重要です。

これらのリスクを負ってまで違法な見せ金をやるべきではありません。

「見せ金」を回避するための注意点

続いて「見せ金」を回避するための注意点と対応法について紹介していきます。

資本金の出所を明らかにする

「見せ金」を回避するためには、その資金の調達方法を客観的に証明することが重要です。株や不動産などの資産を売却した自己資金を資本金にすると、売却の際の履歴が残るため、出所を証明しやすくなります。

資本金の出所や内容が明確でない場合や、偽装的な取引が行われていた場合には、見せ金の可能性が疑われるので、資本金の出所が証明できるように注意しましょう。見せ金かどうかの判断が難しい場合には、税理士などの専門家に相談してください。

親族・友人などから借りたお金は資本金にしない

見せ金は一時的に借りたお金で資本金を不正に多く見せる方法ですが、創業時に親族や友人などからお金を借りて会社を設立することも多いです。ですが、借りたお金を資本金にすると見せ金を疑われてしまいます。

以前は会社設立のために1,000万円の資本金が必要でしたが、現在は資本金1円から会社設立が可能です。資本金の調達を親族や友人に対して行うのであれば、お金を借りるのではなく、出資を受けて発起人や株主・役員になってもらうのも1つの方法です。

健全な「会社設立」をご支援します

見せ金が露見すると、銀行や投資家からの信用を喪失するだけでなく、法的な罰則を受けたり、会社設立が無効とされる可能性があります。刑法においても違法行為として厳しく規制されています。今回の記事のポイントを確認し、違法行為を避け、法令を順守し、健全な会社設立を目指しましょう。

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投稿日: 2024年4月1日   11:57 am
更新日: 2024年8月22日   9:35 am