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青色申告の個人事業主がパソコンを経費計上する時の勘定科目や仕訳例を解説

 ビジネスによっては高額なパソコンを購入する必要がありますが、それは経費としてどのように計上すれば良いでしょうか。  今回の記事では、青色申告をしている個人事業主がパソコンを経費で計上する場合の考え方や勘定科目、仕訳例について解説していきます。 個人事業主の青色申告とは? 開業している個人事業主は、青色申告か白色申告のいずれかの方法で確定申告を行うことになります。青色申告とは、個人事業者が正規の帳簿を備え、一定の要件を満たした上で確定申告を行うことを指します。 個人事業主が青色申告をするメリット 青色申告には以下のようなメリットが挙げられます。 1、 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる 青色申告最大のメリットは、「青色申告特別控除」が受けられることです。単式簿記の場合は10万円、複式簿記で決算書を作成し、指定された方法で申告を行うことで最大65万円の控除があるため、大きな節税効果を得ることができます。 2、赤字を最大3年間控除できる 青色申告を行うと、今期の赤字を次年度以降の所得から差し引ける制度があります(個人事業主は最長3年、法人は最長10年)。これを「青色申告の繰越控除」といいます。 白色申告の場合は今期が赤字でも、次の期が黒字なら税金の支払いが必要です。青色申告を行うと、次年度の黒字から今期の赤字を差し引き、税金を軽減できます。これが青色申告の繰越控除です。 例えば、1年目が300万円の赤字で、2~4年目がそれぞれ100万円の黒字なら、2~4年目の所得税は免除されます。特に個人事業主として事業開始当初は黒字を出しにくいため、将来的に黒字になったタイミングで節税の恩恵を得ることができます。 3、30万円未満の資産を一括で経費計上できる 業務で購入したパソコンや機材などの資産は、取得価額が10万円未満ならその年の経費として計上されます。しかし、10万円以上なら「減価償却資産」として、数年にわたって経費に計上しなければなりません。 ただし、青色申告を行う事業主は、30万円未満の少額減価償却資産を一括して経費計上できます。利益の多い年に30万円未満の資産を購入すれば、経費計上できるので税負担を軽減できます。ただし、上限は合計300万円までです。 青色申告特別控除を受けるための条件 青色申告特別控除には3つの種類があります。控除額は65万円、55万円、10万円です。控除額は帳簿の種類や記帳方法、申告方法によって変わります。 65万円の控除を受ける条件は以下の一覧の通りです。 事業所得または事業的規模の不動産所得がある。 複式簿記で記帳している。 貸借対照表と損益計算書を提出している。 期限内に青色申告を行っている。 現金主義の所得計算の特例を選択していない。 e-Taxで確定申告を行うか、優良な電子帳簿保存法に準拠して保存している。 この条件を全て満たすと65万円の控除が受けられますが、e-Taxや電子帳簿保存を行っていない場合の控除額は55万円です。 10万円の控除は、65万円または55万円の条件を満たさない場合に適用されます。青色申告特別控除の対象は、事業所得または事業的規模の不動産所得がある方です。ただし、10万円の控除の場合は、事業的規模ではない不動産所得や山林所得も対象となります。 青色申告特別控除を受けるためには「仕訳帳」と「総勘定元帳」が必要 「仕訳帳」とは 仕訳帳は、日々の取引を発生順に記録する帳簿です。1つの取引を借方と貸方の2つに分けて記載し、それをまとめたものが仕訳帳です。仕訳帳は、総勘定元帳の作成において重要な帳簿です。 「総勘定元帳」とは 総勘定元帳は、勘定科目ごとに取引内容を日付順に記録した帳簿です。仕訳帳の内容をそれぞれの勘定科目に転記します。手書きの場合、取引が発生するたびに転記する必要がありますが、会計ソフトを使用している場合は、仕訳帳の内容を元に自動的に作成されます。 青色申告の個人事業主がパソコンを経費計上するための方法 事業用にパソコンを購入したときの仕訳には、さまざまなパターンがあります。まず最初に確認しておきたいのは、パソコンの購入金額についてです。購入金額が一定の金額以上になるかどうかで、資産になるか、あるいは当期の費用になるかが異なってきます。 さらに、購入形態にも注意が必要です。現金一括で購入する以外にも、クレジットカードを利用して分割支払いで購入するパターンや、購入せずにリースを利用することも考えられます。クレジットカードやリースでパソコンを取得した場合、勘定科目も変わってきます。それぞれの経費計上方法について解説していきましょう。 取得価格は税抜か、それとも税込か 消費税の扱いは個々の会計方式により異なります。税込み方式では消費税を含めた金額、税抜き方式では消費税を含まない金額で計算されます。 取得価額別の処理方法 ・10万円未満の場合 取得価格が10万円未満であり、使用可能期間が1年未満の場合、経費処理が可能です。 ・10万円以上20万円未満の場合 取得価格が10万円を超える場合、資産計上が必要です。20万円未満の場合は、一括償却資産処理、少額減価償却資産の特例処理、または通常の減価償却処理のいずれかを行います。 ・20万円以上30万円未満の場合 同様に、取得価格が10万円を超えるため資産計上が必要です。その後、少額減価償却資産の特例処理、または通常の減価償却処理を行います。 ・30万円以上の場合 資産計上を行い、通常の減価償却処理を行います。 ※少額減価償却資産の特例処理は、青色申告の法人と個人事業主であることが条件です。 パソコンの取得金額が10万円未満の場合の経費計上 10万円未満のパソコンは、一括して経費計上できます。10万円未満か否かの判断は、税込経理をおこなっている課税事業者と免税事業者であれば税込で判断し、税抜経理をおこなっている課税事業者は税抜で判断します。10万円未満のパソコンを経費計上する場合には「消耗品費」として仕訳をするのが一般的です。 パソコンの取得価格が10万円未満の場合の仕訳方法 パソコンの取得価格が10万円未満の場合、全額を一括して「消耗品費」として計上されます。以下に、現金およびクレジットカードでの購入の仕訳例を示します。 現金での購入の場合 借方 貸方 消耗品費 80,000円 現金 80,000円 クレジットカードでの購入の場合 1、購入時の仕訳 借方 貸方 消耗品費 80,000円 未払金 80,000円 2、クレジットカード支払時の仕訳 借方 貸方 消耗品費 80,000円 預金 80,000円 パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の経費計上方法 10万円以上20万円未満のパソコンの経費計上には3つの方法があります。順に解説していきましょう。先ほどと同様に、10万円以上20万円未満か否かは、税込経理をおこなっている課税事業者と免税事業者であれば税込で判断し、税抜経理をおこなっている課税事業者は税抜で判断します。 1、パソコンを耐用年数で減価償却する 耐用年数とは、固定資産の使用可能な期間を指します。多くの場合、パソコンの耐用年数は4年とされています。この場合、耐用年数に応じて価額を分割して減価償却を行います。償却費用は勘定科目「備品」または「工具器具備品」で処理されます。 具体的な計算方法は、以下の通りです。 購入価格 × 償却率 × (使用月数 / 12) 例えば、15万円のパソコンを購入した場合、1年目の償却費用は以下のように計算されます。 1年目:15万円 × 0.25 × (12ヶ月 / 12=1) = 37,500円 このように、購入月によって償却期間を算出し、それに応じて償却費用を計算します。1年目から5年目までの償却費用を計上し、仕訳の際には「減価償却費」として記録します。 2、パソコンを一括償却資産として経費計上する パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の場合、一括償却資産で処理できます。資産は耐用年数に基づき減価償却していきますが、一括償却資産は本来の耐用年数にかかわらず、3年にわたって1年あたりに3分の1ずつ減価償却をすることが認められます。 個人事業主の場合でも、10万円以上20万円未満のパソコンは一括償却資産として取り扱うことができます。通常4年かかる償却期間を3年に短縮することができるので、早期償却したい場合におすすめの方法です。 この方法では、1年あたりの償却費用が通常より多くなるため、年度ごとに経費として計上する額が増えます。また、一括償却資産として処理する場合は、償却資産税の対象外となる利点もあります。さらに、月割計算の手続きも不要です。購入時期に関わらず、その年度に3等分の費用を計上できます。 例えば、15万円のパソコンを現金で購入した場合、1年あたり5万円を3年間で処理します。仕訳の例は以下の通りです。 借方 貸方 一括償却資産 150,000円 現金 150,000円 個人事業主の場合、この経理処理に加えて、収支内訳書や青色申告決算書に必要事項を記入する必要があります。 3、青色申告の個人事業主なら少額減価償却資産の特例が利用可能 少額減価償却資産の特例は、取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得した場合に適用され、費用を一括で経費に計上できる制度です。これまでと同様に30万円未満か否かは、税込経理をおこなっている課税事業者と免税事業者であれば税込で判断し、税抜経理をおこなっている課税事業者は税抜で判断します。 また、この特例は期間限定の制度であり、2年ごとに延長されています。現在は2026年3月31日までに取得し、使用を始めた資産が対象となります。 少額減価償却資産の特例が利用できる対象者 少額減価償却資産の特例は青色申告の特典ですので、青色申告の法人と個人事業主であることが条件です。具体的には、以下の条件を満たす事業者が対象となります。 常時使用する従業員数が500人以下 適用を受けたい事業年度の平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円以下 資本金または出資金の額が1億円以下であり、通算法人でない 資本金または出資金の額が1億円を超える法人やその100%子会社から、2分の1以上の出資を受ける法人ではない パソコンの購入金額が30万円以上の場合の経費計上方法 取得価額が30万円を超えるパソコンについては、資産の勘定科目である「工具器具備品」として計上する必要があります。30万円以上の資産については、「少額減価償却資産」などの特例措置は適用されません。 従って、そのパソコンの法定耐用年数に従い、定率法または定額法のいずれかの減価償却方法を選択し、経年による価値の減少分を適切に費用計上していく必要があります。定率法と定額法のどちらを採用するかは、事業主の判断に委ねられています。 取得時に「工具器具備品」勘定を借方記入し、減価償却費の計上に伴い同勘定の貸方に転記する会計処理が必要です。減価償却の仕訳は毎期継続的に行う必要があり、最終的にはパソコンの帳簿価額がゼロになるまで続けます。 このように、30万円を超える高額なパソコンの場合は資産計上が原則となり、定められた耐用年数に応じた適正な減価償却処理を行いましょう。 パソコン周辺機器の経費計上方法 ノートパソコンであれば、本体とモニター、キーボードが一体となっていますが、デスクトップパソコンを購入する際には、別途モニターを購入したり、その他の付属品を購入する必要がある場合もあります。 このような場合、減価償却の対象であるかどうかや、取得価額の範囲はどうかが気になる場合もあります。基本的には、本体と合わせてモニターやキーボードが一体として機能するかどうかによって資産かどうかが判断されます。 例えば、モニター、キーボード、ハードディスクを別々に購入した場合でも、それらを一体として使用することを前提としている場合、それらの合計額を取得価額として扱います。しかし、パソコンを5台購入した場合は、それぞれが単独で機能するため、1台ずつに分けて取得価額を考えます。 また、既にパソコンが1台ある状態でモニターを別途購入した場合は、モニターを別の資産として考えることもできます。これは、すでに機能しているパソコンにモニターを追加するだけであり、モニターが単独で機能する資産と見なすからです。 外部ストレージやケースなども個別の資産として扱うことができます。 なお、パソコンの運送料や購入手数料は付随費用として考えられ、これらは取得価額に含める必要がありますので、注意が必要です。また、取得価額に消費税を含めるかどうかも重要なポイントです。税抜経理方式を採用している場合は、取得価額に含めませんが、税込経理方式の場合は含める必要があります。 パソコンをリースする場合の経費計上方法 最後に、パソコンを購入ではなくリースによって取得する場合の経費計上方法を解説していきます。パソコンのリースに伴う経費処理は、リース期間や契約の内容に応じて3つのケースが考えられます。それぞれ解説していきます。 所有権移転ファイナンス・リース取引の経費処理 所有権移転ファイナンス・リース取引は、通常の購入と同様の売買処理が行われます。このリースはリース期間中に解約できず、フルペイアウトが必要な取引を指します。期間終了後にはリース資産の所有権が借手に移ります。例えば40万円のパソコンをリースした場合の仕訳は以下の通りです。 借方 貸方 リース資産 400,000円 リース債務 400,000円 摘要:ノートパソコン 所有権移転外ファイナンス・リース取引の経費処理 所有権移転外ファイナンス・リース取引も、購入時の処理は基本的に所有権移転ファイナンス・リース取引と同様ですが、減価償却費の計算方法が異なり、「リース期間定額法」によって計算されます。所有権が移転しないため、減価償却費はリース期間に応じて計算されます。 オペレーティング・リース取引の経費処理 オペレーティング・リース取引は「リース料」として経費処理されます。口座からリース料が引き落とされた場合の仕訳は以下の通りです。 借方 貸方 リース資産 400,000円 リース債務 400,000円 摘要:リース料の支払い 個人事業主がパソコンをリースした場合は、所有権移転ファイナンス・リース取引が売買処理、オペレーティング・リース取引が賃貸借処理となります。ただし、仕事用とプライベート用の併用時は、家事按分が必要で、購入することに比べるとメリットばかりではなくデメリットや手間があることも意識しておきましょう。 適切な仕訳処理を把握しよう 個人事業主がパソコンを経費計上する際の勘定科目と仕訳方法は、パソコンの取得金額によって異なります。 10万円未満の場合は全額を当期の経費(雑費や消耗品費等)に計上します。10万円以上20万円未満では、原則的に資産の備品勘定で計上し減価償却します。一括償却資産扱いも可能で、この場合は3年で全額償却します。また青色申告の中小企業や個人事業主は少額減価償却制度を活用し全額即時償却することもできます。 30万円未満の場合も同様に、原則は資産計上と減価償却ですが、青色申告の中小企業や個人事業主であれば少額減価償却資産の特例で全額即時償却が認められています。また、クレジットカード支払いやリースなど分割払いをしている場合には異なる仕訳が必要になります。 このように、パソコン購入時の経費計上は金額によって方法が変わるため、適切な勘定科目と仕訳処理を把握する必要があります。また制度の適用要件を把握するなどの注意点があります。適切に経費計上をしなければ税務調査の際に問題になる可能性があるため、税理士に依頼し、正しく経費計上を行うのが安全で確実です。 税理士法人プロゲートでは、個人事業主の青色申告や経費計上に関するアドバイス、領収証の仕訳などの実務にも対応しております。まずはお気軽にご相談ください。 関連記事:経費はレシートでもいい?手書き領収書との違いや活用するメリットなど詳しく解説! 関連記事:経費計上のタイミングはいつがベスト?考え方を解説 関連記事:個人事業主の融資はいくらまで受けられるのか?


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会社設立は税理士に相談すべき?費用や相談するメリットなどを紹介!

「会社設立の際、税理士が必要?」と疑問に思う方は多いはずです。 この記事では、税理士に依頼する場合の費用やメリットを解説いたします。 これから法人化を検討されている方の参考になればと思いますので、ぜひ最後までお読みください。 会社を設立するのに税理士は必要? 結論、会社設立に税理士は必ず必要という訳ではございません。しかし、税理士に依頼することで得られるメリットがあるのも事実です。 具体的なメリットはこのあと紹介しますが、設立時点で相談することで、設立後の業務を円滑に行うことにも繋がります。 関連記事:会社設立は自分でする?専門家に依頼?費用と手続きについて解説 司法書士の相場は2~5万円 ※税理士は会社設立できません。司法書士法違反になります。 まず、会社を設立するときの費用は、株式会社と合同会社で変わってきます。株式会社の設立にかかる費用は約245,800円~。合同会社の設立にかかる費用は約103,500円~になります。※書類定款認証の場合。   株式会社 合同会社 定款認証手数料 約5万円(紙、電子同一)※資本金によって異なる。 - 定款印紙代 4万円(紙)※電子定款の場合0円 4万円(紙)※電子定款の場合0円 定款の謄本手数料 約2,000円(紙、電子同一) - 登録免許税 15万円~(※資本金額×0.7%、または15万円のどちらか高い方) 6万円~(※資本金額×0.7%、または6万円のどちらか高い方) 実印の作成費 約3,000円~ 約3,000円~ 印鑑証明書 300円×枚数 - 登記事項証明書 500円×枚数 500円×枚数 資本金 1円~ 1円~ 専門家への費用 約2~5万円 約2~5万円 内訳は「定款認証手数料」「定款印紙代」「定款の謄本手数料」「登録免許税」「実印の作成費」「印鑑証明書」「登記事項証明書」「資本金」に分けられ、加えて司法書士などの専門家に依頼すると手数料が必要になります。 定款印紙代は、作成した定款を公証人役場で認証してもらう際に定款に貼りつける印紙代のことで、定款認証の手続きの時に発生します。株式会社も合同会社も4万円かかりますが、ICカードリーダーによる電子認証が可能で、会社設立にともなう法定費用の中で唯一コストを抑えられる部分です。予算が限られている場合は、電子認証に対応している専門家を選びましょう。 定款認証手数料は、作成した定款を役所で認証してもらう際にかかる手数料です。株式会社は資本金の額によって3万円〜5万円と変動しますが、合同会社は定款認証手数料はかかりません。 登録免許税は、法人登記に対して課税される税金で、設立時の資本金の0.7%を基本に最低金額が定められています。 株式会社の場合は資本金×0.7%の金額が15万円に満たなければ登録免許税は最低15万円、合同会社は6万円に満たなければ最低6万円です。しかし、株式会社も合同会社も基準を超えると超えた金額を請求されるので注意が必要です。 その他費用は、他に実印作成代や登記事項証明書、印鑑証明書などそれぞれに手数料がかかります。 手数料は、司法書士のような専門家に依頼する場合に発生します。専門家によって異なりますが、一般的には2〜5万円前後が相場です。 税理士に依頼する4つのメリット ここでは、会社設立を税理士に依頼するメリットを4つ紹介します。 それぞれ、順にみていきましょう。 決算月や役員報酬の決め方のアドバイスがもらえる まず、税理士に相談するメリットは決算月や役員報酬の決め方のアドバイスがもらえることです。決算月は、設立から1年以内であれば自由に決められますが、本業の繁忙期や決算業務が重なってしまうと本業を圧迫してしまいます。 また、役員報酬にも税法上の決め方のルールがあります。決算月や役員報酬などの決め事の際にも会社設立時から税理士に相談しておけば、その都度アドバイスがもらえるため安心です。 記帳業務を外部委託でき、本業に集中できる 会社設立直後は、事務的な手続きがたくさんあります。例えば、会社の銀行口座の開設、各種届出の作成や提出、役員報酬や従業員給与の計算など、本業以外のタスクがあります。 特に記帳業務は、通帳やクレジットカードの利用確認、領収書の整理をした後に会計ソフトに日々入力しなければなりません。毎日本業が終わった後に行うとすると、慣れていない方にとってはストレスがかかります。 経理担当者を雇う場合もありますがアルバイトでも月額10万円かかるので中々雇おうとは思いません。記帳代行を請け負う税理士事務所の税理士を顧問につけることで、正しい会計処理の方法を指導してもらえたりコスト削減になったりします。 しかし、税理士の中には顧問契約の範囲に記帳代行を含めない場合もあるため注意してください。 資金繰りの相談ができる 融資などの資金繰りのサポートをしてくれることも大きなメリットです。 起業したての会社にとって、融資はとても重要なものです。内容としては、最大で200万円の補助金を受けられる小規模事業者持続化補助金や、創業時にのみ利用できる創業融資があります。 融資に必要な書類作成のサポートをしたり、個人では中々見つけにくい補助金や助成金の活用についても提案してくれる場合もあります。 税務署に関する書類のアドバイスや連絡の代行をしてもらえる 他にも税務に関するアドバイスや提出代行もメリットの1つです。違法な申告漏れが発覚すると、追徴課税されるだけでなく自社の信頼性も失ってしまいます。 税理士と顧問契約をした場合、多くの税理士事務所は追加料金なしで税務に関する届出書の作成と提出を行ってくれます。税理士が行うことで提出漏れを防げるほか、慣れない書類作成に労力や時間をかけずに済みます。 また、税務署から法人設立届出の連絡先に記載された電話番号に電話がかかってくることもあります。 税務代理権限証書という届出書に税理士事務所の名前や連絡先を記載して税務署に提出することで、原則として会社ではなく税理士事務所に電話が行くようになるので社長のもとに突然電話がくることもありません。また、最近では税務署を装って税金が未納なことを伝えて指定の振込先に振り込ませる詐欺がおこっています。税理士を顧問につけて、何が起こっても「税金関係はすべて税理士に確認します」というサイクルを取れば、安心できます。 設立前に税理士に相談すべき理由 会社設立を税理士に相談することは必須事項ではありませんが、多くの経営者が設立前から税理士に相談しています。ここでは会社設立時に税理士に相談すべき理由を紹介していきましょう。 会社設立前に税理士に相談する理由は主に3つあります。 その他専門家も紹介してもらえる 会社設立の手続きに関する専門家には税理士の他に、司法書士や行政書士、社会保険労務士がいますが、それぞれの士業には専門分野があるためできることとできないことが決まっています。 税理士は、司法書士や行政書士、社会保険労務士など各専門家と提携しているケースが多いです。 例えば、法務局への登記申請は司法書士、公証役場での定款の認証は司法書士や行政書士が代行できます。社会保険労務士は、健康保険や厚生年金保険といった社会保険関係の手続きなどを代行できます。特に会社設立時から社員を雇用する場合は、自分で創業に関する手続きや営業、商品開発などを行いながら複雑な社会保険関連の手続きや日々の給与計算や労務管理を行うのは現実的ではありませんし、経営者として本業に邁進するためには他の士業との連携は欠かせません。 税理士は会社設立時の税務関係の届出を代行でき、税理士に顧問契約を依頼することで提携する各士業と連携して、会社設立の手続きの全てを代行してもらえます。創業直後の大事な時期を有効に使うためにも、税理士に相談してアウトソースできる業務は他の士業の専門家に依頼して進めていきましょう。 事業開始直後から経理・会計処理や税務処理を依頼できる 会社を経営する上で経理や会計業務は欠かせません。特に会社を設立したばかりの時期は、経営者自身が会計業務を行うことが多く、慣れない帳簿付けや管理に苦労するケースが多いです。よく分からないままなんとなく帳簿付けを行い、決算申告の時に慌てて相談にくる方もいらっしゃいます。 会社設立前に税理士に相談・依頼できていればこのようなことにはなりません。 また、法人の決算申告は個人の確定申告に比べて複雑なため、専門的な知識がないと作成は難しく、消費税の確定申告も厳格な経営処理が求められ、計算方法も非常に複雑です。決算申告や消費税申告書などの作成と提出を代行してもらえるのは大きなメリットになります。 創業時の資金調達に関するアドバイスを受けられる 会社設立の段階で多くの経営者が直面する悩みが資金調達です。 会社を設立すると様々な費用がかかるため、その費用をどう調達するかによって会社の成長速度が変わります。また、創業時にのみ利用できる融資制度もあり、それらを教えてもらえることは会社設立前に税理士に相談するべき大きな理由になるでしょう。また、税理士から金融機関を紹介してもらえる場合も多く、融資実行率も高くなります。 関連記事:起業家必見!日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の必要書類を紹介 関連記事:自己資金なしでも創業融資は受けられる?注意点を解説 税理士に依頼する場合のデメリット これまで、会社設立を税理士に依頼する場合のメリットについて紹介してきましたが、デメリットがないわけではありません。そこで、どのようなデメリットがあるかを紹介していきましょう。 顧問契約が必須の場合がある 「会社設立手数料0円」という広告を見ることも多いと思いますが、その条件としてその後の顧問契約を必須にしている場合も多いです。 税理士の顧問契約料は、税理士事務所の規模や提供するサービス内容によって異なりますが、起業初期はどうしても負担になります。経費の増加など予算を考慮し、見積もりを比較することが重要です。 税理士と相性が合わないときがある また税理士との相性は、会社の運営において重要な要素です。税理士は経理・税務面でのアドバイザーとして長期間にわたって協力するケースが多いため、信頼関係とコミュニケーションの円滑さが求められます。 初めての税理士の場合、相性があわないこともあるでしょう。コミュニケーションが取りづらい場合、円滑な業務進行が難しくなる可能性があるため、事前に面談を行い、相性を確認しましょう。 会社設立時に税理士に依頼する流れ 会社設立時に税理士に依頼する場合、どのような流れで依頼すれば良いでしょうか。ここでは税理士への依頼の流れを紹介していきます。 ①インターネットで検索してみる 顔を合わせられる税理士を希望するのであれば地元の税理士に依頼する方がいいですし、遠方であっても料金を優先するのであればそのような税理士を探す必要があります。どのような税理士に依頼するかは経営者の判断になりますが、どちらを選択するにしてもまずはインターネットで税理士を検索してみましょう。 ②問い合わせや無料相談で実際に話をしてみる 自分の考え方に合う事務所が見つかれば、問い合わせフォームからの問い合わせや無料相談などに応募してみましょう。最近は多くの事務所で無料相談を行っていることから、いま抱えている課題について相談してみて、納得できるアドバイスをくれる税理士事務所がないかを探していきます。本格的にサポートを依頼したいと思える事務所が見つかるまで、このステップを繰り返していきましょう。 ③税理士事務所と契約する 自社の課題に対して的確にアドバイスしてくれる事務所が見つかったら、契約に進みましょう。契約は案件ごとのスポット契約と、常時サポートを受けるための顧問契約のいずれかの方法で契約するのが一般的です。どちらを選択するかは経営判断です。「まだ付き合いが浅いのでもう少し関係性を築いてから顧問契約をしたい。」という場合や顧問契約をする余裕がまだない場合にはスポット契約を選択し、会社設立直後から税理士と二人三脚で会社を成長させたいと考える場合には顧問契約を選択しましょう。 良い税理士を選ぶ時のポイントは? 初めて税理士に依頼する場合、「自分に合う税理士をどうやって探せばいいのだろう」と不安になる方もいると思います。 ここでは、良い税理士を選ぶ際のポイントを紹介します。 良い税理士を選ぶ際のポイント 良い税理士を選ぶ際のポイントは次の3つです。 税理士の実績を見る 税理士業務を依頼する前には、相手が税理士資格を持っているかを確認しておきましょう。資格を確認する方法は、面談の際に税理士証票を見せてもらうか、日本税理士会連合会「税理士情報検索サイト 」で検索して確認することができます。また、税理士によって創業に強い税理士事務所もあれば、相続に強い税理士、公益法人や医療法人に強い税理士など、専門性にも種類があります。 そのため、会社設立の際に依頼するなら、会社設立支援の実績がある税理士を選ぶといいでしょう。 コミュニケーションとレスポンスの速さ 当然レスポンスは早いに越したことはありません。ビジネスにおける損失を防ぐには、税理士からのレスポンスの早さは重要なポイントです。 また、税理士事務所が会社に来てくれる訪問型の場合だと移動が電車や車を運転することが多いため、移動時間は電話を取れないときもあります。税理士と顧問契約を結ぶ前に、メールの返信や対応の早さを確認するようにしましょう。 最新の税制や税務調査に強いか 税金についてさまざまなことを定めている税法は毎年、改正が行われています。会社にとって有利な改正もあれば、不利な税制もあります。 また、会社を運営していく中で、税務調査が入る可能性もあります。税務調査とは、納税者が正しく税務申告を行っているかどうかを税務署が調査をすることです。税金を安くするために売り上げを隠して、利益を少なく計算する脱税については、争うこともありませんが、見解の違いにより会社サイドと税務署サイドが争う場合があります。 税務調査に強い税理士事務所が社長の代理として、税務署に対して適切な主張を行うことが重要となります。 税理士を選ぶ際は、税務調査に強いかどうかも確認しましょう。 仙台市で会社設立ならプロゲート! 今回は、会社設立に税理士は必要なのか、設立にかかる費用などをまとめました。 税理士などの専門家は、会社経営をする上で、長期的に付き合っていくパートナーになります。「価格が安いから」といった安易な理由で選ばず、信頼できるパートナーか、今後の事業成長を支えてくれるかどうか考えて選定しましょう。 当社では、グループ内に税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人を擁しており、司法書士とも提携しておりますので、「会社設立」の手続きに対応しています。設立後の融資や税務全般にも精通している為、一貫して支援させていただいております。 法人及び個人事業主様の会計業務もサポートしておりますので、会社設立に関連するお悩みがあればお気軽にご相談ください。経験豊富な税理士が、お客様の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。 関連記事:日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の流れをプロセスごとに解説 関連記事:創業融資は個人事業主でも受けられる?おすすめの資金調達と融資の流れを解説 関連記事:会社設立時の「見せ金」はNG!正しい資本金の計上方法を解説


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経費はレシートでもいい?領収書との違いや活用するメリットなどを解説

事業を行うえで発生した費用は、経費として処理されますが、経営者や個人事業主などの事業者だけでなく、多くのビジネスパーソンがその費用を立て替えた経験があるでしょう。多くの場合、経費だと証明するためには領収書が必要になり、領収書がないまま経費精算することは基本的に認められていません。 経費を立て替えた際に「領収書を貰い忘れてしまった」「レシートで代用したい」というケースもあると思います。 そこで今回の記事では、経費はレシートでも有効なのか、レシートと領収書の違い、そして領収書の代わりにレシートを活用するメリットとデメリットについて解説します。 この記事を読んで「レシートで代用できるなら活用したい」と思う方の参考になればと思いますので、ぜひ最後までお読みください。 経費精算はレシートでも可能です 経費精算には領収書が必須だと思われていますが、実際にはレシートでも経費精算は可能です。その理由は、支払い先や領収書が発行された日付や支払い金額が表記されていれば、領収書はもちろん、レシートも有効とされています。 領収書の本来の目的はお金を支払ったことの証明です。税法上において、領収書は「金銭や有価証券の受理を証明する書類」とされています。また、消費税法の関係する条文の中にある仕入れに係る消費税額の控除には、「事業者に交付する請求書、納付書やこれに類する書類」との記載があるため、必ずしも領収書である筆等はありません。領収書やレシートは「これに類する書類」に該当するので、法的には領収書もレシートも同等の効力を持つ書類という扱いになります。但しインボイス制度の導入後は、レシートや領収書という区別ではなく、インボイスとなる書類の保存が必要となります。 会社はなぜ領収書を活用するの? 同じ金額を証明するものであれば、領収書ではなくレシートで良いのではないかと思う方もいるでしょう。そこで、レシートと領収書の違いや会社が領収書を重視している理由、レシートや領収書を保存する期間を解説します。 レシートと領収書の違い レシートと領収書の最も大きな違いは、記載されている内容です。レシートには日付・商品名やサービスの品目・単価・支払い方法・発行者などが印字されます。一方の領収書にはレシートに印字される情報に加えて、購入者が誰なのかを表す「宛名」が記載されます。 一般的には領収書の方が正式なものというイメージを持つ人が多いですが、税務上は違いがありません。 会社がレシートより領収書を重視する理由 経理上は領収書でもレシートでも問題ありませんが、多くの会社では領収書の提出を重視します。その理由は、これまでのビジネス習慣の延長だからです。 レジから出力されるレシートは「感熱紙」という、熱を利用して印字する方法を採用しています。この方法だとインクの交換の必要がないため、スペースの限られたレジの印字方法として普及しました。 しかし、昔のレシートは感熱紙の性能が低かったため、レシートの文字は1年もすると消えてしまうので財務関係の保管資料として役に立ちませんでした。近年の感熱紙は性能が上がっており、消えにくくなっていますが、それでも「熱に当てると文字が読めなくなる」というリスクが完全に無くなったわけではありません。 一方の領収書は手書きやインクによる印刷で記入されるため、10年の保管にも対応できます。 このことから「レシートは文字が消えるから、財務書類として使えない」という認識を持つビジネスパーソンは、特に年齢が高いと一定数存在するため、「経費精算する場合はレシートを認めない」というルールがある会社は現在でも数多く存在します。 レシートと領収書の保存期間 法人の場合は会社の規模に関わらず、7年間保管する必要があります。特に領収書は取引を証明する書類といわれる証憑書類とされ、一定期間の保管が義務付けられているので、勝手に破棄できません。 7年間というのはレシートや領収書が発行されてからではなく、決算日の翌日から2か月後の法人税申告期限からです。 また、個人事業主の場合は青色申告の方だと法人と同様に7年間、白色申告の方は5年間、青色申告の方でも前々年の所得が300万円以下の場合は白色申告と同様に5年間となります。青色申告・白色申告いずれの場合も確定申告の期日を起点に保管しないといけないので注意しましょう。 過去の領収書を電子保存する場合は、事前に申告が必要 過去に作成した領収書は、電子帳簿保存法により紙で受領した領収書も電子化し、スキャナ保存できます。以前は事前に申請書を提出しなければ保存できず、スキャンできる期限も短かったため紙媒体での管理が一般的でした。しかし、近年は法改正によりスキャナ保存が認められ、電子データで保存するハードルが下がりました。 レシートは経理上有効なのか? 経理上は、領収書を使用してもレシートを使用しても問題ありません。消費税法では、経費精算に必要な証拠書類には以下の必要事項が定められています。 書類作成者の氏名または店名などの名称(店名) 取引年月日 取引内容 取引金額 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(宛名) レシートは宛名はありませんが、店名・日付・品目・単価といった取引を証明するために必要な項目が印字されています。人の手による改ざんの可能性がないことから、宛名が「上様」と記載されている領収書や、詳細が「お品代」と記載されており、取引の内容が不明な領収書よりも、レシートの方が税務調査では疑われません。 領収書やレシートの保管方法 続いて、領収書やレシートの保管方法について解説していきましょう。 スクラップブックやコピー用紙に貼る 最初に、最もポピュラーなのは、のりで貼る方法です。これは、昔から経理の現場で行われてきた方法です。スクラップブックに貼ることが一般的ですが、個人的にはコピー用紙に貼ることをおすすめします。コピー用紙はスクラップブックと比べて、安価であること、常に事務所にあるページを追加・交換することができることなど、手軽さと自由度が高いのが特長です。 領収書やレシートは日付順に、まっすぐに、重ねないようにと、非常に細かい注意が払われがちですが、実際にはそこまで丁寧に貼る必要はありません。最低限、月ごとに分けていれば、少し歪んだり重なっていても問題ありません。 保管を効率化するポイント 領収書の数が増えると、従来の方法では追いつかなくなることがあります。そんなときは、以下の方法で工夫すると効果的です。 分類方法を工夫する 企業が大きくなると、月ごとの分類だけでは不十分な場合があります。レシートの量も増え、複数人で共有する機会も増えるからです。その際には、以下のような分類方法を考えてみてください。 支払い方法別(現金、クレジットカード、振込など) 従業員別(立替払い) 部門別 勘定科目別 取引先別 これらを参考に、会社の業態に応じて、わかりやすい分類方法を採用しましょう。 個人事業主の場合は、月ごとにざっくりと分けるだけで十分です。 入力→保管の順序を取る 一般的には、レシートや領収書を保管してから入力する方法が一般的ですが、オススメは逆に「入力→保管」の順序で対応することです。 「保管→入力」の順番で処理をすると、入力したかどうかの確認に手間がかかり、重複や抜けが生じやすいこと、また丁寧に貼らないと入力が難しいといったデメリットがあるうえに非効率的です。 その点、「入力→保管」の順序であれば、未保管のものは全て入力すれば良く、適当に貼っても問題ないがなく、保管したものは見直す必要がないなどのメリットがあるので効率的です。 この方法を採用すると、レシートが溜まらずに入力を行うようになります。また、入力するまで保管できないため、机がレシートで埋まる前に入力を済ませたくなります。 レシート活用時のメリットとデメリット 続いて、領収書の代わりにレシートを活用するときのメリットとデメリットを2つずつ紹介します。 レシートを活用する2つのメリット レシートを活用するメリットは次の2つです。それぞれの内容について紹介していきましょう。 買い物の内訳が詳細に分かる 最初のメリットは、レシートには買い物の内訳が表示されていることです。例えば、「11月22日にコピー用紙などの事務用品を現金で7,344円払った」と書かれていたとします。 領収書を発行した場合、基本的には金額のみが書かれています。ですから、その領収書を貰った取引でどんな買い物をしたか、細かい内訳がわからなくなってしまいます。一方、レシートは購入品目が詳しく書かれているので、買い物の内訳を把握するのは領収書よりもレシートの方が優れています。 日付や金額が正確 もう一つのメリットは、レシートに表示される日付や金額が正確なことです。手書きの領収書の場合、手書きなので日付が抜けていたり金額が間違っていたりという場合があります。不備があった場合、日付であれば訂正できますが、金額の間違いは訂正できません。 お店にもう一度行って訂正してもらうか、その領収書を経費に入れるのを諦めることになります。その分レシートは機械が読み込んでくれるので、間違いが手書きの領収書よりも遥かに少なくなります。 レシートを活用する2つのデメリット レシートを活用する上では、デメリットも把握しておく必要があります。レシートを活用する場合のデメリットは次の2つです。 宛名の記載がない 一つ目のデメリットは、レシートには宛名の記載がないことです。宛名がないということは、実際に誰がその買い物を行ったかをレシートだけを見ても分からないということになります。私用のレシートを事業の経費として計上して、税務調査で不正が発覚することは実際に起こっています。一切の不正がなかったとしても、本当に事業の経費として使ったのか判断しづらくなり、税務署から疑われるきっかけになりやすいです。 要件を満たさない領収書が発行されるリスクも 個人事業のお店では店名と代金しか書かれていない簡易的なレシートを用いている場合があります。例えば、店名と代金しか書かれていないと領収書の記載要件を満たしているとはいえないので、経費に計上できません。領収書を作成するのが会計に精通していない店員が作成した場合、「正しい領収書を作ってほしい」と頼んでも、その店員がそもそも正しい領収書の記載事項を知らないので、正しい領収書が発行されないリスクもあります。 レシートを使うときのチェックポイント ここでは、領収書の代わりにレシートを使うときにチェックすることを3つ紹介します。 記載内容をチェックする 領収書と同じようにレシートを証明書として使うには、次の8つが明記されているか確認しましょう。 取引年月日 支払金額 商品・サービスの明細 レシートの発行元 宛名 適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号 税率ごとに区分した消費税額等 税率ごとに区分して合計した対価の額 不足している情報があれば、レシートの余白や裏に手書きで不足情報を記入しておきましょう。また、インボイスとして保存する場合は、買手側は情報を追記できないので注意してください。 公私混同していないか確認 レシートで経費精算する前に内訳をチェックし、仕事で必要な商品やサービスのみのレシートであるか確認しておきます。もしプライベートで利用した商品のレシートが混ざっている場合は、レシートを一覧し、仕事用の商品を丸で囲んだりマーカーで印をつけておいたりして、仕事用で使っているレシートの金額のみを経費として計上しましょう。プライベートで購入した商品のレシートが混ざっていても、区別して経費として認められる項目のみ計上すれば問題ありません。 5万円以上の買い物は収入印紙の有無をチェックする 税抜5万円以上の買い物をした場合は、売上金額に応じて収入印紙が必要になります。レシートも領収書と同様に必要になるため、レシートを受け取る際には収入印紙が貼付されているかチェックしておきましょう。 会計ソフトを使い、様々な経理業務を行う 領収書を用いた経費計上などのさまざまな経理業務をスムーズに行うために、会計ソフトを選ぶのもおすすめです。会計ソフトの中には、初めて導入する方でも簡単に使えるクラウド会計ソフトが多くあり、初年度無料でたくさんの機能が使用できるなど初心者向けのものもあります。 また、日々入力したデータは顧問の税理士や会計事務所とクラウド上で共有できるものもあるので、経理業務がわからない個人事業主におすすめです。 領収書とレシートに関するよくある質問 ここでは、領収書とレシートに関するよくある質問を紹介します。 領収書とレシートの両方は貰えない? 領収書とレシートの両方は貰えません。なぜなら、領収書とレシートは双方が同じ取引に対する支払証明であるからです。一般的にレシートは購入時に自動的に発行されるもので、領収書は購入後に発行される公式な証拠書類です。 領収書とレシートの両方の証明書類を発行すると、二重精算となりトラブルのもととなります。しかし、勤務先によっては「宛名なしの領収書は経費精算に使用できない」といった独自のルールが決まっている場合があります。 その場合は、飲食店などに事情を説明して手書きの領収書を発行してもらい、レシートは発行者側に返却しましょう。 レシート以外に領収書代わりに経費になるものは? レシート以外にも代用できる書類は次の通りです クレジットカードの利用明細書 銀行の振込金受取書(振込明細書)・預金通帳 オンライン販売の確認メール・取引画面のキャプチャー画像 ご祝儀袋の表書きコピー・香典返しの挨拶状など クレジットカードの利用明細書とは、クレジットカードを使ったときにレシートと一緒に渡されるクレジット売上票と表記された書類です。レシートと同様に、取引年月日や支払金額などが記載されている必要があります。 しかし、クレジットカード会社からの請求明細書等は、商品やサービスの提供元が作成した書類ではないため、代用できないので注意しましょう。 銀行振込の取引の際に振込金受取書(振込明細書)が発行されます。振込金受取書は銀行が発行するものなので厳密には領収書ではありませんが、支払の証憑として代用できます。 オンライン通販やダウンロード販売などのオンラインで取引した場合は、確認メールや取引画面のチャプチャー画像が支払いの証明になりますが、納品書は領収書の代用品にはならないので、注意しましょう。 お祝い金を支払ったときはご祝儀袋の表書きのコピー、香典を支払ったときは香典返しの際の挨拶状(お礼状)などが支払いの証明になります。冠婚葬祭の会費については、招待状や告知メールを保存して代用しましょう。 経費に関するお悩みはお任せください 今回は、経費は領収書の代わりにレシートで代用できるのか、レシートを活用するメリットとデメリットなどをまとめました。会社や個人事業主にかかわらず、金銭に関することは知識がない素人が間違えたことをすると人生を左右します。 そのため、適切な対応を行うには、状況に応じた方法を理解して必要に応じて顧問税理士に相談しましょう。 税理士法人プロゲートでは、法人及び個人事業主様の会計業務をサポートしておりますので、経費清算に関連するお悩みがあればお気軽にご相談ください。経験豊富な税理士が、お客様の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。 関連記事:経費計上のタイミングはいつがベスト?考え方を解説


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創業融資は個人事業主でも受けられる?おすすめの資金調達と融資の流れを解説

多くの個人事業主にとって、独立してすぐに直面する課題は資金調達です。ですが、創業融資という制度を活用すれば、事業開始時の運転資金の確保やビジネスをスムーズに進めやすくなります。創業融資には様々な種類がありますが、最大3,000万円までの無担保・無保証人融資や、金利が低く据置期間が長い制度融資など、多種多様な創業融資制度が存在します。 そこで今回の記事では、個人事業主でも受けられる創業融資の種類や融資までの流れ、融資を成功させるためのポイントについて解説していきます。 個人事業主でも受けられる創業融資 個人事業主として開業していれば、様々な創業融資を受けることが可能です。まずは個人で受けられる創業融資について解説していきましょう。 信用金庫や信用組合の個人事業主向け創業融資 信用金庫や信用組合は地域や業種に根差した金融機関として個人事業主向けの創業融資を提供しています。信用金庫の創業融資には、信用保証協会が保証するものと、直接融資するものがあります。信用保証協会が提供する融資は、中小企業や個人事業主向けに利用されます。信用保証協会の保証付き融資は信用金庫や他の金融機関でも利用可能で、創業計画書が必要ですがひな型が用意されており、初めての方でも利用しやすい点が特徴です。 信用金庫が行う創業融資は、保証なしで融資を受けられるものです。ただし、これには貸し倒れのリスクが伴いますので、比較的規模の大きい事業に利用される傾向があります。信用金庫は事業者の返済能力や資金状況を検討し、適切な提案を行います。 信用金庫と信用組合は似た呼称の金融機関ですが、それぞれ違いがあります。それは、信用金庫が信用金庫法に基づいて規制されているのに対し、信用組合は中小企業等協同組合法によって設立されている点です。利用者の呼び方も異なり、信用金庫では会員と呼ばれますが、信用組合では組合員と呼ばれます。 また、それぞれは利用できる範囲にも違いがあります。信用組合は通常、市町村単位で展開されますが、信用金庫は特定の地域や業種に限定される場合があります。業種に特化した信用組合も存在しており、特に業域信用組合と呼ばれます。特定の地域や業種で創業する場合は、地元の信用金庫や業種に対応している信用組合が利用可能です。 日本政策金融公庫が実施している創業融資 新創業融資制度は、日本政策金融公庫が提供している事業資金融資制度であり、最大3,000万円を限度額として無担保・無保証人で融資が受けられることが創業融資の特徴です。対象者は新規事業や創業2期目までの事業者であり、自己資金の10分の1以上が要件ですが、同業種で経験のある者や特定創業支援事業を受けた者は除外されます。 日本政策金融公庫の創業融資を利用するメリットは、迅速な融資と無担保・無保証人での利用が挙げられます。特に個人事業主や小規模企業にとっては、民間金融機関での融資が難しい場合でも利用できる点が大きなメリットと言えるでしょう。さらに、融資までの期間が1カ月〜1カ月半と短く、手続きが迅速に行える点も大きな利点です。 関連記事:日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の流れをプロセスごとに解説 関連記事:起業家必見!日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の必要書類を紹介 地方自治体の創業融資 近年は、地方自治体が個人事業主をはじめとした起業家やスタートアップに対して創業支援を行うケースが増えてきました。地方自治体が起業家の支援に注力する理由は、「創業支援や企業誘致が地域経済に最も効果的である」という点です。新たな企業が地元に誕生すると、法人市民税をはじめとした税収が増加し、雇用機会が生まれ、これにより地域経済の活性化に貢献します。さらに、その企業が地域に定着すると、新たな企業が育成され、地域の発展につながります。同様に、地方自治体によっては融資だけでなく補助金を出しているケースもあります。移住を伴う起業であれば、移住に関する補助金が受けられるかもしれません。 一般的な地方自治体の創業融資制度は、低金利や無担保・無保証などが特徴です。これにより、創業資金の一部または全額の利子相当額が補助されます。次に、融資制度以外の支援についてです。地方自治体は地域の状況や課題を把握しており、起業家に対して適切な助言や支援を提供しています。起業塾やセミナー、個別相談などのプログラムがあります。 ただし、融資は確実に受けられるわけではなく、手続きに時間がかかる場合もあります。創業支援を受けることを目的に移住を検討している場合は、融資制度のある自治体に移ることを決断する前に、自治体が提供する個別相談などの支援を利用することをおすすめします。 個人事業主が創業融資を受ける場合の流れ 続いて、個人事業主が創業融資を受ける場合の流れについて紹介していきます。 ①自己資金を調達する どのような創業融資を受けるかに関わらず、原則として自己資金がゼロの状態で創業支援を受けるのは簡単ではありません。また、日本政策金融公庫の新創業融資制度のように創業資金の10分の1以上の自己資金が融資の条件となるケースがあります。 例えば、1,000万円の創業資金が必要な場合、その10分の1である100万円は最低限用意しなければなりません。ただし、自己資金の9倍を必ず借りられるわけではなく、実際には自己資金の2~5倍程度の融資がほとんどです。創業融資に必要な金額を算出したら、その金額の1割程度の自己資金を用意できるように資金調達しておきましょう。 関連記事:自己資金なしでも創業融資は受けられる?注意点を解説 ②どの創業融資を受けるかを決める 起業の準備が整ったら、どの創業融資を受けるかを検討します。 創業直後の資金調達方法としておすすめしたいのは、日本政策金融公庫と地方自治体の融資です。日本政策金融公庫は、創業を支援する機関ですので、創業融資を最も受けやすいといえるでしょう。特に注目すべきは「新創業融資制度」です。この制度は、個人事業主をはじめとした起業家、事業開始後に確定申告を2期分行っていない方を対象に、担保や保証人なしで融資を受けられるものです。 また、地方自治体の制度融資も選択肢に入れておきましょう。これは先ほど紹介したように都道府県や市区町村などが、起業直後の個人事業主や起業家を支援する制度です。通常では融資が難しいケースでも、自治体の紹介状があれば融資が可能になります。この制度を活用することで、低金利で長期間にわたって融資を受けることができるなど、多くのメリットがあります。 ③必要書類を作成する どの制度を利用して創業融資を受ける場合にも、「融資申込書」と「創業計画書」の作成が必要となります。融資申込書は申込者の基本情報や融資の詳細を記入する書類で、金融機関などの窓口やホームページから入手し、申し込みます。 「創業計画書」は 創業の動機や経営計画、資金調達方法などを詳細に記入する書類です。創業計画書の出来が融資の可否を左右すると言っても過言ではない重要な書類です。しっかりと作り込むようにしましょう。その他にも「月別収支計画書(資金繰り計画書)」や「見積書(設備資金が必要な場合)」などの提出が求められる場合がありますので、指定の書類を準備します。 ④創業融資の申し込みをする 書類作成の目処がついたら、創業融資の申し込みを行いましょう。事前に必要書類を聞くなどで相談している場合は、そのまま担当者に創業融資の申し込みを行いましょう。多くの場合、創業融資を申し込むと面談を行うことになります。この際に面談に必要な必要書類を忘れずに聞いておき、面談までに準備しましょう。 どの制度を利用する場合も面談は約1時間で行われます。面談ではビジネスマナーに沿った服装を心がけましょう。自身の創業計画や業界動向についての理解、意気込みが評価されますので、自身の熱意や取り組みを伝えることが重要です。 ⑤創業融資の審査を受ける 創業融資の審査は面談と提出された事業計画書を元に行われます。特別な事情がなければ、遠隔地の物件を担保にする場合を除き、面談や現地調査から最大でも1週間程度で結果が通知されます。融資にあたって不動産を担保にしている場合は審査担当者が実際の店舗や事業所、自宅など担保になる物件の確認のため訪問するケースもあります。 ⑥創業融資が実行される 審査に合格し、創業融資が実行されると、借用証書などの書類が届きます。「借用証書」は融資が行われたことを証明する書類です。融資額に応じた収入印紙を貼り、借入人および連帯保証人(必要な場合)の署名と実印を押印します。必要書類を記入し、銀行口座で提出すると創業融資のお金が申込者の口座に振り込まれ、創業融資が完了します。 不動産担保を設定している場合、担保設定登記が完了してから融資金が振り込まれます。通常、この登記は司法書士によって行われますが、自己で行うことも可能です。ただし不備があればやり直す必要があり、その分融資が遅れるため注意が必要です。 個人事業主が創業融資を受ける場合の3つのポイント 最後に、個人事業主が創業融資を受ける場合のポイントについて解説していきましょう。 自分の信用情報をチェックする 創業融資を受ける場合に重要なのは「信用情報を綺麗にしておく」ということです。信用情報は、過去の支払いに関する遅延や滞納に関する情報です。クレジットカードや消費者金融ローンなどの支払いの遅延や滞納だけでなく、債務整理や自己破産なども審査に影響を与えます。 お金を借りること自体は問題ありませんが、滞納や延滞を繰り返すと、信用情報に傷がつき、それが数年間残ります。信用情報に傷がつくと、融資の審査に通りにくくなります。自分の信用情報が気になる場合は、信用情報を管理している機関で情報照会を行うと安心です。 同様に、公共料金や税金の滞納には注意しましょう。公共料金や税金の滞納があると、日本政策金融公庫などの機関から融資を受けることが難しくなります。公共料金や税金は信用情報に記載されませんが、審査の際には提出される半年分の記帳がある通帳や、支払いの領収書が求められます。そのため、公共料金や税金の支払い状況は必ずチェックされます。 支払いが遅れている場合、審査で必ずしも不合格になるわけではありませんが、評価が低下する可能性があります。必ず滞納や支払いの遅延があればまとめて支払っておきましょう。 創業融資の際の審査ポイントを把握しておく 銀行での融資が難しい中小企業や小規模事業者、そして新規創業者にとって、信用金庫や信用組合、日本政策金融公庫は審査に通過しやすい傾向があります。ただし、審査基準が緩くなるわけではありません。審査を通過するためには、しっかりと準備を整えることが必要です。 そこで、融資審査を通過するための書類作成方法をご紹介しておきましょう。 1、事業計画書に現実的な内容を記載する 金融機関の審査では、事業計画書に具体的な内容を記載することが重要です。具体的な事業内容や取引可能な取引先一覧など、現実的な情報を提供してください。融資の申し込みには事業計画書の提出が必要ですが、内容が妥当かどうかが審査のポイントです。特に創業時には、事業の具体性を示すことが重要です。 2、資金用途を明確にする 資金用途をはっきりさせることも重要です。資金用途が明確でないと、審査に通らないか、融資額が減額される可能性があります。資金用途を明確にし、それを証明する書類を用意しましょう。不動産の購入や設備投資など高額な投資を行う場合には見積書の提出が求められるため、事前に用意しておくことも重要です。 3、説得力のある資金計画を立てる 当然ですが、金融機関は事業者からの返済を前提に融資を行います。ですから、返済見込みのある事業でなければ融資は行いません。したがって、明確な資金計画を立てることが必要です。創業後の売上や経費、資金の流れを明確にし、説得力のある資金計画を提出しましょう。 ビジネスを行う分野での事業経験をアピールする 創業融資を受ける際は、申込者本人が今後始めようとしている事業と同じ業界経験を持っているかどうかが審査されます。例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、融資を申請する際には、6年以上の業種経験が求められます。 創業融資を申し込むことは、特定の業種に特化した事業を立ち上げることを意味し、その分野での経験が重要とされます。融資を判断する側にとっても、申請者が業種に精通しているかどうかを知ることは重要です。事業を軌道に乗せ、返済可能かどうかが最も懸念される点です。6年以上の経験がなくても、業種経験を理解してもらい、融資が成立する可能性はあります。未経験の場合でも、アルバイトなどで半年から1年程度の経験を積んでから申し込むことが重要です。 業界経験がなく、経験を積む時間的な猶予がない場合には、業界経験以外のアピールが必要です。未経験でも、事業を支援してくれる人がいれば創業融資を成功させる可能性が高まります。例えば、英会話スクールを開業するが業界未経験の場合、配偶者が外国人で英会話スクールに勤務し、その生徒があなたのスクールに移ることを確約するという場合、融資の成功率は高まります。 自分自身に人脈がない場合は、配偶者や親、兄弟などから始めて徐々に広げていきましょう。人脈はネット上でも構築できますが、突然ビジネスの話を持ち出すのではなく、まずは会って関心を示し、少しずつ関係を深めることが重要です。 業界未経験者が創業融資を受けるのは難しいかもしれませんが、経験だけでなく人脈や資金、計画、情熱などが揃っていれば可能性は広がります。融資を受けるためには、これらのポイントを押さえて準備しましょう。 融資実行率90%以上のプロゲートへご相談! 創業融資は、個人事業主が事業のスタートを切るために重要なことであり、最初に越えるべきハードルといえるでしょう。近年は様々な金融機関だけでなく地方自治体も個人事業主や起業家をサポートしており、無担保・無保証人融資や、金利が低く据置期間が長い制度融資など、自分に合った融資制度を選択することが重要です。融資申し込みの流れは、自己資金調達、融資制度選択、書類作成、申し込み、審査、実行となります。審査通過率を高めるためには、自己資金の準備、創業分野での経験、信用情報の管理、公共料金の滞納防止などがポイントです。今回の記事でご紹介したこれらのステップを自分だけで乗り越えようとするのは相当な労力が必要となりますので、ぜひ税理士などの専門家のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。 税理士法人プロゲートは創業支援のプロフェッショナルとして、個人事業主の皆様の創業融資の実行をはじめとした資金調達、税務などをサポートしています。創業融資についてお悩みの場合には、ぜひお気軽にご相談ください。 関連記事:銀行から創業融資を受けられる?創業融資が可能な金融機関を紹介


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サラリーマンが在籍中に会社設立するメリットやリスクを解説

「副業から始めてゆくゆくは自分の会社を設立したい!」「収益が大きくなってきたから、法人化して節税したい」という考えを持つ方は多いです。副業での会社設立は将来の脱サラの基盤作りや、第二の収益の柱として活用したり、節税効果を受けられるなどのメリットが存在します。一方で、会社設立には時間やリソースの負担がかかります。 そこで今回の記事では、副業しているサラリーマンが勤務しながら会社設立する場合のメリットやリスク、会社設立に適したタイミング、流れを解説していきます。 サラリーマンも会社設立できるがリスクもある 副業をしているサラリーマンが会社を設立することは可能ですが、その際にはリスクも考慮する必要があります。どんなリスクがあるのかみていきましょう。 副業サラリーマンでも会社設立は可能 まず結論として、副業をしているサラリーマンでも会社を設立することは可能です。会社法上、どこかの法人に雇用されているかどうかに関わらず、年齢や破産経験の有無など一定の条件をクリアしている人であれば取締役に就任できるため、自分で会社設立を行うことが可能です。従って、法律的に副業しているサラリーマンが会社設立することは何ら問題がないといえます。 副業をしているサラリーマンが会社設立する場合、基本的に一般の会社設立と同様の手続きや条件が適用されるため、主に以下のような内容に注意する必要があります。 1.、雇用先との雇用契約や就業規則の確認 サラリーマンとしての雇用先との雇用契約や就業規則に定められている条件や制約を確認し、会社設立によって雇用先とのトラブルが生じないかを確認しておきましょう。後述するとおり、雇用契約や就業規則で「副業禁止」やそれに準ずる項目があり、雇用契約や就業規則を無視して会社設立し、副業が発覚した場合にはペナルティが下される場合があります。 2、本業とのバランス サラリーマンとしての業務と会社経営の間に競合が生じないように注意する必要があります。特にバランスを取らなければならないのが時間配分で、会社の就業時間以外でビジネスが回るようにバランスを取れるかどうかが重要です。また、副業が認められている会社でも「競業忌避義務(所属している会社と同業種や競合になる会社を設立しない)」が定められている場合には設立する業種を検討する必要があります。 3、将来的なビジョンと経営体制の構築 会社は設立時だけでなく維持にもコストがかかります。例え売上がゼロや赤字の会社でも法人住民税が発生します。会社を設立したものの本業が忙しくなり、副業ができなくてもコストを投入し続けなければならなくなるため、将来的なビジョンを立てて長期的に経営できる目処を立てておく必要があるでしょう。 これらの検討条件を満たし、適切な手続きを踏むことで、副業をしているサラリーマンでも会社設立が可能です。また、副業をしていても家族が社長に就任して対外的に家族が経営しているという体制が取れるのであれば、副業禁止の会社でも会社設立は可能です。 会社設立がバレると処分されるリスクも 雇用契約や就業規則で副業禁止が定められている会社で働いている場合、会社設立がバレることは大きなリスクです。具体的には雇用契約違反・就業規則違反になるため、懲戒処分や、最悪の場合は解雇されるリスクがあります。懲戒処分の場合は違反の内容に照らし合わせて「戒告」「減給」「停職」「懲戒解雇」のいずれかの処分が行われるでしょう。会社が定めているルールに違反している以上、雇用者や上司からの信頼を失い、職場内での評判や信頼性が低下する可能性があります。 さらに気をつけなければならないのは、所属している会社と同じ業種で会社を設立し、これがバレた場合のリスクです。副業によって会社の業務や機密情報を漏洩していると見なされる可能性があり、会社の利益や業績に悪影響を与えることがあります。このように判断されてしまうと契約違反や職務権限の濫用などとして法的措置を取る可能性があります。これには損害賠償請求や法的手続きの開始などが含まれます。 これらのリスクを避けるためには、会社の規則や契約条件をよく理解し、会社設立などの副業を行う際には事前に対策を行い、適切な承認を得ることが重要です。 副業しているサラリーマンが会社設立するメリット 副業をしているサラリーマンが会社設立することには、多くのメリットがあります。それぞれのメリットを紹介していきましょう。 ①幅広い科目で経費が認められるようになる 会計上、個人として認められている経費の科目は少ないですが、会社を設立することでビジネスに関連する支出の多くが経費として認められるようになります。 事務所の賃貸料 電気、水道、インターネットなどの公共料金 パソコン、プリンター、オフィス家具などの購入費用 会議やセミナーへの参加費用 広告宣伝費用 旅費交通費やビジネスで使用する車両の購入、維持費用 事業に必要な資材や消耗品の購入費用 これらの経費は、会社の事業活動に直接関連しているものであれば、通常は会社の費用として認められます。これにより、経費をしっかりと計上することで税務上のメリットを享受することが可能になります。ただし、プライベートでの支出は経費として認められませんので、公私の区別をしっかりつけましょう。 ②決算月を自分で決められる 会社を設立すると、経営者が決算月を自由に設定できるようになります。つまり、会社の決算期間を自分のビジネスの状況や税務上のメリットに合わせて調整することができるということです。副業を個人事業として行っている場合には一律で12月末締め、3月に確定申告の期限が定められています。本業で3月末決算の会社で働いていると、本業の繁忙期と副業の繁忙期が重なり、本業にも副業にも悪影響となるリスクがあります。 このような場合に会社を設立すると、副業の決算期をズラすことで本業の繁忙期と副業の繁忙期を分散させることができ、本業と副業のバランスを取れるようになります。副業とはいえビジネスをしていると決算作業は大変なので、本業の会社の繁忙期とズラせるのはメリットといえるでしょう。 ③家族に役員報酬を支払うことで給与所得控除が受けられる 会社を設立すると家族を取締役にして役員報酬を支払うことができるようになります。具体的には、家族に支払った役員報酬は、家族の給与として計上され、その分だけ所得税がかかります。家族の所得税率が割安な場合、所得を家族に分配することで税負担を軽減できます。 また、会社から家族に支払った役員報酬は、会社の経費として計上され、法人税の対象となる利益が減少します。また、役員報酬は給与所得控除の適用対象になります。これにより、会社の法人税負担が軽減されることになります。 さらに、家族を役員として参加させることで、本業が忙しくなった場合に対応してくれる人材を育成したり、将来的な事業の継承や発展に役立つ人材を育成したりできるようになるでしょう。 ④「副業」という肩書より社会的信用度が高まる 業界によっては副業や個人事業よりも会社を設立して代表取締役という肩書きで活動する方が社会的信用度が高まり、副業のビジネスを展開しやすくなるというメリットがあります。 一般的に会社を設立することは、個人が独自のビジネスを立ち上げ、経営する能力やリーダーシップを示すものと見なされます。これにより、クライアントからの信頼や尊敬を得やすくなります。また、会社経営は、ビジネスにおける経験や実績を証明する手段となります。これは、将来的なキャリアやビジネスの展開において信頼を高める上で有利です。 さらに、会社経営者として活動することで、経営者だけが参加できるビジネスコミュニティへの参加や業界団体への加入、業界内でのネットワークが拡大し、他の専門家やビジネスパートナーとの関係を築きやすくなります。起業してからわかることですが、世の中には様々な経営者向けの団体があり、そのような団体に参加することで顧客を拡大できるチャンスが拡大します。 これらの要素は、会社経営者としての信用度を高める効果があります。 ⑤融資や補助金・助成金を活用しやすくなる 副業でビジネスを行う場合、会社設立は銀行からの融資や補助金の獲得を容易にするメリットがあります。個人事業主と比較すると、法人格を持つ会社は信頼性が高く、銀行や投資家からの信用を得やすい傾向があります。なぜなら、会社は法的に独立した実体であり、ビジネスに関するリスクを個人と会社とで分離することができるからです。 会社は将来の成長や事業拡大の可能性が高く評価される傾向があります。このような信頼性と将来性は、銀行からの融資や補助金の審査においてプラスの要因となります。さらに、会社は資金調達手段も多様であり、株式や社債の発行、投資家との連携などが可能です。したがって、ビジネスの拡大や成長を見据えた場合、会社設立は銀行からの融資や補助金の獲得を円滑にする重要なステップと言えます。 また、国や地方自治体は経済活動の活性化や地域振興を目的として、多くの補助金や助成金を提供しています。こうした補助金は、新規事業の立ち上げや成長支援、特定の業界や地域の活性化など、様々な目的で用意されています。法人は個人事業主よりも信頼性が高く、ビジネスの長期的な持続性や成長性が高く評価されることがあります。そのため、補助金を提供する側から見れば、法人に補助金を投入することで、地域経済や産業の発展に寄与しやすいという期待があります。また、会社は法的な枠組みを持つため、補助金の利用や管理が個人よりも透明性が高いので、使途の証明がしやすいのが特徴です。そのため、政府や地方自治体が補助金の審査を行う際には、法人化したビジネスに対して補助金を支給する傾向があります。このように、会社設立は資金調達や補助金の獲得において有利に働くケースが多いため、大きなメリットといえます。 関連記事:日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の流れをプロセスごとに解説 サラリーマンが会社設立するタイミングは? 副業をしているサラリーマンが会社設立するとメリットを受けやすいタイミングがいくつかあります。具体的には以下のようなタイミングでの会社設立をおすすめします。 年間の売上が1,000万円以上になったタイミング 売上が年間1,000万円以上になったタイミングは会社設立を検討している方にとって最も適しているタイミングです。課税売上が年間1,000万円以上を超えると消費税の納税義務が発生します。それまで免税事業者として消費税免税のメリットを受けていた場合でも、課税売上が年間1,000万円を超えると免税のメリットがなくなるため、会社設立した方が税金やビジネスの拡大などの面でのメリットが大きくなります。特にインボイスが導入されてからは、個人事業主のままでいる必要性が薄れていることから、このタイミングで会社設立を検討するのが良いでしょう。 副業で年間500万円以上の利益が出たタイミング 個人事業主の場合、利益が年間500万円を超えると、青色申告をしていても個人事業主としての税額が法人よりも税額が高くなります。従って、会社設立せずに個人事業主のままでいる方が税額の面からのデメリットが大きくなります。これに加えて、会社の方が経費の幅が広がることから、会社設立した方が節税効果を高めることができるでしょう。法人を設立する際には初期費用や税務の手続きにかかるコストや労力が発生しますので、法人を設立するかどうか迷っている場合は、税理士などの専門家に相談し、ポイントを理解しながら進めていきましょう。 家族が社長になってくれるタイミング 副業している本人ではなく、家族が社長として就任してくれるタイミングも会社設立に適しています。その理由は、副業禁止の会社でも家族が経営者になれば副業のビジネスに関する課税が本人ではなく家族に対して行われます。 副業禁止の会社で副業がバレるのにはいくつかの理由があります。第一の理由は、勤め先が住民税の特別徴収を行っている場合が挙げられます。特別徴収とは、従業員の住民税を勤務先が代わりに引いて、市区町村に納付することです。給与明細に「住民税」という項目があれば、勤務先が特別徴収を行っていることがわかります。この年の住民税は前年の収入に基づいて決定されます。副業の収入が急に増えると、本人の勤務先の支払う給与の割合を超えて住民税が増える可能性があり、経理担当者に異変を感じさせるかもしれません。 また、勤務先と自分で設立した会社の両方で健康保険などの社会保険に加入している場合、年金事務所に「二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。これが勤務先に伝わると、副業がバレる可能性があります。さらに副業の会社の取締役であれば、その情報が公開されることがあります。法務局の登記情報や副業の会社のホームページ情報などで名前が公開される可能性があります。 これらのリスクは、家族の誰かが社長になることで解消されます。住民税の特別徴収も、社会保険や登記の名義も家族名義になれば、ここから副業が会社に発覚するリスクはかなり下がります。従って、家族が社長になってくれる場合も会社設立に適したタイミングといえます。 サラリーマンが会社設立する場合の流れ サラリーマンが会社設立する際の流れは以下のようなプロセスで進めていきます。 会社設立の流れ①定款作成 会社設立をする場合、まず最初に行うのが定款の作成です。定款には、法人の名称や事業内容、取締役の構成、決算月など法人としての基本的な事項が記載されるため、会社設立が初めての場合には、「絶対的記載事項」に沿って会社の組織を決定していくとスムーズです。 絶対的記載事項の内容は以下のとおりです。 1、商号(会社の名前。個人事業主でいう屋号に該当) 2、事業目的(どんな事業を行うのか) 3、本社所在地 4、資本金額 5、発起人(会社設立者)の氏名と住所 また、これ以外にも 6、株主総会の開催規定 7、役員報酬に関する事項 8、配当金に関する事項 などの事項を記入していく必要があります。定款作成は法律で定められた記載事項が載っていないと次に紹介する定款認証を受けられず、会社設立できないため専門家に相談してみても良いでしょう。 定款認証は、定款を公証人や法務局などの機関に提出して、その内容が法的に適切であることを確認し、認証を受ける手続きです。定款認証を受けた後、会社設立の次の手続きに進むことができます。 会社設立の流れ②定款認証 定款認証は、作成した定款を「公証人」という人にチェックしてもらい、法的に成立する定款かどうかを認証してもらうプロセスを指します。定款認証では作成した定款の内容が登記のために必要な定款としての条件を満たしているかをチェックしてくれます。定款の内容に問題がある場合は公証人から指摘が入るので、指摘の内容を修正します。 しかし、定款認証に提出する定款は会社を設立する際の発起人全員の実印が必要ですので、何度も指摘が入るとその度に発起人全員の押印を集める必要があるため、非常に手間です。定款認証は会社設立の上での最初のチェックポイントともいえるため、しっかりと必要書類を準備して臨みましょう。 会社設立の流れ③資本金の払込 定款認証が完了すると、次は資本金の払込に移ります。資本金の払込は、株主や出資者が自己の資金を会社に対して出資することを意味します。株式会社の場合は出資額が取得株式の数に比例し、最も多く出資した人が実質的に経営権を握ります。 副業から会社を設立する場合には自分一人、もしくは家族を発起人として設立するケースが多いため、誰がいくら出資するかを、経営権とのバランスを考慮しながら進めていきましょう。資本金の払込は、会社設立手続きの中でも重要なプロセスで、支払いが完了すると会社設立の2つ目のステップが完了します。 関連記事:会社設立時の「見せ金」はNG!正しい資本金の計上方法を解説 会社設立の流れ④会社の設立登記 定款認証と資本金の払込が完了したら、いよいよ会社の登記に移ります。登記とは、会社が成立したことを法的に裏付け、社会に公表するための重要な手続きです。設立登記をすることで社会的に会社を名乗ることができるようになります。 設立登記の際には以下の書類を作成し、会社設立地を管轄している法務局に提出します。 1、設立登記申請書 会社の名称、本社の所在地、登録免許税の金額、添付する書類のリストなどを記入した書類。法務局のホームページからダウンロード可能です。 2、登録免許税納付用台紙 登録免許税の納付に使用する用紙で、必要な額の収入印紙を貼付して提出します。株式会社では、資本金の0.7%が登録免許税となりますが、15万円未満の場合は一律15万円です。 3、定款の謄本 公証人から認証を受けた定款を提出します。 4、発起人の同意書(発起人決定書、発起人会議事録) 会社の名称、事業目的、本社所在地などを決定したことを示す書類です。 5、代表取締役及び取締役の就任承諾書 代表取締役および取締役がその役職に就任することを承諾する書類。取締役が複数いる場合、それぞれについて必要です。 6、監査役の就任承諾書 監査役がその役職に就任することを承諾する書類。監査役が不要な場合は提出不要です。 7、取締役の印鑑証明書 取締役の印鑑証明書で、有効期限内のもの。取締役が複数いる場合は全員分、取締役会を設置している場合は代表取締役のみ必要です。 8、出資金(資本金)の払込証明書 定款に記載された資本金が指定の銀行口座に振り込まれたことを証明する書類です。 9、印鑑届出書 会社の実印を届け出るための書類。法人登記には必須ではありませんが、通常は登記申請時に提出されます。 登記が完了すると、会社は法的に設立されたものとみなされます。設立登記が完了すると、登記簿謄本が発行され、会社が法人としての地位を獲得します。他にも税務署や役所への会社設立に伴う書類の提出も必要です。これらが済めば会社は法的に成立し、責任や権利を持つことになります。 設立後の維持費や運営も考えよう ここまで記載したように、サラリーマンが副業で会社設立する場合、メリットも数多くある一方でリスクも存在します。個人事業主と会社の違いを理解し、現在働いている会社の就業規則や会社設立後も経営が持続するかなどを考慮して検討する必要があるでしょう。また会社設立のプロセスは複雑なため、会社員として仕事をしながら副業を行い、さらに会社設立の手続きを行うのは大変な手間です。 税理士法人プロゲートでは、宮城県仙台市を中心に、会社設立に関する手続きや助言を行っております。安心して新たなステップに進むために、ぜひお気軽にご相談ください。 関連記事:会社設立は自分でする?専門家に依頼?費用と手続きについて解説