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会社設立時の資本金の決め方とは?決め方のポイントや注意点も解説

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いざ、会社設立をしようと思っても分からないことが多いと思います。

近年では、資本金が1円~でも会社設立が出来るようになっていますが、実際の資本金額が1円という会社は多くありません。

では、最適な資本金額はいくらなのでしょうか。業種や設立する会社の状況によって異なりますが、目安となる資本金額や、考え方のポイントを解説します。

この記事を読んで、「資本金の重要性を理解した上で間違いのない会社設立をしたい」と思っている方の参考になればと思いますので、ぜひ最後までお読みください。

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中小企業の平均額は300~500万円

資本金とは、会社設立または増資によって出資者から払われたお金のことを指し、円滑な会社経営を行う際の元手となる資金のことです。純資産である資本金は、負債とは異なり返済義務がなく、負債利子も発生しません。そのため、資本金は会社の信頼性を判断する一つの指標とされます。

会社法32条では、会社を設立するときには資本金を決める必要があると定められていましたが、2006年5月の会社法改正により、資本金1円からでも株式会社や合同会社の設立が可能になりました。

資本金の目安は、令和3年に総務省・経済産業省が発表した「令和3年経済センサス-活動調査速報集計 企業等に関する集計」によると、調査総数177万7291社のうち資本金で最も多いのは「300万~500万円未満」が3割以上を占めており、次に「1000万~3000万未満」、「500万~1000万未満」と続きます。

初期投資で店舗や設備機器、仕入れなどの費用が多く発生する業種は資本金が多い傾向があります。そのため、業種によって資本金の金額は異なりますが、中小企業の資本金の平均額は300~500万円といえます。

資本金を決める際は、これから開業する業種の資本金がどれくらいなのか、事業計画上どのくらいの資金が必要かを考慮して決めましょう。

関連記事:会社設立時の「見せ金」はNG!正しい資本金の計上方法を解説

なぜ資本金が重要なのか?

会社が初めて取引を行う際には、与信調査が行われる場合があります。

与信調査とは、取引を行う相手企業に対して、支払い能力など金銭的な信用度合いに関する情報を調査することです。「しっかりと商品代金を支払ってくれる」「商品を納めてくれる」といった信用が得られなければ取引をしてもらえません。

信用できるかできないかを判断する一つの基準として、資本金額をチェックします。

また、銀行から融資を受ける際にも、資本金額が重視されます。一般的に、銀行から融資してもらえる額は資本金額と同等から2倍までが相場とされていますが、融資を得て創業直後から一気にビジネスを成長させたいと考えている場合は、それ相応の資本金が必要です。

さらに、銀行の一般的な融資制度を利用する場合にも、売上高や未払い金額などの他にも資本金額がチェックされます。しかし、資本金はあくまでも出資金であり、創業や増資時など資本金にあてる目的での融資は受けられないので注意が必要です。

資本金の多さは、会社の信用と大きく関わります。

特に設立間もない企業は、資本金の額が対外的な会社の信用や事業の規模を表す指標として映るので、資本金をしっかり決めておくことが大切です。

関連記事:中小企業の適切な資金調達の方法とは?流れや注意点について解説

資本金の決め方を4つの点から解説

ここでは、資本金の決め方を順番に4つそれぞれ紹介します。

1、初期投資と半年分の運転資金を計算する
2、自分の業種が特定のもので最低資本金が決められていないか確認する
3、税金との関係を考慮して決める
4、実店舗がある銀行の口座開設または融資が欲しい場合は100万円以上にするか決める

1,初期投資と半年分の運転資金を計算する

まずは、初期投資の金額と半年分の運転資金を計算しましょう。

株式会社を設立するには、設立時にかかる費用や事業を行うための初期投資が必要です。また、会社設立後すぐには売上が見込めないことが多いので、運転資金も準備しておきましょう。

会社を設立する際には、登録免許税や定款認証印紙代、謄本の発行手数料などさまざまな初期費用がかかってきます。初期費用に加えて、会社の初期投資+半年分の運転資金の他にも、業種によっては機械の設備や車両なども購入して用意しなければなりません。

また、運転資金には、自分や従業員の給与、事業を行っていくための諸経費などが含まれます。

半年の間、全く売上がないと想定した際に出ていくお金は何があるか、具体的に考えてみましょう。

2,起業する業種の最低資本金額に決まりはないか確認する

次に、自社の業種で最低資本金額が決められていないか確認しましょう。理由としては、自社の業種が許認可が必要な業種だった場合、最低資本金が決まっているからです。

最低資本金が決められている業種では、その資本金額を上回っていないと事業が始められません。

下記の業種は、最低資本金額が決められているものの一部です。

【最低資本金が決められている業種と最低資本金】

業種 最低資本金
有料職業紹介業 500万円以上
一般労働派遣業 2,000万円以上
第1種旅行業 3,000万円以上
第2種旅行業 700万円以上
第3種旅行業 300万円以上
地域限定旅行業 100万円以上
一般建設業 500万円以上
特定建設業 2,000万円以上
貨物利用運送業 300万円以上

3,税金との関係を考慮して決める

資本金は多ければ多いほど良いと思われますが、資本金が多くなると収める税金も増えていきます。

資本金を設定する前に、納税義務の有無や許認可の要件、運転資金などとのバランスを考えながら設定しましょう。

資本金の額から影響を受ける税金として、「消費税」「法人住民税」「法人税」「地方税」「登録免許税」の5つについてどのような影響を受けるのかを解説します。

消費税

資本金を1000万円以下で設立した会社は、原則として設立1期目と2期目の消費税の納税義務が免除されます。

ただし、2期目に関しては、1期目の前半6か月の売上が1,000万円を超え、かつ役員報酬を含む人件費が1000万円を超えた場合は、消費税の課税対象となります。

また、資本金が1000万円以上になると最初から課税事業者となるため、初年度から消費税を納税しなければなりません。

少しでも節税したい場合は、資本金を1000万円未満に設定するようにしましょう。

なお、2023年10月から始まったインボイス制度により、取引先との関係から消費税の免税事業者となれないケースも想定されるので注意が必要です。

法人住民税

法人住民税には、法人税割と均等割の2種類あります。

法人税割は個人住民税の所得割にあたるもので原則として国に納付する法人税額に応じて課税されます。

均等割は赤字であっても資本金や従業員数に応じて課税されます。課税額は資本金などの額によって変わり、道府県民税が2万円から80万円、市町村民税が5万円から300万円です。

また法人住民税の法人税割の税率に関しても、資本金の額や従業員数に応じて異なる税率を適用している地方自治体もあるので、調べておきましょう。

法人税

法人税の税率は、資本金が1億円を超えるかどうかで変わります。資本金1億円以下の法人で所得が800万円を超える場合、所得800万円超の時の税率は23.2%、800万円以下は税率が15%となります。

また資本金が1億円以下であれば中小企業とみなされ、法人税率の一部軽減も認められます。

法人税税率

国税庁|法人税の税率

地方税

地方税は、資本金額によって地方税率が調整される仕組みとなっており、資本金が少ない場合に軽減措置が受けられます。

1000万円以上1億円以下であれば一定の軽減税率が適用されます。

よって、1000万円を境に資本金額の設定と地方税については十分に検討しましょう。

登録免許税

登録免許税は、不動産登記と商業登記の際にかかる税金をいいます。

会社を設立して会社を登録するためにも必要な税金であり、資本金額だけでなく株式会社か合同会社かによって納税する金額が変わります。

具体的な内容は次の通りです。

会社の種類 登録免許税
株式会社 150,000円または資本金額×0.7%のどちらか高い額
合同会社 60,000円または資本金額×0.7%のどちらか高い額

4,融資を検討している場合は最低100万円以上にする

実店舗がある銀行の口座開設をする場合や、融資を検討している場合は、資本金を100万円以上にしておきましょう。

資本金がとても少ない場合、そもそも法人口座の開設ができなかったり融資を受けられなかったりする可能性があります。過去に法人口座を振り込め詐欺などに利用する事例があったため、資本金が少ないと「詐欺をしようとしているのではないか」と思われ、法人口座を開設できないケースがあるのです。

「資本金がいくらあれば確実に口座開設や融資を受けられる」と明言はできませんが、実店舗がある銀行の法人口座を開設したい場合や融資を受けたいと考えている場合は、最低100万円以上は必要と思っておくといいでしょう。

会社設立時|資本金の払込の流れ

会社設立時の資本金の払込みには、次の3つの手続きがあります。

資本金払い込みの流れ

①銀行口座を用意する

まず、個人の銀行口座を用意する必要があります。

会社設立時はまだ法人になっていないため、新しく口座を用意する必要はなく、普段から使用している個人の銀行口座でも可能です。また、発起人が複数人いる場合は発起人の代表の銀行口座を使います。

②通帳のコピーを作成する

振込の際に注意すべきなのが、通帳のコピーを用意する必要があることです。

通帳の中でコピーすべきなのは、銀行名と支店名、銀行印が判別できる表紙の裏表と振込内容が記載されたページになります。インターネットバンキングなどを通じて資本金を振り込む場合は、振込日や口座名義人、振込金額などが記載されたページを印刷する必要があるので注意しましょう。

③払込証明書を作成する

次に払込証明書を作成します。

払込証明書とは、資本金の払込があったことを証明する書類となります。払込証明書に必要な項目は次のとおりです。

・払込証明書に必要な項目
・払込みの総額
・払込みがあった株式数
・1株あたりの払込金額
・払込みがあった日付
・会社の所在地
・会社名
・代表取締役の名前

払込総額と株式数は定款に記載した内容と同じもの、1株あたりの払込額は総額を株式数で割ったものを使用します。払込証明書には、会社の代表の捺印が必要で、払込証明書の左上と代表取締役の名前の右横の部分に押印しなければなりません。

現物出資を行う場合

次に、現金振り込みではなく、現物出資で資本金を準備する場合について解説します。

現物出資とは、金銭以外の財産を出資する方法で、購入したときの金額ではなく、現時点での市場価値で計上されることになります。不動産であれば専門家に価格調査を依頼することになり、車の場合は中古市場の価格が出資額となります。

また定款に下記の必要事項を記載する必要があります。

  • 現物出資する人の氏名と住所
  • 資産の詳細情報(名称・メーカー名など)
  • 資産の価格

さらに、調査報告書・財産引継書・資本金の額の計上に関する証明書を作成します。

調査報告書は現物出資する資産の価格が適切かどうかを調査した結果をまとめた書類で、財産引継書は資産が個人から会社へ所有が移ったことを表す書類です。

そして資本金の額の計上に関する証明書は、現金以外の現物出資がある場合には、添付が必要となる書類です。

これらを登記申請書に添付し、法務局へ提出します。

資本金についてよくある質問

最後に、これまでの本文でも解説した内容にはなりますが、資本金の決め方についてよくある質問を4つ紹介します。

・資本金の最低金額は?
・法人用の銀行口座は必要?
・資本金を使うタイミングは?
・会社設立後に資本金を増額したい場合は?

資本金の最低金額は?

新会社法によって、資本金1円から株式会社などを設立できるようになりました。ただし、資本金1円の会社経営はあまり現実的ではありません。

会社を設立した直後は決算書がないので、融資を受ける際には資本金が重要になります。資本金の少ない会社の信用力はないので、このような形で金融機関の融資審査にも不利になります。さらに、資本金額は顧客や取引先からの信用といった面でも影響します。資本金は運転資金も兼ねているため融資も期待できないと、継続的な入金がない限り経営の継続自体が難しくなります。

資本金に返済義務はありません。資本金額が多いほど、余裕を持った会社経営を行えるでしょう。

法人用の銀行口座は必要?

銀行の法人口座は、会社経営において法律上は必ずしも必要ではありません。

経営者の個人口座をそのまま法人用として使え、会社として問題なく事業を行えますが、経営者の個人名義の口座と会社の財産との区別ができなくなり、会社の財務状況とお金の流れの把握が難しくなります。また、顧客や取引先に銀行口座を伝える際、口座名義が法人名でないと、顧客や取引先に「本当に実在する企業なのか」と不信感を持たれる場合もあります。

融資を受ける際や法人名義のクレジットカードを作成する際に金融機関の審査手続きをスムーズに行うためにも、法人用銀行口座があった方が良いでしょう。

資本金を使うタイミングは?

資本金は、使ってはいけないお金と思われがちですが、資本金を使うタイミングや使い道は特に制限されていません。

会社の経費として、必要な時に使っても良いものです。

資本金は会社に関することに利用することはできますが、社長であっても自分の生活などには使用できないので注意が必要です。

会社設立後に資本金を増額したい場合は?

会社を設立した後に資本金を増資するという選択肢もあります。増資とは、資本金額を増やすことです。資金調達方法のひとつとして一般的に広く扱われ、増資の方法として公募増資や株主割当増資、第三者割当増資などがあげられます。

公募増資:新しい株式を発行し、証券市場を通じて一般の投資家から出資を募る方法。

株主割当増資:既存の株主に、出資金と引き換えに新たな株式を取得できる権利を与える方法。

第三者割当増資:親会社など、特定の第三者に対して新規株式を発行する方法。

資本金を増資するメリットとしては、資金調達ができたり会社の信用度が上がる、会社の支援者が増えることがあげられます。

一方で、資本金を増資するデメリットとして、増資をしすぎると、発行済み株式数が増加するので、1株あたりの利益が下がってしまう点が挙げられます。

会社設立時の資本金額は自由に決められますが、あまりにも少なすぎる場合は、経営の継続に支障がありますので、慎重に決めましょう。

ただし、増資をするには株主総会の決議や法務局への登記申請などの手続きが必要になるうえ、増資額の0.7%の登録免許税がかかります。

特に中小企業は、許認可の関係で資本金を増やさなければならない場合を除き、資本金を増やす必要性はありません。「資本金が足りなくなったら増資すればいい」と安易に考えるのではなく、会社設立の段階から慎重に資本金の金額を設定することが大切です。

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今回の記事では、会社設立の資本金の決め方をまとめました。

自身が起業する業種や状況によって必要な額は変わります。特にはじめての会社設立では分からないことが多いでしょうか。その際は、必要に応じて顧問税理士に相談してください。

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投稿日: 2024年6月17日   9:07 am
更新日: 2024年10月21日   2:51 pm