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個人事業主の融資はいくらまで受けられるのか?
個人事業主として事業を続けるにあたり、金融機関からの借入によって事業拡大などを行うことも増えてきます。
しかし、法人と違って個人事業主がいくらが限度で融資を受けられるか不安に思うことはあるでしょう。
この記事では、現在、個人事業主の方に向けて、法人の融資の借りやすさの違いや個人事業主が融資を借りられる相場、融資を受ける際の注意点を解説します。
Contents
個人事業主と法人で融資の違いはあるのか
個人事業主は法人よりも融資を借りにくいといわれることがありますが、現在ではそのようなことはありません。
商法が施行された当時には、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円という最低資本金制度があったため、不利であると言われていました。
しかし、会社法の施行に伴って最低資本金制度は廃止され、実質1円からでも会社を設立できるようになりました。
そのため、法人でも個人事業主より出資金が少ない企業も多く、その意味でも個人事業主と法人とでは差がなくなってきているのが現状です。
また次のような理由でも個人事業主は法人よりも借りにくいといわれています。
- 個人事業主の信用力が低いため不利
- 個人事業では利用できない制度がある
- 財務書類の信憑性が低い
個人事業主の信用力が低いため不利
個人事業主と法人を比較した場合、事業面では法人の方が顧客に安心感を与えやすいというメリットがあります。
しかし、これはあくまでも営業をする場合の話であり、融資の審査においては、「売上げがいくらあるのか」「利益はどれぐらい出ているのか」が重要なポイントになります。
もちろん、大規模な事業をする場合には法人化する必要がありますが、事業の規模が小さい場合は、個人事業主に対する信用が低いため融資が受けにくくなるということはありません。
個人事業では利用できない制度がある
以前は法人だけが利用できる融資の制度がありましたが、現在は一部のローンを除いて、個人事業だから利用できない融資というのはほぼありません。
ただし、現在でも一部では法人のみを対象としたものがある他、出資や会社が資金調達を目的として投資家から金銭の払込みと引き換えに発行する社債を前提とした資金調達方法などは利用できません。
財務書類の信憑性が低い
個人事業主は法人と違い、1人でさまざまな書類を作成しなければなりません。
法人のような正確な財務書類が作られていないから個人事業主は融資に不利になるという方もいますが、これも融資の判断では関係ありません。
たしかに、作成された財務資料の内容がいい加減な場合には問題となりますが、それは法人についても同じことがいえます。
個人事業と法人では作成する資料の種類は異なりますが、会計処理に従った記帳や処理をしていれば問題ありません。
現在においては個人事業でも法人でも、融資の受けやすさに変わりはありません。
ただし、事業承継をした場合には、個人事業では許認可を引き継げないため、新たに相続人の名義で事業をしなければならないことに注意が必要です。
希望する融資額が借りられるかどうかは審査次第です。
銀行や信用金庫などの金融機関と同様、日本政策金融公庫から希望する融資額が借りられるかどうかは審査次第となるため、借入先として日本政策金融公庫を検討中の人は注意が必要です。
融資を受けられる金額の相場
金融機関からの借入平均は800万円前後といわれています。
次の表は金融機関等からの借入平均を表にしたものです。
年度 | 融資の平均金額 |
2018年 | 859万円 |
2019年 | 847万円 |
2020年 | 825万円 |
2021年 | 803万円 |
2022年 | 882万円 |
2023年 | 768万円 |
表のとおり、金融機関からの借入平均額は700万円後半から800万円後半となっています。しかし、800万円という値には、多く融資を受けた者も少なく受けた者も含まれており、全員が800万円を借りられるわけではありません。
実際の創業融資の金額には、300万円〜1000万円ほどの幅があります。そのため、自分がどのくらいの金額を借りられるかをより具体的に判断したい場合は、実際に自分でどれぐらい必要なのかを計算するのがおすすめです。
また商品の仕入れや従業員の給与など事業に必要な資金である運転資金は、月商の3ヶ月分が目安になります。月商とは、個人事業主や企業が事業活動で得た1ヶ月の売上総額のことです。中小企業の月商の中央値は125万円程度といわれているので、運転資金の融資額は、375万円程度が相場といえます。
ただし、実際の金額は各自の資産や借入の状況、業種などによって変動するので注意しましょう。
個人事業主が受けられる融資制度
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は政府が全て出資をする金融機関で、中小企業や個人事業主を対象にさまざまな融資制度を提供しています。
政府系金融機関のため、金利が低めに設定されている点が最大の特徴です。借入期間も長く、返済期間は5年以上からの選択となります。
長い期間借りられて1回あたりの返済額は少なく済むため、借りる側としてはメリットがあると言えます。
しかし、デメリットとしては審査内容が厳しく、審査に時間がかかることです。申請から融資開始まで数ヶ月以上必要になることも多いため、準備には計画性が求められます。
民間のビジネスローンのように申し込んですぐに融資がおこなわれるというわけではないため、ある程度の時間が必要な点にも注意が必要です。
関連記事:日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の流れをプロセスごとに解説
関連記事:起業家必見!日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の必要書類を紹介
信用金庫
信用金庫とは、その地域の人々が利用者・会員になってお互いに地域の繁栄を図る協同組織の金融機関です。
銀行の主な取引先が大企業であるのに対して、信用金庫等の取引先は地域の個人事業主や中小企業になります。日本政策金融公庫よりも金利は高い傾向にありますが、銀行に比べると融資の難易度も金利も低いことが特徴です。
銀行に融資を申し込む前に、まずは地域の信用金庫等を検討してみましょう。
銀行融資
銀行は企業との取引が中心ではありますが、個人事業主でも融資は受けられます。
銀行融資を受ける際は、昔なじみの担当者がいる場合はその担当者を通じて申し込むか、銀行の融資窓口で相談をしましょう。申し込みをした後は、決算書をはじめとした融資審査のために必要なさまざまな資料を用意する必要があり、それらの書類をもとに融資が可能かどうか、金利や融資額などが決定します。
関連記事:銀行から創業融資を受けられる?創業融資が可能な金融機関を紹介
地方自治体や助成金・補助金
地方自治体は、比較的低金利で、各地方自治体で融資制度が設けられているケースも多いです。
「お住いの都道府県・市区町村名+融資」といった検索ワードや自分の都道府県や市町村のホームページでも調べてみましょう。また、融資と異なり返す必要のないのが補助金や助成金です。
返済の必要がないため、今後の資金集めが楽になりますが、補助金や助成金の目的に自分の業態が当てはまっているかを確認する必要があるので、融資よりも先に確認しておきましょう。
融資を受けやすくする5つのポイント
個人事業主はさまざまな融資を利用できますが、誰でも無条件で融資を利用できるわけではありません。
金融機関から希望額の融資を受けるためには、次の5つの点に注意する必要があります。
・返済が見込める計画となっている
・税金、家賃、ローン等の滞納がない
・事業計画を作成・提出する
・代表者や役員の信用情報に問題がない
資金使途が明確となっていること
融資を受ける際には、資金使途といわれる「融資を何に使うのか」という、融資を受けた際の資金の使い道が重要となります。
資金使途には、設備資金と運転資金の2つがあります。
金融機関ではこの資金使途から「何のために融資を受けるのか」「返済能力はあるか」などを判断して融資をするかどうかを決定します。そのため、資金使途が赤字資金の穴埋めや生活資金の補充のような適切な使い方でないものや、事業に関係ないものである場合には融資は行いません。
また、事業の規模や内容から融資は必要ないと判断される場合にも、融資の対象とはなりません。十分な融資を受けるためには、見積書や事業計画書などを充分に確認して納得してもらう必要があります。
返済が見込める計画となっていること
融資の審査では、融資の返済が見込めるのかが結果に大きく影響します。
返済に必要な利益を返済キャッシュフローといいますが、返済キャッシュフローは「営業利益+減価償却費」の計算式で算定されます。
そのため、キャッシュフローが獲得できない計画となっている場合や、計画の内容に実現性が低いと判断される場合には、希望額の融資を得られません。したがって、その計画が実現可能であり、数字や理屈的にも根拠のあるものとなっている必要があります。
税金、家賃、ローン等の滞納がないこと
政府系・民間を問わず、申込時に税金などの滞納がある場合は、金融機関からの融資は難しくなります。
税金だけでなく、家賃や光熱費、住宅ローンを含む各種ローンについても過去6ヶ月〜1年の間に支払いの遅れがある場合は同様となります。また、税金の未納については納税証明書の記載で判明しますが、それ以外の家賃や公共料金等の支払い状況については、引き落し口座の口座履歴や支払い済みの領収書などで確認が行われます。
ただし、支払いに遅れがあってもその日数が短い場合や、税務署と分割納税の協議ができている場合などは、問題とならないこともあります。
事業計画を作成・提出すること
通常、創業融資以外の融資については、借入れは融資申込書を提出して行いますが、融資を受ける可能性を上げたいのであれば、借入れや事業の内容を事業計画書としてまとめて提出しておきましょう。
借入申込書は、借入れの内容を記載したものですが、「なぜ借入れが必要となったのか」「具体的にどのように返済するのか」などを書くスペースがありません。しかし、金融機関が確認したいと考えていることや、今後の計画を事業計画書にまとめて説明すれば、融資が出る確率が高くなります。
なお、事業計画書には、次の4つの項目をまとめておくとよいでしょう。
- 過去3年間分の決算書の数字をまとめた現在の財務状況
- 最近の業況や現在に至るまでの経緯
- 仕入や人件費、家賃などの具体的な使い道
- 返済利益が獲得できる根拠や販売の戦略
また、計画の内容についてはできるだけ客観的に見て納得してもらえるものとする必要があります。
代表者や役員の信用情報に問題がないこと
融資の審査では代表者の個人情報に問題がないかの確認が行われますが、もし、ローンの延滞などにより信用情報機関に情報が記録されている場合には、融資は困難になります。
また、信用情報のチェックは、代表者だけでなく、他に取締役や監査役がいる場合には、これらの方についても行われます。そのため、代表者だけでなく、他の役員等に個人情報上の問題がないかどうかについても事前に確認しておく必要があります。
融資を受ける上での注意点
融資を受ける上での注意点を2つ紹介します。
・経費処理可能なのは利息部分のみ
確定申告をしないと融資を受けられない
一般に金融機関の審査では確定申告書の提出を求められます。
確定申告書を見れば個人として営んでいる事業のおおよその状況がわかりますし、数年分を見れば事業が成長しているかどうかも把握できます。
年間の所得が38万円以下の人は確定申告をしなくてもよいとされていますが、赤字の繰り越しなど、よいこともたくさんあるでしょう。もし、確定申告を行っていないなら、銀行や公的金融機関から事業資金の融資を受けるのは難しいので、確定申告を行うようにしましょう。
経費処理可能なのは利息部分のみ
事業資金として受けた融資の返済を行っている人は、確定申告の際に利子部分を経費とすることができます。
元金部分については経費にはできないので、あくまで利子のみが経費として認められます。
その他にも、借入手数料、保証料、印紙代などがかかっている場合も経費にでき、繰上返済した場合の手数料も同様です。
融資についてよくある質問
個人事業主の融資についてよくある質問を2つ紹介します。
起業する際に自己資金なしで融資を受けることはできますか?
起業の際、自己資金なしで融資を受けることは、絶対にできないというわけではありません。
可能性は0ではありませんが、基本的には自己資金なしで融資を受けられることは難しいです。最低でも、融資希望額の10分の1ほどの自己資金を準備しておきましょう。
スムーズな融資を希望する際は、できるだけ多くの自己資金を準備しておきましょう。
関連記事:自己資金なしでも創業融資は受けられる?注意点を解説
個人事業主でも通りやすい融資はありますか?
個人事業主でも通りやすい融資の一つに「ビジネスローン」が挙げられます。
ビジネスローンとは、特にビジネスを目的としたローンのことです。融資までのスピードが早いのですぐにお金が必要な時に心強いといえます。金利は高めですが、融資審査の判断基準は個人の信用力がどのくらいあるかが重要なので創業時でも利用しやすいです。
個人事業主の融資はお任せください!
今回の記事では、個人事業主が融資を借りられる相場や融資を受ける際の注意点などをまとめました。
法人と違って個人事業主は自分で考えることが多くなってきます。特にはじめて会社を設立すると分からないことが多いのではないでしょうか。その際は、必要に応じて顧問税理士に相談してサポートしてもらいましょう。
税理士法人プロゲートでは、宮城県仙台市を中心に融資支援を行っており、融資実行率90%の実績がございます。会社設立の支援実績も200社以上ありますので、ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。経験豊富な税理士が、お客様の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。
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投稿日: 2024年8月5日 10:51 am
更新日: 2024年11月18日 10:08 am