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税理士費用
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税務調査の税理士費用はいくら?依頼するメリットや注意点を解説

税務調査の通知が来たら、誰しもが不安になると思います。 もし、通知が来てしまったら、どのような手続きでどう対応したらいいか分からない方がほとんどではないでしょうか。また、手続きの流れが分かっても、膨大な時間と手間がかかり、精神的な負担もかかります。 そこで、税金やその手続きに詳しい税理士に立会を依頼するケースもあります。しかし、税理士に依頼するには、当然、費用がかかります。 この記事では、税務調査を税理士にする場合の費用、依頼するメリットや注意点を解説します。ぜひ、最後までご覧ください。 税務調査とは そもそも税務調査とは、徴税機関が我々納税者の申告内容に誤りがあった場合に、訂正を求める調査のことを言います。この調査は主に、国税庁及びその地方支局である国税局、国税事務所、税務署などにより行われています。法人のイメージが強いかもしれませんが、個人事業主でも税務調査を受けることがあります。 確定申告は自ら申告するので、その内容や税金の金額を間違えてしまう場合もあります。中には、悪質な納税者によるウソの申告により、不当に納税を免れようとする場合もあります。そこで、納税者の間で不公平が生じないように、納税の義務が果たされていないとされる納税者に対して、誤りを正す為に、税務調査が行われます。 税務調査の税理士費用は? 税務調査を税理士に依頼するとき、気になるのが依頼にかかる費用です。 費用(報酬)は主に、以下の3つに分類されます。 ・事前準備の対応 ・税務調査当日の立会い ・修正申告になってしまった場合の代行 それぞれ解説していきます。 まず、事前の準備にかかる費用で4〜6万円ほど必要になります。 また、税務調査の立会いに必要な費用は、日当制で約3〜5万円×調査日数で算出されるのが相場とされています。調査日数は平均で、1〜2日とされています。 さらに、税務調査後に修正申告が必要になり、その手続きも依頼される場合は、プラスで10〜20万円ほどが必要になる場合があります。 遠方から依頼の場合、税理士に現場まで直接足を運んでいただくケースもありますが、その場合は、必要に応じて交通費や宿泊費も負担しなければなりません。また、内容や企業の規模によっては、準備に数日かかることもあり、費用がかさむ場合があるので注意が必要です。 ただし、これはあくまで相場になります。料金は税理士によって異なりますので、依頼するときは事前に見積りをすることをおすすめします。 税理士に依頼するメリット 税務調査において、調査の対象者には細かく説明が求められます。会計、税務に詳しくないと、伝え方があやふやになってしまったり、調査官に事情がうまく伝えられないことがあるでしょう。そのことが原因で、修正申告をしなければならない可能性もあります。 そこで、調査官と対等に話ができる税理士に依頼することを考えるのです。ここでは、税理士に依頼した際のメリットについて3つご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。 ①調査が長引かない 納税者自身で対応した場合、調査官との話し合いのなかで意見が折り合わず、調査が長期化してしまうことがあります。そのため、税理士に立会いを依頼することで、意見の食い違いにならないように交渉してもらうことができるほか、書類の不備を指摘された場合に、速やかに対応できるため調査が長引くことがなくなります。 ②不要な追徴課税を避けれれる 税務調査の立会いを税理士に依頼することにより、不要な追徴課税がなくなる可能性があります。例えば、経費の内容についての詳細を聞かれた際、正しく書類を記入していても、根拠を明確にすることができなかったり、焦ってしまい曖昧な回答をしてしまうと、経費計上を否認されてしまうことがあります。そうなってしまうと最悪な場合、本来納める税金に追加で加算税などを納めなければならなくなります。これが、追徴課税です。 ですが、税理士であれば調査官とのやり取りに慣れていますので、税法に沿った具体的な根拠をきちんと説明することができます。経費の計上や申告した内容が否認される可能性を低くすることができ、不要な追徴課税を回避することができるでしょう。 ③税務調査官とのやり取りを任せられる 顧問税理士がいる場合は、通常税務調査の前に税理士に連絡がいくことになります。調査後の日程調整や、調査当日の調査官とのやり取りを税理士の方が行うため、依頼者である納税者の負担は大きく減らすことができます。対応にかかる時間の削減だけでなく、納税者の心理的な負担も軽くなります。 税理士を選ぶ際の注意点 ここまでは、税務調査を税理士に依頼するメリットをご紹介してきました。ここからは、税理士を選ぶ際の注意点を3つご紹介します。是非、参考にしてみてください。 税理士事務所の所在地 注意点の1つとして、依頼しようとしている税理士事務所の所在地の確認があります。税理士事務所が近所であれば、速やかに顔をあわせて相談することができます。顧問契約を結ぶ場合は、お互いのオフィスや、自宅から距離が近いと定期的に打合せをすることができるでしょう。 一方で、遠方の税理士事務所に依頼してしまうと、費用の相場の部分でも説明したように、税理士の方から現場に足を運んでもらった場合に、交通費や宿泊費等を負担しなければいけない場合があったり、納税者の方が税理士事務所に訪問することになったときにも、自身の交通費と宿泊費が発生する為、税理士事務所の選定には注意が必要です。 税理士の得意分野の見極め 税務調査で税理士を依頼しようと思っても、下調べなしに依頼することはとてもリスキーです。税理士にも得意・不得意な分野があります。どの税理士も税務調査に強いというわけではありません。しっかりと対応してもらうためには、税務調査に強く、実績のある税理士を選ぶ必要があります。 万一、税務調査の経験や実績がない税理士に依頼してしまうと、調査官とのやり取りがうまくいかなかったり、書類に不備があっても気づくことができない場合がありますので、事務所のホームページを見て、しっかりと見極めることが大切です。 納税者の立場になって対応ができるか 税務調査の多くは、強制ではなく、納税者の任意に基づいて行われています。ですが、実際のところ税務調査は断ることができないに等しいです。とはいえ、任意調査である以上、納税者の意思を無視して行うことはできません。 実際、調査官の中には威圧的な態度をとったり、税務調査に直接関係のないプライベートに関する資料の開示を求める方も少なくありません。 そのような調査官にあたった場合でも、納税者の立場になって意見・反論してくれる税理士であれば安心して調査を終えることができるでしょう。 税理士とのやり取りの段階で、この税理士は親身になって対応してくれるかを見極めることが大切になってきます。 費用だけでなく、自身に合った顧問税理士を見つけよう このように、税務調査に対する税理士の依頼費用は、税理士によって異なります。ですが、人が動いているため決して安価なものではないので、しっかりと見積りをとって比較することをおすすめします。そのうえで、自身に合った税理士を見極めることが大切になります。 また、税務調査は物理的な負担と精神的な負担がとても大きいので、苦手意識のある方は、迷わず相談しましょう。ですが、税務調査を得意とする税理士のなかでも、しっかりと対応してくれる税理士を選ばないと、修正申告の対象となったり、追徴課税を作ってしまう場合もあるので、見積りの段階や、相談の際の税理士の人柄をきちんと見て、自身の希望に応えてくれる税理士を選びましょう。 税理士法人プロゲートは、税務調査相談や立会い、税務書類の作成・税務申告・相談を承っております。仙台市近辺の方や、宮城・山形県内の方でもご相談を受け付けております。 税務調査対策として記帳代行をお願いしたい方や、税務申告書のタックスプランニングをしてほしい方、初回相談は無料となっておりますので、お気軽にご相談ください。


社会保険手続き
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【解説】社会保険はいつまでに手続きをしたらよいのか?

会社を設立してから多くの手続きがありますが、社会保険の加入手続きの作業もその内の1つです。 手続きをしない場合、本来よりも多くの社会保険料を払ってしまったり、罰金が発生してしまったり、会社の社会的信用を落としてしまう可能性もあります。 また、従業員を採用したときに行う手続きの中には期限が決められているものもあり、期限までに手続きを終えないと、社員の労働環境や生活に支障をきたす場合もあるので、より迅速な対応が求められます。 しかし、「原則手続きはどの時期に行えばいいのか」「何の手続きをしたらよいのか」「手続きには何が必要なのか」と思う方も多いでしょう。 この記事では、社会保険とは何なのか、加入する理由や加入する条件などの詳細を解説します。 社会保険は危機に備える公的な保険 社会保険とは、病気やケガ・失業など、生活する上での危機に備える公的な保険のことです。 以下の5種類はまとめて広義の社会保険と呼ばれることが多く、健康保険・厚生年金保険・介護保険を狭義の社会保険、雇用保険・労災保険は労働保険と呼びます。 健康保険(医療保険):民間企業に勤めている人、その民間企業に勤めている人の家族が加入する医療制度 厚生年金保険(年金保険):厚生年金保険が適用される企業の会社員や公務員が加入する公的な年金制度 介護保険:介護が必要な人が給付金やサービスを受けられる公的な社会保険 雇用保険:失業時や就労継続困難の際に給付金やサポートを受けられる保険 労災保険(労働者災害補償保険):業務や通勤中のけがや病気、死亡などに対して補償を受けられる保険 社会保険の加入義務がある事業所 社会保険の加入には、加入の義務がある強制適用事業所とそうでない事業所があります。 強制適用事業所に該当する事業所は、被保険者となる従業員を必ず社会保険に加入させなければなりません。 強制適用事業所にあたる事業所とは、被保険者が1人以上いる法人事業所、また常に5人以上を雇用している個人事業所です。ただし、5人以上の雇用をしている個人事業所でもサービス業の一部や農林水産業、畜産業などは強制適用事業所には含まれません。また、学校法人事業所の場合は、社会保険ではなく私立学校教職員共済制度に加入します。 強制適用事業所に当てはまらない事業所でも任意適用事業所として、社会保険に加入するという方法もあります。 社会保険の適用を除外されるのは、日雇い、2ヶ月以内の期間を定めて雇用される人、所在地が安定しない勤務先に勤める人、4ヶ月以内の季節的業務に雇用される人、6ヶ月以内の臨時的事業に雇用される人などが該当します。 ただし、日雇いや2ヶ月以内の契約、季節的業務、臨時的事業に就いている人でも、継続して雇用される見込みがある場合には被保険者となります。 このように、一部の業種と短時間労働者を除き、継続的に事業所に雇われている人のほとんどは社会保険に強制加入になるといえるでしょう。 社会保険に加入しないとどうなるの? 社会保険に加入すべき事業所が加入しないまま放置していると、思わぬリスクを負うことになってしまうことも少なくはありません。 会社設立後には早急に社会保険への加入手続きをするべきですが、万が一、遅れた場合だと次のようなリスクが挙げられます。 ・国や地方自治体の助成金を受給できない場合がある・最大で過去2年分の保険料を追徴される・損害賠償を請求される可能性がある 国や地方自治体の助成金を受給できない場合がある 社会保険に加入していない場合、国や地方自治体の助成金を受給できない場合があります。 さらに、社会保険の適用事業者にもかかわらず、加入していない場合、健康保険法第208条によって罰金の支払いの義務が科される恐れがあります。このように関係法令を遵守していないと、助成金の申請条件を満たしません。 助成金の受給を検討しているのであれば、社会保険の加入手続きはきちんと済ませておきましょう。 最大で過去2年分の保険料を追徴される 社会保険の適用事業者なのに加入していない場合、年金事務所の調査によって未加入であると発覚することがあります。その場合、最大で過去2年分の社会保険料が追徴されます。 その間に退職した従業員がいれば、会社が全額負担しなければならなくなるので、本来よりも負担額が増えるでしょう。 また、健康保険法第208条によれば、加入義務があるにもかかわらず社会保険に加入していない場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されると記載されています。 これらのリスクを踏まえると、適用事業者であれば会社設立後は速やかに社会保険に加入すべきだと言えるでしょう。 損害賠償を請求される可能性がある 社会保険に未加入である場合、従業員から損害賠償を請求されるケースが見られます。 例えば、厚生年金保険料を支払っていなかったら、従業員が将来もらえる年金額は減少します。会社に社会保険への加入義務があった場合、会社側の過失となってもおかしくありません。 社会保険に未加入の状態は、従業員にとって不利に働くことも多々あります。損害賠償を請求されると、会社の社会的信用も危うくなってしまいます。 社会保険に加入するときの条件 従業員は、週の所定労働時間が常時雇用されている従業員の4分の3以上かつ1ヶ月の所定労働日数が常に雇用されている従業員の4分の3以上である場合は、社会保険に加入しなければいけません。 すべての法人の事業所は、国が法律で定めた保険に加入しなければならず、事業所ごとに保険が適用されます。 適用事業所という社会保険の適用対象となる事業所があり、強制適用事務所および任意適用事業所の2種類に分けられます。以下よりそれぞれ紹介していきます。 強制適用事業所 強制適用事業所とは、事業主や従業員の意志に関係なく、法律により加入が定められている事業所のことです。 強制適用事業所にあてはまる事業所は次の通りです。 ・常時5人以上の従業員を使用する個人事業所(飲食店や理美容業、農林漁業などを除く)・常に従業員を1人以上使用する法人の事業所 任意適用事業所 任意適用事業所とは、強制適用事業所とならない事業所で厚生労働大臣の許可を得て、健康保険・厚生年金保険の適用となった事業所のことです。 事業所で働く半数以上の人が適用事業所になることに同意し、管轄の年金事務所か事務センターで事業主が申請を行います。 申請が受理され、厚生労働大臣の認可を受けると適用事業所になれ、加入義務がある従業員全員の健康保険・厚生年金保険への加入が必須になりますので、同意しなかった従業員も、加入義務がある場合は加入しなければならないことになります。 保険の給付や保険料は、強制適用事業所と同様です。 なお脱退する場合は、被保険者の4分の3以上の同意が必要です。同意を得て、事業主が脱退の申請を行い、厚生労働大臣の許可を受けることで適用事業所の脱退が可能になります。 社会保険の加入手続きは? 事業所の社会保険への加入手続きは、日本年金機構の事務センターか年金事務所で手続き可能です。 以下の表は、事業所別に加入手続きの提出期日や提出書類、提出先をまとめたものです。 事業所提出期日提出書類提出先強制適用事業所会社を設立してから5日以内・健康保険、厚生年金保険、新規適用届・健康保険、厚生年金保険、被保険者資格取得届・健康保険、被扶養者(異動)届・健康保険、厚生年金保険、保険料口座振替納付申出書・その他各種添付書類事務センター管轄の年金事務所任意適用事業所半数以上の従業員の同意を得た後・健康保険、厚生年金保険、任意適用申請書、同意書・健康保険、厚生年金保険、被保険者資格取得届・健康保険、被扶養者(異動)届・健康保険、厚生年金保険、保険料口座振替納付申出書・その他各種添付書類事務センター管轄の年金事務所 参考:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧」 社会保険の手続きは事務センターか管轄の年金事務所に提出する形が一般的ですが、近年は電子化により、電子申請での加入手続きも可能になっています。 なお、2020年4月より、資本金等の額が1億円を超える特定の法人・相互会社・投資法人・特定目的会社は、電子申請での手続きが義務づけられているので注意しましょう。 加入に必要な書類 社会保険に加入するには、次の書類の作成が必要です。 強制適用事業所の場合に必要な書類 健康保険・厚生年金保険、新規適用届 健康保険・厚生年金保険、被保険者資格取得届 健康保険・被扶養者(異動)届 健康保険・厚生年金保険、保険料口座振替納付申出書 その他各種添付書類 任意適用事務所の場合に必要な書類 健康保険・厚生年金保険、任意適用申請書、同意書 健康保険・厚生年金保険、被保険者資格取得届 健康保険・被扶養者(異動)届 健康保険・厚生年金保険の保険料口座振替納付申出書 その他各種添付書類 また、事業所によって添付書類の内容は異なりますので、当てはまる事業所にあわせて書類の用意をしましょう。 健康保険・厚生年金保険新規適用届には次の書類も必要です。 事業所添付書類法人事業所・法人(商業)登記簿謄本法務局のホームページから交付請求が可能事業主が以下である場合・国・地方公共団体・法人・法人番号指定通知書のコピー国税庁法人番号公表サイトで確認した法人情報のコピーでも〇強制適用事業所にあてはまる個人事業所・事業主の世帯全員の住民票(原本) 参考:日本年金機構「新規適用の手続き」 加入手続き期限と提出先 前述の通り、社会保険への加入手続きの期限は、会社設立してから5日以内に行わなければなりません。 手続きは、必要書類を年金事務所に提出すると完了になり、次の3つの方法で行えます。 ・電子申請→提出先欄で事業所の所在地を管轄する年金事務所を選択・郵送→事業所の所在地を管轄する年金事務所・事務センター・窓口→事業所の所在地を管轄する年金事務所 マイナンバーの取り扱い 従業員の社会保険や労働保険などの各種保険や税金の手続きを行うために、マイナンバーを提供してもらう場合があります。 近年は入社する際にマイナンバーを提出する会社も増えていますが、マイナンバーは特定個人情報にあたるため取り扱いには注意が必要です。 なお、扶養家族がいる従業員の場合は、本人以外に扶養家族のマイナンバーも必要です。従業員からマイナンバーを提供してもらう際は、利用目的を明らかにすることが法律で定められています。 マイナンバーを提供してもらう方法 マイナンバーを提供してもらう方法は、口頭や番号を転記したメモでの提供は認められず、個人番号確認と本人確認が求められます。 個人番号が確認できる書類は、以下の通りです。 ・個人番号カード・個人番号通知カード・住民票 個人番号カードは本人確認書類としても利用できるため、個人番号カードのみで提出が可能です。 個人番号通知カードと住民票の場合は、本人確認として、運転免許証やパスポートなどの身分証明書の提出が必要です。 マイナンバーは特定個人情報にあたるため、情報管理には注意が必要で、マイナンバーの取扱者が個人番号を盗用、第三者へ提供した場合、最大4年以下の懲役または200万円以下の罰金が課されます。 社内のマイナンバー取扱者の限定や、管理システムの導入、活用など、情報漏洩が起こらないよう適切な管理を行いましょう。 社会保険に加入しなくてよい場合 会社を設立すると、必ず社会保険に加入しなければならないというイメージがありますが、例外もあります。 以下の2つの場合は社会保険への加入は不要です。 ・従業員がいない1人社長で役員報酬がゼロの場合・パートやアルバイトを雇用する場合 従業員がいない1人社長で役員報酬がゼロの場合 会社を設立し、1人社長で会社から役員報酬を受け取らない場合、社会保険に加入しなくても構いません。 なぜなら無報酬の役員しかいない法人は、社会保険の適用事業所の要件を満たさないためです。報酬がゼロの場合、給与から天引きできないので、年金事務所から加入を断られる場合もあります。 その場合、国民健康保険と国民年金に加入することになります。 パートやアルバイトを雇用する場合 パートやアルバイトの従業員は、社会保険に加入しなくてよい場合があります。 被保険者数が101人未満の企業で働いていて、以下の条件のどれかに該当するパートやアルバイトの従業員です。 ・週の所定労働時間が30時間未満・月額賃金が8.8万円を超えない・雇用期間が2ヶ月以内の見込み・学生 ただし、2024年10月以降は被保険者数の条件が厳しくなる予定なので、今後の制度改正に注意しておきましょう。 よくある質問|5つご紹介 会社設立後の社会保険に関するよくある質問を5つ紹介します。 会社設立後に社会保険の適用事業所になった日から5日過ぎた場合はどうなりますか? 会社設立後に社会保険に加入しました。保険証はいつ届きますか? 社員の入社手続きに必要な書類は? 社会保険に加入する人の条件は? アルバイト・パートでどれぐらい出勤したら社会保険の対象となる? 会社設立後に社会保険の適用事業所になった日から5日過ぎた場合はどうなりますか? 会社設立から5日経過していても遡って加入できます。 必要書類を揃えるのに準備が必要なので、年金事務所に問い合わせて早急に手続きを済ませましょう。 会社設立後に社会保険に加入しました。保険証はいつ届きますか? 協会けんぽの場合、社会保険の手続きが完了してから2週間ほどで保険証が事業主に発送されます。ただし、3月・4月の繁忙期には3週間ほどかかる場合もあります。 保険証が届く前に医療機関で受診する場合は、いったん全額を支払わなければなりません。 あとで申請すれば、自己負担分を除いた医療費が払い戻されます。 社員の入社手続きに必要な書類は? 従業員の入社前に用意しておく書類には以下のようなものがあります。 雇用契約書・労働条件通知書 扶養控除等申告書 健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届 採用通知書(内定通知書) 入社誓約書 これらの書類は返信用封筒を添えて郵送し、署名・捺印後、返送してもらいましょう。 社会保険に加入する人の条件は? 社会保険に加入する対象者は、以下のとおりです。 正社員や会社の代表者や役員など75歳未満の人 70歳未満の以下に該当する人 週の労働時間、1ヶ月の労働日数が同様の業務に従事している 所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上である 以下に該当する短時間労働者 従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している※2024年10月から51人以上の企業に変更予定 1週間の所定労働時間が20時間以上 フルタイムと同様に2ヶ月を超える雇用の見込みがある者 夜間学生、通信制は除く学生ではない者 月額の賃金が8.8万円を超える アルバイト・パートでどれぐらい出勤したら社会保険の対象となる? アルバイト・パートは、月の所定労働時間が一般社員の4分の3以上である時に社会保険の対象となります。 また、月の所定労働時間が一般社員の4分の3以上でなくても、次にあてはまる場合は社会保険の加入が必要です。 従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している場合は、1週間の所定労働時間が20時間以上 フルタイムと同様に2ヶ月を超える雇用の見込みがあり、学生ではない(夜間学生、通信制は除く) 月額の賃金が8.8万円を超える 社会保険の手続きはお任せください! 今回の記事では、社会保険の手続きをする理由や加入しないとどうなるのか、社会保険の手続きの条件やポイントをまとめました。 2024年10月には社会保険の適用範囲の拡大も予定されており、特にはじめて会社を設立すると分からないことがよりいっそう増えてくるのではないでしょうか。その際は、状況や必要に応じて顧問税理士に相談してください。社会保険労務士法人プロゲートでは、社会保険労務士以外にも、税理士、行政書士などのプロフェッショナルが在籍しており、ワンストップでご相談に対応させていただきます。また、その他の専門家とのネットワークも広く、当社で対応が難しい場合であっても、適切な専門家をご紹介させていただきます。


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社労士の独占業務とは?出来ることを徹底解説!

起業して従業員を雇うと労働関係や社会保険関係の手続きが必要ですが、自分で行うとなると専門的な知識が必要となり、時間がかかってしまいます。 これらの手続きを行ってくれるのが社会保険労務士(社労士)と呼ばれる専門家です。社労士には、独占業務と呼ばれる有資格者しか携われない業務があります。 今回の記事では、社労士の独占業務の内容や他の士業との関係性などを詳しく解説します。 社労士の独占業務の内容とは 社労士の業務は1号業務、2号業務、3号業務があります。 〇号業務といわれるのは、社労士の業務について定める社会保険労務士法第2条の各号にそれぞれの内容が明記されているからです。よく、3号業務も独占業務に含まれていると言われることがありますが、3号業務は簡単に言うと労務管理における社会保険に関する相談業務です。 相談業務は社労士だけでなく中小企業診断士や各種コンサルタントも行えるので、社労士の独占業務には該当しません。 今回は、社労士の独占業務にあたる1号業務と2号業務について解説します。 ※参考:G-GOV法令検索「社会保険労務士法」 1号業務|申請業務と手続き代行 社労士の独占業務の1号業務とは、行政機関に提出する書類の作成や当事者の代理人になることです。 社労士の独占業務である1号業務で行われる主な業務内容は、次の3つです。 労働及び社会保険に関する法令に基づいた申請書等の作成 申請書等に関する手続き代行 労働及び社会保険に関する法令に基づいた、申請、届出、報告、審査請求等の代理 労働保険の年度更新の手続きや健康保険の給付申請手続きなど企業が従業員を雇用すると様々な手続きを行なう必要が出てきます。 書類作成は本来は総務課で行われることが多いですが、普段の業務と並行して書類を作成するのは手間がかかりますし、一定の専門知識が必要になります。 そこで、社労士が専門的な知識を生かして書類を作成することで、企業は業務の効率化を図ることができます。このような労働社会保険関連の手続きを仕事として行えるのは、社会保険労務士だけとされています。 次の例は社労士が可能な申請・届出です。 ・健康保険・厚生年金保険の算定基礎届、月額変更届 ・労働保険の年度更新手続き ・健康保険の給付申請手続き ・労災保険の休業給付・第三者行為の給付手続き ・死傷病報告等の報告書の作成と手続き ・解雇予告除外認定申請手続き ・年金裁定請求手続き ・審査請求/異議申立/再審査請求などの申請手続き ・各種助成金申請手続き ・労働者派遣事業などの許可申請手続き ・求人申し込みの事務代理 参考:東京都社会保険労務士会 2号業務|帳簿作成 社労士の独占業務である2号業務で行われる主な業務内容は、次の通りです。 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類を作成すること 労働保険関連の帳簿書類には、法定三帳簿といわれる企業で持っておくべき書類があり、労働者名簿・賃金台帳、出勤簿があります。法定三帳簿は、労働者を雇用している企業は必ず作成・保管しなければなりません。 また、就業規則については常時10人以上の労働者を使用する場合は義務付けられています。最初に作成してからも法改正があると適宜内容を変更しなければならず、1号業務と同様に専門的な知識が必要です。 小さな会社や創業して間もない企業が全ての書類を備えておくのは難しい場合が多いので、こうした労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成も社労士の独占業務とされています。 社労士と他の士業との関係性 社労士資格は社労士の資格を持っている者だけがその業務を行える業務独占資格が法令で定められています。 独占業務は有償独占と無償独占の2つに分けられます。 有償独占業務とは、報酬はもらえませんが無資格者でも独占業務を行えること。無償独占業務はたとえ報酬をもらわなくても資格を所有している者でなければ業務を行えないことです。 下の表は、医師と主な士業の独占業務に関わる有償、無償をまとめたものです。 有償独占業務 弁護士弁理士公認会計士社会保険労務士行政書士 無償独占業務 医師司法書士税理士 社労士の独占業務は弁護士であれば有償で代行できますが、その他の士業は有償で行えません。弁護士は労働・社会保険分野を含む法律事務全般を取り扱えるため、社労士の独占業務である1号業務・2号業務を行えます。 社労士の業務をメインに行う弁護士は少ないものの、業務の一環として就業規則の作成などを引き受けるケースもあります。また、税理士は社労士と関連した業務を受けることが多く、独占業務のルールにおいて注意が必要です。 社労士業の中で税理士が行うことができるのは労働・社会保険料の計算で届出はできません。 社労士側においては、税理士の業務は有償でも無償でも税理士のみが行える無償独占業務なので、自らの業務として年末調整代行を行うと、違法行為となってしまいます。 社労士の独占業務を社労士以外が行った場合、社会保険労務士法第32条の2で定められている通り、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を受ける可能性があるので注意しましょう。 社労士に依頼するメリット・デメリット 自分の業務をしながら社会保険関係の手続きをするのは困難です。以下に、社労士に依頼するメリットとデメリットを紹介しますので参考にしてください。 社労士に依頼するメリット ・労力の手間が減り、経営に集中できる ・労働問題に対応しやすくなる 労働問題や社会保険関係の書類は専門的な知識が必要になります。知識がない中で全ての書類を社内で作成するとなると、手間と労力がかかります。 社労士に依頼することで手間が減り、自分たちの業務に集中して取り組めます。また、従業員と企業との話し合いでは話が平行線のままで解決しなかったり、時間がかかってしまうケースも多いです。 プロの社労士に日頃からアドバイスを受けることで訴訟などのトラブルに発展するリスクも抑えられるでしょう。 従業員数が多い、反対に従業員が少なく人手が足りない、従業員の入退社が多いといった企業にはメリットが大きいのです。 社労士に依頼するデメリット コストがかかる 当然、依頼するには費用がかかってきます。一般的な顧問料の相場は月額1~2万円といわれていますが、費用は社労士や依頼する内容によって違います。 検討する場合は、事前に確認しておきましょう。 社労士に依頼する際の3つのポイント 社労士に依頼する際に見るべきポイントは次の3つです。 ・依頼したい業務範囲の確認 ・社労士事務所の経験・実績 ・社労士事務所のセキュリティレベルの把握 依頼したい業務範囲の確認 まず、依頼する内容が社労士に依頼するものなのかを確認しておきましょう。 手続きの量が膨大で業務が追い付いていなかったり、知識が足りずにトラブルに対応できないなど、企業の課題は様々です。 そのため、社労士に依頼をする際は、具体的に自社がどんなことに困っているのか、どんなサポートを受けたいのかを、先に整理しておきましょう。 場合によっては、社労士ではなく他の士業に依頼したほうがいい場合もあります。依頼する前に事前に確認することで、受けたいサポートを効果的に受けられます。 社労士事務所の経験・実績 社労士の業務範囲は社会保険の手続きから給与計算、労務コンサルティングや助成金の申請など多岐にわたります。 しかし、個人事業主や中小零細企業向けの労務相談を専門的に行っている社労士や、給与計算をメインに対応している社労士事務所など、全ての社労士があらゆる分野の業務に対応できるわけではありません。 依頼する際は、依頼したい社労士の実績や得意分野を調べ、自社のニーズと合致する社労士を選びましょう。 社労士事務所のセキュリティレベルの把握 また社労士事務所のセキュリティレベルも把握しておきましょう。 社労士には守秘義務があるので、故意に提供された情報を他人に漏らすことはありませんが、万が一流出してしまうと大変なことになってしまいます。 そのため社労士へ依頼をする際は、依頼したい社労士事務所がどのくらいセキュリティ対策に力を入れているかをチェックしておきましょう。 基準としては、プライバシーマークやSRPⅡ、ISO等の第三者機関から認証を受けているかどうかなどが挙げられます。このマークや認証があるということは公的に認められている事務所である証拠なので、確認しておくとよいでしょう。 昨今の企業に対するサイバー攻撃の影響で、社労士だけでなくすべての企業がセキュリティ対策に注目しています。従業員の個人情報を安全に保つためにも、セキュリティ対策が万全な社労士事務所を選びましょう。 また、会社経営は、対人関係が大切になってきます。今後の経営において長い付き合いになるので、無料相談や問い合わせで確認するのもおすすめです。 社労士に依頼する場合の費用 社労士に依頼する場合、顧問契約時とスポット契約時で金額が変わってきます。 スポット契約とは、複数回の依頼や継続を必要とせず、1回限りの業務委託契約のことです。 社労士に依頼する場合、スポット契約を結ぶよりも顧問契約を結んで必要に応じて追加で業務を依頼することが多いです。また、顧問契約の場合は従業員数に応じて金額も変わってきます。 大切なのは、「顧問契約でどの業務まで行ってくれるか」「追加依頼した場合に費用は安くなるのか」などを確認することです。 実際、独占業務の1号業務は顧問契約だけで事足りる場合が多いので、まずは顧問契約にするように考えるとよいでしょう。 社労士の独占業務に関するよくある質問 ここでは社労士の独占業務に関してよくある質問を3つ紹介します。それぞれ見ていきましょう。 無資格でも報酬を受けなければ独占業務をおこなってもいい? 残念ながら、報酬を受けない場合でも社労士の独占業務をおこなうことはできません。 「業としておこなっている」とみなされた場合、社会保険労務士法に違反、罰せられることもあります。 税理士事務所に社会保険手続きを依頼したのは誤りでしょうか? 税理士はお金に関するプロであり、社労士同様に税理士にしかできない独占業務が存在します。 社会保険に関する手続きは社労士の独占業務と定められているため、税理士への依頼については、税理士に問題ないか確認しましょう。 就業規則を修正したいのですが相談しなくてもいいでしょうか? 就業規則の作成自体は、必ずしも社労士が行わないといけない訳ではありません。 しかし、社労士は人材・労働に関するプロであり、各企業からの依頼によって、企業の労働状況を詳しく理解しています。 法改正にも対応できる正しい知識を持っているため、就業規則の修正の際には社労士に相談するのが望ましいでしょう。 社労士に関するお悩みは、お任せください 今回の記事では、社労士の独占業務の内容についてまとめました。 税理士法人プロゲートでは、宮城県仙台市を中心に法人及び個人事業主様の税務全般の支援を行っております。事業主様が本業に専念できるようサポートしています。弊社は、税理士法人のみならず、社会保険労務士法人も併設しております。税務・会計はもちろん、資金調達、給与計算、就業規則作成、人事労務管理、相続相談、会社設立など幅広いサービスをワンストップでの対応が可能です。 経験豊富な税理士・社会保険労務士が、お客様の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。まずはお気軽にご相談ください。 関連記事:会社設立は税理士に相談すべき?費用や相談するメリットなどを紹介!


雑費
会計関連

勘定科目の雑費とは?経費にできる金額や注意点などを解説!

勘定科目のひとつである「雑費」とは、ほかの勘定科目にどれも該当しない経費のことを言います。はっきりとした定義のない「雑費」ですが、「とりあえず雑費として計上しておこう」という判断は非常に危険なので注意しましょう。 自分で記帳業務を行っている経営者の方は、なんとなく「雑費」に仕訳をしている方は意外に多いように思います。 本記事では、会計業務を自分で行っている経営者の方に向け、勘定科目の「雑費」について詳しく解説していきます。 具体例なども交えて記帳の方法を紹介していきますので、会計や経理業務、確定申告を行う方は是非参考にしてみてください。会計ソフトを利用されている方は、領収証などを自動で読み取って勘定科目を推測してくれますが、これも100%正確というわけではないので、知識として身につけておきましょう。 雑費=どの科目の対象ではない勘定科目  雑費とは、損益計算書の販売費および一般管理費(以下、販管費)に含まれている費用科目のひとつです。 一言に、販管費と言っても様々な科目が存在しますが、なかでも「雑費」は、「どの科目の対象ではない勘定科目」のことを言います。 他の費用と比較して少ない支出で、臨時的・一時的に発生し、わざわざ勘定科目として別途設定するまでもない場合に「雑費」として計上されることがあります。 雑費に当てはまる経費とは? 実際に「雑費」として計上される場合によく見かける項目は、以下のような内容が挙げられます。 ・キャンセル料等の手数料 ・一時的な機材等のレンタル費用 ・ごみの処分にかかった費用 ・事業所、オフィスなどの引っ越しにかかった費用 ・振込手数料 ・クレジットカードの年会費 ・掃除やクリーニング等の手数料 ・サービスの解約違約金(但し、少額に限る)など 上記のように、経営上の重要度や優先度が低く、少額で一時的な支出であれば、「雑費」として計上することができます。また、中には「雑費」以外の勘定科目で仕訳できる費用も存在するので、必要経費を何の目的で使用したのかをはっきりとさせるために適切な勘定科目を設定するようにしましょう。 これといった決まりがないので分かりにくいかもしれませんが、雑費以外の勘定科目で仕訳できる内容であればそちらで仕訳を行い、どれにも該当しないということであれば雑費で仕訳するようにすると良いかと思います。 「消耗品費」との違いは? また、雑費とよく似た勘定科目として「消耗品費」が挙げられます。では、消耗品費とはどのような勘定科目なのでしょうか。 消耗品費=日用品など消耗する物品を購入した場合の勘定科目 消耗品費とは、日常の業務や事業を行っていく場合に使用する物品を購入した際に計上する勘定科目のことを言います。 例えば、コピー用紙や文房具、切手など、使用することで消耗・消費してくような物品を購入した場合の費用は、「消耗品費」として計上されます。 具体的な条件として以下のどちらかに該当すれば、「消耗品費」として計上することが可能となります。 購入金額が10万円未満である 使用可能期間が1年未満である 国税庁|「帳簿の記帳のしかた」 一つ目の「購入金額が10万円未満」という条件は分かりやすい基準ですが、「使用可能期間が1年未満」という基準は判断が難しく感じる方もいるでしょう。例えば、仕事に使う洋服だと上記の条件を満たす場合もあるかもしれませんが、そもそも経費計上できるかどうか。という判断も必要なため、個別の内容については税理士など専門家に相談するようにしましょう。 「雑費」と「消耗品費」の使い分けはどのようにするのか? 「雑費」と「消耗品費」は、具体的な定義のない勘定科目です。事業主や経理担当者の判断で比較的自由に経費計上が可能である反面、「雑費」と「消耗品費」の線引きの判断に迷う方も少なくないでしょう。 「雑費」は、臨時的・一時的に発生した費用のうち、ほかの勘定科目にも該当がないものに適用されます。消耗品費との明確な違いは、以下が挙げられます。 使用することによって消耗してくものかどうか 頻繁に発生するのか、それとも臨時的に発生するのか 物なのかサービスなのか 以上のポイントをふまえて「雑費」と「消耗品費」を使い分けるようにしましょう。 「雑損失」との違いは? 「消耗品費」と同じように、「雑費」と似ている勘定科目に「雑損失」というものがあります。「雑損失」は、事業の売上とは直接関係のない「営業外費用」に区分される経費の中のでも、ごく少額のために勘定科目を設定するほど重要性がなく、発生頻度もほとんどないといえる支出に対して使われる勘定科目のことです。 「雑費」と「雑損失」を区別するポイントは、本来の事業の売り上げに関わる支出かどうかという点です。 ここで紹介した「雑損失」も日々の仕訳業務ではほとんど使わない項目なので「雑費」との違いを理解するようにしましょう。  「交際費」との違いは? 「雑費」と明確に線引きしておくべき勘定科目なのが「交際費」です。「交際費」とは、取引先との関係性を維持するためや、よりよい経営を実現するための交渉をする際に発生した経費のことを言います。 例えば、取引先との交渉の際に食事を伴った場合の飲食代は「交際費」として仕訳します。またその際、取引先へ物品の贈与をした場合にかかった代金は金額によってですが、「雑費」として仕訳される場合もあります。 雑費にできるのはいくらまで? 「雑費」として計上できる金額の上限ですが、特に定められていません。事業を行う上で必要な経費はいくら使っても問題はありません。しかし、「雑費」は実際にどのようなものに支払った費用なのか把握しづらい勘定科目です。決算書は、事業の状況を正確に判断するためのものなので、雑費が多すぎる決算書は「事業の状況がよく分からない企業」として判断され、税務調査を実施される恐れがあります。税務調査には実地調査に1~2日間かかるため、その間の事業がストップしてしまい売り上げにも影響を及ぼす可能性があります。 また、実地調査後も税務署が必要に応じて書類を持ち帰り、税務署内で引き続き調査を進められるので1~2か月ほどの調査対応をしなくてはなりません。 調査の結果、申告内容に誤りがあった場合、「不足分の税金+加算税+延滞税」を徴収されるので、事業活動に支障が出ること以外に追加納税という支出まで生じてしまいます。 では、「雑費」として計上して問題ない金額はいくらぐらいなのでしょうか?望むなら限りなく「0円」に近い方がいいのですが、一般的には、かかった経費の5%~10%程度が目安かと思います。 雑費が多くなってしまった場合 まずは「雑費」が多くなりすぎないような工夫をすることですが、どうしても多くなりそうなときは、新しく適切な勘定科目として仕訳しましょう。また、内訳をしっかりと把握できるよう、摘要欄に「何にかかった費用」なのかを記載しておくことも重要です。 雑費として計上するときの注意点 「雑費」として用いる場合、ほかのどの勘定科目にも当てはまらない費用を仕訳けするときです。勘定科目に迷ってしまったときに「わからないからとりあえず雑費にしておこう」と安易に計上してしまっている方も多いかと思いますが、それは得策とは言えません。「雑費」を計上する際は注意しなければならないことがいくつかあるので以下でご紹介します。 ①他の勘定科目として計上できないか検討する 【雑費に当てはまる経費とは?】という部分でご紹介した、「雑費」によく使われている項目は、実は他の勘定科目として設定することが可能です。では、実際にどのような勘定科目で計上できるのかを一覧で解説していきますので、雑費が多くなってしまった場合は参考にしてみてください。 キャンセル料などの手数料 会議室を利用するために予約を取っていたが、どうしても都合が悪くなり急遽日程を変更しなければならなくなった際、キャンセル料が発生してしまいます。その時に発生してしまったキャンセル料は、「支払手数料」として処理することが可能です。 一時的な機材などのレンタル費用 事業運営の際に必要な機器や機材などの一時的なレンタル費用は、「賃借料」という勘定科目で仕訳することが可能です。会議などで会議室やレンタルオフィスを利用し発生した費用については、「会議費」として仕訳することが可能です。 ごみの処分にかかった費用 事業を進める際に発生したごみの処分にかかる費用は、「雑費」のほか「支払手数料」や「設備維持費」と言った勘定科目を設定できます。設備のメンテナンスの際に不用品を処分した際は「設備維持費」、自治体が発行するごみ処理券を購入した時は「支払手数料」と言うように計上することができます。 事業所、オフィスなどの引っ越しにかかった費用 事務所やオフィスを移転する際に発生する費用は「荷造運賃」でも処理が可能です。また、従業員が転勤を伴う引っ越し費用を会社で負担する場合、「福利厚生費」で処理をすることが可能です。 振込手数料 銀行での振り込みをした際に発生する振込手数料や代引き手数料は「雑費」以外にも勘定科目の「支払手数料」という項目で仕訳することができます。そのほかに、税理士などの報酬費用も「支払手数料」として処理をすることができます。 クレジットカードの年会費 法人用のクレジットカードの年会費も「支払手数料」や「諸会費」として処理することができます。クレジットカードの年会費以外にも、商工会議所や自治会、各業界の組合など、業務に関連する団体への会費も「諸会費」で仕訳することが可能です。 ②摘要欄に詳細を記載し、わかりやすくする 仕訳の際、帳簿の摘要欄に何のための費用として支出があったのかの詳細を記載することで、帳簿を分かりやすい状態にしておきましょう。摘要欄とは、伝票や各種帳簿にあるメモ欄のような役割となる部分です。 ボールペンを購入した場合、「文房具代として」だけ記載するのではなく、購入店舗や本数、購入するにあたっての目的など具体的に記載することで、ほかに購入したものとの区別がつきやすいというメリットがあります。 ③消費税区分をひとくくりにしない 「雑費」として支出の計上をする場合、消費税区分を間違えることの無いように注意することが重要です。取引には、消費税がかかる「課税取引」、消費税のかからない、または免除される「不課税取引「非課税取引」「免税取引」の3つがあります。「雑費」で計上するほとんどは「課税取引」に分類されますが、「不課税取引」や「非課税取引」に分類されるものも存在しているので注意しましょう。 「非課税取引」の例は、クレジットカードの分割払い時に発生する金利手数料や決済手数料などが挙げられます。 ④固定資産は雑費として計上ができない 固定資産は「雑費」として計上することができません。固定資産に当てはまる条件は以下の通りです。 1つあたりの購入金額が10万円以上である 使用可能期間が1年以上である 長期にわたり事業に使うものを固定資産と言います。一時的に発生した費用や、年会費などの雑費とは性質が全く異なる勘定科目となります。 固定資産の勘定科目は「減価償却費」として仕訳することができます。個人事業主や中小企業であれば、2026年3月31日までに取得の30万円未満の減価償却資産は、1事業年あたり300万円までは全額を経費計上が可能です。計上可能な金額に限度額が設けられているため、注意しておきましょう。 雑費の仕訳例をケースごとに紹介 「雑費」の仕訳をするうえで、実際の具体例を紹介したいと思います。以下の例を仕訳する際の参考にしてみましょう。 ボールペンを100本購入した場合 取引先への粗品としてボールペンを100本購入し10,000円を支払った場合、本来文房具は「消耗品費」として仕訳されますが、今回のケースだと「雑費」として処理します。 借方 貸方 雑費 10,000円 現金 10,000円 摘要:粗品用ボールペン代(〇〇文房具店) 事務所の移転で引っ越しをした場合 事務所やオフィスを移転する際、引っ越しで発生する費用は、「雑費」として仕訳されます。 借方 貸方 雑費 500,000円 現金 500,000円 摘要:引っ越し費用(〇〇引っ越しセンター) 機材のレンタル費用をクレジットカードで支払った場合 一時的な機材のレンタル費用を、今回は「雑費」として仕訳します。 クレジットカードで支払いをした場合の仕訳ですが、「決済時」と「引き落とし時」の2回に分けて記載する必要があります。決済時は「未払金」、引き落とし時は「普通預金」と記載しましょう。 [決済時] 借方 貸方 雑費 30,000円 未払金 30,000円 摘要:機材レンタル代(〇〇商会)、クレジットカード決済 [引き落とし時] 借方 貸方 雑費 30,000円 普通預金 30,000円 摘要:機材レンタル代(〇〇商会)、クレジットカード引き落とし 経理・記帳代行はお任せください 本記事で紹介した「雑費」のメリットは、どこにも分類しない費用を計上する上で便利な勘定科目だということです。一方で、雑費が多くなりすぎると何に使用したかわからなくなったり、税務調査の対象になってしまう可能性があったりとデメリットも存在します。雑費の詳細を正確に記載し、帳簿の内容をしっかりと把握しておくことが重要です。 当社では経理・記帳代行も行っております。中小企業や個人事業主の方で、簿記や会計作業にお困りの方はお気軽にご相談ください。税の専門家として決算対策はもちろん、税務全般にわたりお客様に合った適切なアドバイスをいたします。 関連記事:青色申告の個人事業主がパソコンを経費計上する場合の勘定科目や仕訳例を解説 関連記事:経費はレシートでもいい?領収書との違いや活用するメリットなどを解説 関連記事:経費計上のタイミングはいつがベスト?考え方を解説


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青色申告の個人事業主がパソコンを経費計上する時の勘定科目や仕訳例を解説

 ビジネスによっては高額なパソコンを購入する必要がありますが、それは経費としてどのように計上すれば良いでしょうか。  今回の記事では、青色申告をしている個人事業主がパソコンを経費で計上する場合の考え方や勘定科目、仕訳例について解説していきます。 個人事業主の青色申告とは? 開業している個人事業主は、青色申告か白色申告のいずれかの方法で確定申告を行うことになります。青色申告とは、個人事業者が正規の帳簿を備え、一定の要件を満たした上で確定申告を行うことを指します。 個人事業主が青色申告をするメリット 青色申告には以下のようなメリットが挙げられます。 1、 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる 青色申告最大のメリットは、「青色申告特別控除」が受けられることです。単式簿記の場合は10万円、複式簿記で決算書を作成し、指定された方法で申告を行うことで最大65万円の控除があるため、大きな節税効果を得ることができます。 2、赤字を最大3年間控除できる 青色申告を行うと、今期の赤字を次年度以降の所得から差し引ける制度があります(個人事業主は最長3年、法人は最長10年)。これを「青色申告の繰越控除」といいます。 白色申告の場合は今期が赤字でも、次の期が黒字なら税金の支払いが必要です。青色申告を行うと、次年度の黒字から今期の赤字を差し引き、税金を軽減できます。これが青色申告の繰越控除です。 例えば、1年目が300万円の赤字で、2~4年目がそれぞれ100万円の黒字なら、2~4年目の所得税は免除されます。特に個人事業主として事業開始当初は黒字を出しにくいため、将来的に黒字になったタイミングで節税の恩恵を得ることができます。 3、30万円未満の資産を一括で経費計上できる 業務で購入したパソコンや機材などの資産は、取得価額が10万円未満ならその年の経費として計上されます。しかし、10万円以上なら「減価償却資産」として、数年にわたって経費に計上しなければなりません。 ただし、青色申告を行う事業主は、30万円未満の少額減価償却資産を一括して経費計上できます。利益の多い年に30万円未満の資産を購入すれば、経費計上できるので税負担を軽減できます。ただし、上限は合計300万円までです。 青色申告特別控除を受けるための条件 青色申告特別控除には3つの種類があります。控除額は65万円、55万円、10万円です。控除額は帳簿の種類や記帳方法、申告方法によって変わります。 65万円の控除を受ける条件は以下の一覧の通りです。 事業所得または事業的規模の不動産所得がある。 複式簿記で記帳している。 貸借対照表と損益計算書を提出している。 期限内に青色申告を行っている。 現金主義の所得計算の特例を選択していない。 e-Taxで確定申告を行うか、優良な電子帳簿保存法に準拠して保存している。 この条件を全て満たすと65万円の控除が受けられますが、e-Taxや電子帳簿保存を行っていない場合の控除額は55万円です。 10万円の控除は、65万円または55万円の条件を満たさない場合に適用されます。青色申告特別控除の対象は、事業所得または事業的規模の不動産所得がある方です。ただし、10万円の控除の場合は、事業的規模ではない不動産所得や山林所得も対象となります。 青色申告特別控除を受けるためには「仕訳帳」と「総勘定元帳」が必要 「仕訳帳」とは 仕訳帳は、日々の取引を発生順に記録する帳簿です。1つの取引を借方と貸方の2つに分けて記載し、それをまとめたものが仕訳帳です。仕訳帳は、総勘定元帳の作成において重要な帳簿です。 「総勘定元帳」とは 総勘定元帳は、勘定科目ごとに取引内容を日付順に記録した帳簿です。仕訳帳の内容をそれぞれの勘定科目に転記します。手書きの場合、取引が発生するたびに転記する必要がありますが、会計ソフトを使用している場合は、仕訳帳の内容を元に自動的に作成されます。 青色申告の個人事業主がパソコンを経費計上するための方法 事業用にパソコンを購入したときの仕訳には、さまざまなパターンがあります。まず最初に確認しておきたいのは、パソコンの購入金額についてです。購入金額が一定の金額以上になるかどうかで、資産になるか、あるいは当期の費用になるかが異なってきます。 さらに、購入形態にも注意が必要です。現金一括で購入する以外にも、クレジットカードを利用して分割支払いで購入するパターンや、購入せずにリースを利用することも考えられます。クレジットカードやリースでパソコンを取得した場合、勘定科目も変わってきます。それぞれの経費計上方法について解説していきましょう。 取得価格は税抜か、それとも税込か 消費税の扱いは個々の会計方式により異なります。税込み方式では消費税を含めた金額、税抜き方式では消費税を含まない金額で計算されます。 取得価額別の処理方法 ・10万円未満の場合 取得価格が10万円未満であり、使用可能期間が1年未満の場合、経費処理が可能です。 ・10万円以上20万円未満の場合 取得価格が10万円を超える場合、資産計上が必要です。20万円未満の場合は、一括償却資産処理、少額減価償却資産の特例処理、または通常の減価償却処理のいずれかを行います。 ・20万円以上30万円未満の場合 同様に、取得価格が10万円を超えるため資産計上が必要です。その後、少額減価償却資産の特例処理、または通常の減価償却処理を行います。 ・30万円以上の場合 資産計上を行い、通常の減価償却処理を行います。 ※少額減価償却資産の特例処理は、青色申告の法人と個人事業主であることが条件です。 パソコンの取得金額が10万円未満の場合の経費計上 10万円未満のパソコンは、一括して経費計上できます。10万円未満か否かの判断は、税込経理をおこなっている課税事業者と免税事業者であれば税込で判断し、税抜経理をおこなっている課税事業者は税抜で判断します。10万円未満のパソコンを経費計上する場合には「消耗品費」として仕訳をするのが一般的です。 パソコンの取得価格が10万円未満の場合の仕訳方法 パソコンの取得価格が10万円未満の場合、全額を一括して「消耗品費」として計上されます。以下に、現金およびクレジットカードでの購入の仕訳例を示します。 現金での購入の場合 借方 貸方 消耗品費 80,000円 現金 80,000円 クレジットカードでの購入の場合 1、購入時の仕訳 借方 貸方 消耗品費 80,000円 未払金 80,000円 2、クレジットカード支払時の仕訳 借方 貸方 消耗品費 80,000円 預金 80,000円 パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の経費計上方法 10万円以上20万円未満のパソコンの経費計上には3つの方法があります。順に解説していきましょう。先ほどと同様に、10万円以上20万円未満か否かは、税込経理をおこなっている課税事業者と免税事業者であれば税込で判断し、税抜経理をおこなっている課税事業者は税抜で判断します。 1、パソコンを耐用年数で減価償却する 耐用年数とは、固定資産の使用可能な期間を指します。多くの場合、パソコンの耐用年数は4年とされています。この場合、耐用年数に応じて価額を分割して減価償却を行います。償却費用は勘定科目「備品」または「工具器具備品」で処理されます。 具体的な計算方法は、以下の通りです。 購入価格 × 償却率 × (使用月数 / 12) 例えば、15万円のパソコンを購入した場合、1年目の償却費用は以下のように計算されます。 1年目:15万円 × 0.25 × (12ヶ月 / 12=1) = 37,500円 このように、購入月によって償却期間を算出し、それに応じて償却費用を計算します。1年目から5年目までの償却費用を計上し、仕訳の際には「減価償却費」として記録します。 2、パソコンを一括償却資産として経費計上する パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の場合、一括償却資産で処理できます。資産は耐用年数に基づき減価償却していきますが、一括償却資産は本来の耐用年数にかかわらず、3年にわたって1年あたりに3分の1ずつ減価償却をすることが認められます。 個人事業主の場合でも、10万円以上20万円未満のパソコンは一括償却資産として取り扱うことができます。通常4年かかる償却期間を3年に短縮することができるので、早期償却したい場合におすすめの方法です。 この方法では、1年あたりの償却費用が通常より多くなるため、年度ごとに経費として計上する額が増えます。また、一括償却資産として処理する場合は、償却資産税の対象外となる利点もあります。さらに、月割計算の手続きも不要です。購入時期に関わらず、その年度に3等分の費用を計上できます。 例えば、15万円のパソコンを現金で購入した場合、1年あたり5万円を3年間で処理します。仕訳の例は以下の通りです。 借方 貸方 一括償却資産 150,000円 現金 150,000円 個人事業主の場合、この経理処理に加えて、収支内訳書や青色申告決算書に必要事項を記入する必要があります。 3、青色申告の個人事業主なら少額減価償却資産の特例が利用可能 少額減価償却資産の特例は、取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得した場合に適用され、費用を一括で経費に計上できる制度です。これまでと同様に30万円未満か否かは、税込経理をおこなっている課税事業者と免税事業者であれば税込で判断し、税抜経理をおこなっている課税事業者は税抜で判断します。 また、この特例は期間限定の制度であり、2年ごとに延長されています。現在は2026年3月31日までに取得し、使用を始めた資産が対象となります。 少額減価償却資産の特例が利用できる対象者 少額減価償却資産の特例は青色申告の特典ですので、青色申告の法人と個人事業主であることが条件です。具体的には、以下の条件を満たす事業者が対象となります。 常時使用する従業員数が500人以下 適用を受けたい事業年度の平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円以下 資本金または出資金の額が1億円以下であり、通算法人でない 資本金または出資金の額が1億円を超える法人やその100%子会社から、2分の1以上の出資を受ける法人ではない パソコンの購入金額が30万円以上の場合の経費計上方法 取得価額が30万円を超えるパソコンについては、資産の勘定科目である「工具器具備品」として計上する必要があります。30万円以上の資産については、「少額減価償却資産」などの特例措置は適用されません。 従って、そのパソコンの法定耐用年数に従い、定率法または定額法のいずれかの減価償却方法を選択し、経年による価値の減少分を適切に費用計上していく必要があります。定率法と定額法のどちらを採用するかは、事業主の判断に委ねられています。 取得時に「工具器具備品」勘定を借方記入し、減価償却費の計上に伴い同勘定の貸方に転記する会計処理が必要です。減価償却の仕訳は毎期継続的に行う必要があり、最終的にはパソコンの帳簿価額がゼロになるまで続けます。 このように、30万円を超える高額なパソコンの場合は資産計上が原則となり、定められた耐用年数に応じた適正な減価償却処理を行いましょう。 パソコン周辺機器の経費計上方法 ノートパソコンであれば、本体とモニター、キーボードが一体となっていますが、デスクトップパソコンを購入する際には、別途モニターを購入したり、その他の付属品を購入する必要がある場合もあります。 このような場合、減価償却の対象であるかどうかや、取得価額の範囲はどうかが気になる場合もあります。基本的には、本体と合わせてモニターやキーボードが一体として機能するかどうかによって資産かどうかが判断されます。 例えば、モニター、キーボード、ハードディスクを別々に購入した場合でも、それらを一体として使用することを前提としている場合、それらの合計額を取得価額として扱います。しかし、パソコンを5台購入した場合は、それぞれが単独で機能するため、1台ずつに分けて取得価額を考えます。 また、既にパソコンが1台ある状態でモニターを別途購入した場合は、モニターを別の資産として考えることもできます。これは、すでに機能しているパソコンにモニターを追加するだけであり、モニターが単独で機能する資産と見なすからです。 外部ストレージやケースなども個別の資産として扱うことができます。 なお、パソコンの運送料や購入手数料は付随費用として考えられ、これらは取得価額に含める必要がありますので、注意が必要です。また、取得価額に消費税を含めるかどうかも重要なポイントです。税抜経理方式を採用している場合は、取得価額に含めませんが、税込経理方式の場合は含める必要があります。 パソコンをリースする場合の経費計上方法 最後に、パソコンを購入ではなくリースによって取得する場合の経費計上方法を解説していきます。パソコンのリースに伴う経費処理は、リース期間や契約の内容に応じて3つのケースが考えられます。それぞれ解説していきます。 所有権移転ファイナンス・リース取引の経費処理 所有権移転ファイナンス・リース取引は、通常の購入と同様の売買処理が行われます。このリースはリース期間中に解約できず、フルペイアウトが必要な取引を指します。期間終了後にはリース資産の所有権が借手に移ります。例えば40万円のパソコンをリースした場合の仕訳は以下の通りです。 借方 貸方 リース資産 400,000円 リース債務 400,000円 摘要:ノートパソコン 所有権移転外ファイナンス・リース取引の経費処理 所有権移転外ファイナンス・リース取引も、購入時の処理は基本的に所有権移転ファイナンス・リース取引と同様ですが、減価償却費の計算方法が異なり、「リース期間定額法」によって計算されます。所有権が移転しないため、減価償却費はリース期間に応じて計算されます。 オペレーティング・リース取引の経費処理 オペレーティング・リース取引は「リース料」として経費処理されます。口座からリース料が引き落とされた場合の仕訳は以下の通りです。 借方 貸方 リース資産 400,000円 リース債務 400,000円 摘要:リース料の支払い 個人事業主がパソコンをリースした場合は、所有権移転ファイナンス・リース取引が売買処理、オペレーティング・リース取引が賃貸借処理となります。ただし、仕事用とプライベート用の併用時は、家事按分が必要で、購入することに比べるとメリットばかりではなくデメリットや手間があることも意識しておきましょう。 適切な仕訳処理を把握しよう 個人事業主がパソコンを経費計上する際の勘定科目と仕訳方法は、パソコンの取得金額によって異なります。 10万円未満の場合は全額を当期の経費(雑費や消耗品費等)に計上します。10万円以上20万円未満では、原則的に資産の備品勘定で計上し減価償却します。一括償却資産扱いも可能で、この場合は3年で全額償却します。また青色申告の中小企業や個人事業主は少額減価償却制度を活用し全額即時償却することもできます。 30万円未満の場合も同様に、原則は資産計上と減価償却ですが、青色申告の中小企業や個人事業主であれば少額減価償却資産の特例で全額即時償却が認められています。また、クレジットカード支払いやリースなど分割払いをしている場合には異なる仕訳が必要になります。 このように、パソコン購入時の経費計上は金額によって方法が変わるため、適切な勘定科目と仕訳処理を把握する必要があります。また制度の適用要件を把握するなどの注意点があります。適切に経費計上をしなければ税務調査の際に問題になる可能性があるため、税理士に依頼し、正しく経費計上を行うのが安全で確実です。 税理士法人プロゲートでは、個人事業主の青色申告や経費計上に関するアドバイス、領収証の仕訳などの実務にも対応しております。まずはお気軽にご相談ください。 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