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融資を通しやすい事業計画書の書き方とは?ポイントなどを紹介
これから起業や開業をする方で、銀行や日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受けたいと考えている方は多くいると思います。 融資を受ける際には、事業計画書を作成し、金融機関や投資家に提出しなければなりません。しかし、「事業計画書は何を書いたらいいかわからない」「なぜ事業計画書を作成するのか」と思われている方も多いでしょう。 この記事では、事業計画書の内容や事業計画書を作成する理由、事業計画書に関するよくある質問などを記載します。「質の高い事業計画書を作成したい」と思われる方の参考になればと思いますので、ぜひ最後までお読みください。 事業計画書とはどのようなものか? 事業計画書とは、「どのように事業を運営していくのか」「どのように利益をあげていくのか」などの具体的な行動を示す書類のことです。 金融機関は、融資先から利息をつけて返済してもらうために成長が期待できる企業に融資をする必要があるため、融資先の事業の中身や今後の事業展開などを把握しておきたいと考えます。また、投資家も作成した事業計画書で投資の有無を判断します。 関連記事:起業家必見!日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の必要書類を紹介 事業計画書はなぜ必要か? 事業計画書が必要な理由は大きく2つあります。 ・イメージを具体化し、事業の全体像を明確にするため ・金融機関や投資家にビジネスをアピールするため イメージを具体化し、事業の全体像を明確にするため 事業計画書を作成することで、頭の中で考えている新規事業のイメージを具体的に表現でき、「どうすれば売上を上げられるか」「どうすれば利益が見込めるのか」を再確認できます。 また、事業の優位性や独自性、改善点や新しいアイデアなど今頭の中で考えている事業を客観的に見直して整理できるので、事業計画書は必要と言えるでしょう。 金融機関や投資家にビジネスをアピールするため 事業計画書は新規事業のイメージを具体的にするだけではなく、「自分がどのような事業を行いたいのか」を第三者に伝えられます。 具体的なビジネスプランや実現可能な数字など根拠のある事業計画書を用いることで、事業の将来性や信頼性、返済能力があることを金融機関や投資家にアピールできます。 また、事業計画書があることでビジネスの可能性を分かりやすく伝えられるため、これからビジネスを一緒に始めるビジネスパートナーや従業員から信頼を得やすくなるでしょう。 関連記事:日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の流れをプロセスごとに解説 事業計画書に記載する11の内容 事業計画書を書く内容は次の11個です。 1、創業者のプロフィール 2、創業の動機・目的 3、事業内容やターゲット 4、市場環境 5、自社製品の優位性や販売戦略 6、人員体制 7、販売・仕入先 8、借入の状況 9、事業の収益計画 10、必要な資金 11、資金の返済計画 1,創業者のプロフィール 創業者の経歴や、保有している資格など、アピールポイントをまとめて、事業に関連する経歴を強調して書きましょう。 アピールポイントを記載する際は、「体力に自信がある」「約束事を守る」などの抽象的な表記は避けて「〇〇の国家資格を持っている」「△△で10年間勤務していた」など個人の強みがわかるような経歴を書きましょう。 最近の収入状況を記載すると、融資担当者が自己資金との関連性を見る材料にもなるので必ず記入します。 学歴が高ければ良いというわけではないですが、できるだけ記入することで、始める事業に関連する経験や知識を学んだ学校や留学先があるなら強みになるでしょう。 ただし注意点として、事業に関連しないプロフィールを長々と羅列させても事業計画書そのものを読みづらいものにしてしまうため注意しましょう。 2,創業の動機・目的 創業の動機には、事業を始める目的や理由、商品説明と差別化、ターゲット層や市場などを書きます。 書く際は経営者の経歴と事業がどのように関係しているかを記載すると説得力が増します。 創業者や事業の運営メンバーのプロフィールに目立った部分がなくても、「この事業を通して実現したいこと」「自分にしかできないこと」などがあれば有利になります。 またSNSなどで、すでに顧客を獲得できている場合も、記載しておくと信頼性が増します。 読む相手が融資するか判断するために「どのような事業をしているのか」「事業を通じて社会にどのように貢献するのか」を明確にして、空欄がすべて埋まるように記入しましょう。 3,事業内容やターゲット 事業内容では、「誰にどのような商品を提供するのか」「料金や単価」「商品やサービスの特徴」などを明確かつ端的に記載します。 記載するうえで、自社で提供する商品やサービスは、そのようなユーザーのニーズを満たすものなのか明確にしておきましょう。ターゲットが曖昧で、事業内容が分かりにくいものだと金融機関から返済能力がないと見なされ、融資の審査で落ちてしまう可能性があります。 より強い説得力を持たせるためにも、ユーザーの性別や年齢層やエリアはもちろん、事業内容に対する興味関心や家族構成などまで設定できるといいでしょう。 また、金融機関や投資家は専門性があるわけではないので、どんなに良い技術・知識を事業化しようとしていても説明が複雑すぎると、理解してもらえずに審査に落ちる可能性があります。専門用語を避けて、誰もがわかる言葉に置き換えて、第三者にも分かりやすい言葉に変えて記載するようにしましょう。 4,市場環境 革新的なアイデアが思いついたと思っても他の企業に先を越されてしまっては、売上・利益の振れ幅は期待できません。 市場調査を行い、「商品やサービスが売れる可能性があるか」「これからの将来に利益が失脚するリスクがないか」を調査した結果を書きます。市場調査では、「行おうとしている事業にどれほどの競合他社が存在するのか」「これから競合他社が増える可能性があるのか」「シェア率を独占している企業がないか」を洗い出します。 また、市場調査は今後の予測として商品・サービスがどれほど必要とされるか予想するものであり、予測される流行の終わりの時期や近い将来の伸び代を数値化するものです。 文章で説明するのではなく、国や自治体が行っている調査や調査会社が行っている調査などに独自で調査したデータを付け加えて、市場規模や市場の成長性などを図やグラフを使って記載すると金融機関や投資家もイメージが湧きやすくなるでしょう。 5,自社製品の優位性や販売戦略 自社製品やサービスが同業他社と比べてどのように優れているのかを分析して記載します。 分析にはSWOT分析を用いて行う方法があります。SWOT分析とは、自社の環境を強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)の4つの項目ごとに分析する方法です。SWOT分析を用いることで、自社の優位性や事業の課題、将来的なリスクなどを見つけられ、競争優位性をアピールすることができ説得力が増します。 また、自社の商品やサービスを販売するための手段やコストをまとめた販売戦略の計画も記載しましょう。 事業を行う上で何が必要で必要なコストはどれぐらいかかるのかを正確に分析し、売上予想との損益分岐点を明確にしましょう。 6,人員体制 従業員を3か月以上雇う場合は、従業員の数も記載します。 事業を始めた頃はできるだけ人件費を抑えた方が経費や支出が少なくなり、融資を受けやすくなります。また「どのような組織体制をとるのか」「どれほどの人数の規模で行うのか」「事業に適した人材が揃っているのか」など役割決定や意思決定の流れを示すために、社内や組織の体制も記載しましょう。 商品やサービスが優れたものであっても、新事業の組織体制が良くなければ成功できません。無理のない人員計画をおこないましょう。 7,販売・仕入先 販売先や仕入先が決まっている場合はその旨を記載しましょう。 事業計画書を提出する時点で取引先などが決まっていると、金融機関や投資家へビジネスに対する真剣さをアピールでき、取引先と契約を結んでいる資料などを添付することで事業をより具体的にイメージしてもらえます。 8,借入の状況 事業や個人で借入がある場合は、正しい数字で必ず記入しましょう。 借入がないことに越したことはありませんが、ある場合は返済額も稼がないといけないので、より多くの利益が上がるビジネスプランを作成する必要があります。 日本政策金融公庫は個人信用情報登録機関に照会をかけ、実際に借り入れしている金額を確認することができるので、嘘の情報を記入してしまうと信用を失ってしまいます。 なお、消費者ローンやカードローンなどの金利が高い借金をしている場合は審査上では不利になるので早めに返済しておきましょう。 9,事業の収益計画 事業の収益計画では、年次・月次損益計画書を作成します。 年次・月次損益計画書とは、目標を立てたうえで事業に取り組むと、売上高がどのくらいあり、利益がどのくらい得られるのかを示す計画のことです。 「どれくらいの収入を得られるのか」「経費がどれくらい発生して利益がいくら出るのか」を明確に記載します。 記載する項目は以下の8つです。 売上高 仕入れ値 人件費 家賃 支払利息 その他の経費 経費の合計 利益 また毎月の利益が返済予定額を下回らないようにしましょう。 金融機関や投資家は融資の判断をするにあたり、毎月の返済予定額をきちんと返していける能力があるかどうかを重視するため、毎月の利益が毎月の返済額よりも多い必要があります。 創業してすぐには黒字経営になるのは難しく、起業して半年や1年以内に軌道に乗った後に黒字になるのが理想的です。早期黒字化の見込みがある計画を実現可能な根拠をもとに、立てていきましょう。 10,必要な資金 必要な資金は、「何にいくら必要か」を明確にして記載しましょう。 この項目は、「なぜこの金融機関からこの金額の融資を受ける必要があるのか」という根拠を示す項目なので、審査を受ける上で最も重要な項目となります。 必要な資金は、大きく設備資金と運転資金に分かれています。 設備資金とは、設備・施設などの購入や契約といった設備投資のために一時的に発生する資金のことです。改装費ならば業者からの見積書、賃貸ならば賃貸条件が分かるものなど設備資金に関する書類を提出しましょう。 運転資金とは、企業が事業を維持していくために必要な商品の仕入れや従業員の給与、広告など、事業運営していく中でかかるさまざまな費用をまかなう手元資金のことです。3〜4ヶ月分くらいを目安に記入しますが、事業の収益計画の売上原価と経費に記載する内容と一致する必要があります。 運転資金は、自己資金半分、融資半分位の目安で無理のないバランスになるように記載しましょう。 関連記事:自己資金なしでも創業融資は受けられる?注意点を解説 11,資金の返済計画 返済計画は、どこまで自己資本で行い、どこまで融資に頼るのか、融資で借りた分の金額をどのような計画で返済するのかを記載します。 返済計画を不透明に記していると、金融機関や投資家側は「貸した元本が返って来ないのでは?」「利息を払ってもらえず利益にならないのでは?」と疑ってしまい、今後追加の融資を断られる可能性もあります。 市場調査や販売戦略などを通して、返済計画を全うできるかどうか、もしも厳しい場合は自己資本で返済できるかどうかなどを見るので、明確な数字や文章を用いて返済が現実的に可能であることを証明しましょう。 事業計画書のポイントとは 事業計画書を書く上でのポイントは次の5つです。 ・理解しやすく誰が見てもわかりやすいこと 事業計画書は誰が見ても分かるようなものを作成することが重要です。 自社の魅力や情報をたくさん伝えたいと思うあまり、事業計画書に膨大な情報を盛り込みすぎてしまうことがあります。そうすると、計画書自体が読みやすくても読み終えるまで時間がかかってしまい、何をアピールしたいのかが伝わりにくくなります。 内容が読みやすく、10~15分程度で読み切れるボリューム感にしましょう。 事業計画書に書かれている内容が具体的かつ正確で、要点を抑えてまとめられていると、金融機関や投資家側がスムーズに理解できるので事業への関心が高まります。 ・現実的で実現できる目標を設定する 事業計画書に書く目標は、具体的な数値やデータを用いて、現実的に実現できる目標を設定しましょう。 金融機関の融資担当者は、「融資先の企業がどのような計画で事業を進めるのか」「どうやって利益をあげられるのか」を重視します。例を挙げると、「1年目と2年目で売上300%UP」のようなインパクトのある数字を書くことはできますが、数字を出す際には根拠の説明が必要です。 事業立ち上げの1〜2年間は赤字で黒字になるタイミングがあるのであれば、それは「いつ」で「なに」が影響するのか明確に記載しましょう。数字だけでなく、資料なども添付しておくと説得力が上がります。 経営者の頭の中で思い描いている新規事業のイメージを現実的に可能なレベルにまで落とし込み、数字の根拠を示すことで現実性の高い事業計画書を作成できます。 ・全体的に整合性が取れた状態にする 事業計画書では、ただ事実を並べるだけではなく「この事業に投資をしたらメリットがある」と期待してもらえるような流れを作成しましょう。 整合性とは、基本的に融資を受けてまで始めるビジネスであれば年を重ねるごとに売上・利益が急速に右肩上がりになるような数値が期待されることを指します。 売上や利益の伸びが中途半端であれば販売戦略を練り直し、戦略と収支計画が合致しているか確認した上で提出しましょう。 ・経営理念に力を入れる 経営理念とは、企業が「何のために企業活動をするのか」「社会にどのような恩恵をもたらしたいか」や企業が向かうべき方向性を明確にするための存在意義をまとめた言葉です。 経営理念は抽象的かつ感情的な要素を多く含んでいるので、起業直後の段階で力を入れる人は少ないでしょう。しかし、融資担当者は経営理念も確認していて自社の商品やサービスの強みや損益計画などが記載されていても、経営理念に反することが書かれていれば、審査を通過しない可能性があります。 経営理念は、企業のルールやモットーのようなものであり、経営者の信頼性を推し量る項目にもなります。 融資担当者に熱意を伝えられるように、商品・サービスを通して、社会にどのように貢献したいのかを盛り込みましょう。 ・熱意を伝える 融資審査に通過するには、仕事に対して情熱を持って取り組む姿勢や、コンプライアンスを遵守する誠実な態度を伝えることも重要です。 企業に将来性があっても「事業に対して真摯に向き合っていない」「従業員への教育がずさんである」と判断されると、融資の審査では不利になってしまいます。 経営者の人間性や事業に対する姿勢、経営方針や従業員の教育なども、融資の判断材料となりえるので、融資担当者に熱意を伝えるためにも、テンプレート的な文章・構成ではなく、自身の考えを事業計画書に反映させるようにしましょう。 事業計画書を作成するメリット 事業計画書を作成するメリットは次の4つです。 ・事業の全体の構造を理解できる ・事業の目的を明確にし、改善できる ・競合他社を理解できる ・事業を始めるビジネスパートナーと方向性を確認できる 事業計画書は、売上目標や販売戦略などはもちろん、他社との差別化や市場環境、事業の資金計画なども記載しなければなりません。 そのため、事業の構造や業界の仕組みなどが理解でき、頭の中に合ったビジネスアイデアを実際に実現できるか検証できます。 また、従業員を雇用するときにも事業計画書は役に立ち、事業計画書に記載されているビジネスモデルや今後の展望、目標達成の方法などを従業員に共有することで、事業の方向性を見失わずに同じ目標に向かって進められます。 事業計画書は、自分が考えたビジネスアイデアやプランを現実にする設計図のようなもので、事業計画書を作成せずに事業を立ち上げるのは設計図なしで家を建設するのと同じです。 事業計画書を作成して、事業の実現できる可能性を高めましょう。 事業計画書のよくある質問 事業計画書に関するよくある質問は次の7つです。 事業計画書は必ず必要? 融資の審査は事業計画書のどこを見る? 事業計画書は個人事業主も必要? 事業計画書が必要なタイミングはいつ? 事業計画書は誰からフィードバックをもらうべき? 事業計画書は何年分必要? 複数の事業を1つの事業計画書にまとめても大丈夫? 事業計画書は必ず必要? 事業計画書は必ずしも必要ではありません。 事業計画書は融資や出資を受ける際や事業の内容を見直すとき、起業するときに必要です。 提出義務はありませんが、具体的な行動計画を立てやすくなったり、融資を受ける際に相手にどのように事業を進めていくかを説明しやすくなります。 融資の審査は事業計画書のどこを見る? 融資の審査を受けるために事業計画書を作成するのであれば、簡単に重要な項目をまとめて記載しましょう。 事業計画書を完成させるためには、マーケティングや物流などの専門知識が必要になります。 経営経験があまりない場合は、全てを1人で作成しようとせず、専門知識を持つ従業員を雇ったり、外部委託を利用するなどして全項目の質を高く保てるように工夫しましょう。 事業計画書は個人事業主も必要? 基本的には、個人事業主やフリーランスは事業計画書を作成する必要はありません。 事業計画書とは、将来的にどれぐらいの収益を見込めるかの事業計画を示す物であり、複数の従業員を雇っている組織的な企業の経営者が必要になるのが一般的とされています。 ただし、個人事業主・フリーランスであっても、金融機関から融資を受けようと検討しているのであれば必要になるため注意が必要です。 関連記事:創業融資は個人事業主でも受けられる?おすすめの資金調達と融資の流れを解説 事業計画書が必要なタイミングはいつ? 事業計画書が必要なタイミングは、大きく分けて2つです。 まず、金融機関から融資を受けようと考えているのであれば、融資を受けても返済能力があることを証明するために書類を作成する必要があります。 次に、「新規事業や事業拡大計画の全体像を明確にして、利益が見込めるのか」「どのようなプランが必要なのか」を判断するための材料として使えます。 事業計画書は誰からフィードバックをもらうべき? 事業計画書が完成したら、専門家または同じ業界の人からフィードバックを受けることをおすすめします。 どんなに最後まで書ききったとしても、客観的にみると実際に融資を受けたことがあったり、融資を受けようとしている同業者が見た時に小さなミスから致命的なミスなどを見つけてもらえる可能性があります。 また、事業計画書では専門的な知識が必要なので、各分野に精通している従業員や外部の専門家に事実関係やこれらのことが矛盾していないか目を通してもらうとよいでしょう。 関連記事:融資を受けるなら税理士に相談した方がいい?依頼するメリットを紹介 事業計画書は何年分必要? 金融機関等に提出する事業計画書を作成していると、何年分の計画を立てるべきか悩む経営者の方も多いですが、基本的に決まりはありません。 もしも金融機関側から何年分の計画を立てるか話題に出た場合、情報不足になるのを未然に防ぎたいのであればあらかじめ確認しておいても良いでしょう。 一般的には、返済期間に応じて3〜5年の収支計画を立てます。 複数の事業を1つの事業計画書にまとめても大丈夫? 複数の事業を同時に立ち上げる場合、事業内容が似ていて1つにまとめた方が分かりやすいのであれば、複数に分ける必要はありません。しかし、少しでも事業内容が違うのであれば、計画に必要な売上や原材料の仕入れ値などが混雑してしまい、分かりにくくなってしまいます。 融資の審査のために作成する事業計画であれば、一から説明して第三者が理解できるかどうかに重きを置いて、1つにまとめるべきかを考えましょう。 事業計画書に関してご相談ください 今回の記事では、事業計画書の作成方法や事業計画書がなぜ必要かをまとめました。 事業計画書の質の差によって、融資を受けられるかどうかは変わってきます。特にはじめて会社を設立する際は分からないことが多いでしょうか。その際は、必要に応じて顧問税理士に相談してください。 税理士法人プロゲートでは、宮城県仙台市を中心に法人及び個人事業主様の融資相談や事業計画書の作成サポートをしております。会社設立の支援実績も200社以上ありますので、ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。経験豊富な税理士が、お客様の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。 関連記事:【必見】起業の準備でやること12選!リスト化して紹介 関連記事:日本政策金融公庫から電話がかかってくるのはどんな時?対応の仕方や注意点を解説
合同会社の設立期間は?株式会社との比較や設立の手順も解説
会社を設立したいけど、最短どれくらいで設立できるのか、どんな手続きが必要なのか、本記事で解説していきたいと思います。なかでも、コストがあまりかからず、設立までが早い合同会社についてより詳しく解説していきます。 個人事業主や株式会社との比較もありますので是非、最後までご覧ください。 関連記事:仙台市|会社設立をするなら専門家に依頼するべき?失敗しない方法や創業サポートについて 合同会社とは何? 合同会社とは、出資者が社員であり、経営をしていく(出資者=経営者)形態の会社のことです。会社の負債や損害が発生した場合でも、出資した分だけの責任を負えばよい「有限責任」となっているのが特徴です。 近年、合同会社は増加傾向にあります。 2023年の法人設立件数では、株式会社が前年比8.6%増の10万1,413社、合同会社が同9.6%増の4万655社となり、合同会社は初めて4万社を突破しました。 出典元:東京商工リサーチHP また、大企業の『Apple』や『Amazon』も日本においては合同会社であり、日本企業の『西友』や『日本ケロッグ』や『P&G』も合同会社で、実は身近にも多くの合同会社が存在しているのです。設立のしやすさが、ここまで合同会社が増えているわけとなっているのでしょう。 関連記事:合同会社の設立には、代表社員が2名でも大丈夫? 合同会社の4つのメリットとは 次に合同会社のメリットをわかりやすく紹介していきます。合同会社の主なメリットは下記4つの理由があげられます。 メリット1:設立までが早い 合同会社は株式会社と比較して、費用だけでなく、必要な公的手続きが圧倒的に少ないため、設立までに要する期間が短くて済みます。株式会社の設立が3週間かかると言われているのに対して、合同会社は最短2週間で設立できます。 会社名や事業内容もある程度決まっているのであれば、より早く手続きを進められます。 詳しい期間や流れは次の項目で説明します。 メリット2:設立の費用が安い 合同会社は最小限のコストで作ることが出来る法人です。 新たに会社を作りたくても、設立の費用の高さで諦める方も多いと思います。 実際に、合同会社を設立するのにかかる費用は 登録免許税 6万円 定款作成の印紙代 4万円(電子定款の場合は印紙代不要) となっており、基本的にはこれだけの費用で設立が可能です。 実際には、これに例として名刺代やホームページの作成代、専門家に依頼する場合はその分費用もかかりますので、このような準備資金も含め検討しましょう。 メリット3:柔軟な経営が可能 また、合同会社は、1人で始められる会社なので、株主総会や取締役会を設置して意思決定をしたりせずに、社員だけ、または自分だけで経営の意思決定ができます。また、配当も自由に決められるので、出資比率に関係なく利益を分けることができるのも大きな特徴です。 メリット4:節税効果がある また、合同会社に限った事ではありませんが、法人としての節税メリットも受けられます。経費として認められるものの範囲が広く、個人事業主よりも多くの項目が経費に計上できます。 例えば、生命保険や家族への給料など、個人事業主では経費にできないものも合同会社では経費として計上可能です。このため、大きな節税効果が期待できます。 一般的には個人事業主としての売上が1,000万円を超えて、利益が400万円を超えた時が法人化するメリットができる時期と言われています。ただ、業種にもよるので税理士など専門家に相談してみてください。 合同会社のデメリット|知名度の低さ 一方で、合同会社にはデメリットも存在します。 一番のデメリットはこの組織形態の知名度の低さです。やはり、信用度で言えばまだまだ株式会社の方が圧倒的に大きく、少し不安がられる場合もあります。 ただし、最初に説明した通り、現在、合同会社は増加傾向にあり、大手企業でも合同会社を採用している法人はたくさんありますので、あまり心配せずに前向きに検討してよいかもしれません。 合同会社を最短で設立する流れ ここからは、合同会社の設立までの流れと手続き方法を解説していきましょう。 合同会社の設立にかかる期間は最短2週間! 合同会社の設立までの期間は最短2週間で出来ると言われています。株式会社の設立が3週間かかると言われているため、株式会社と比べると1,2週間早く設立できます。定款の認証作業が不要であり公的なやりとりが少なく、事業の決定スピードも早いため、早く設立できるということです。 いつまでに設立するか具体的な日付や期限などのスケジュールを立て、早めに準備にとりかかることがポイントになります。 設立までの流れ ①事前準備 まず、合同会社設立にあたり、事前に基本となる会社概要を決める必要があります。 会社名、事業の目的、代表者、出資金、資本金などを考えておきましょう。 ひとりで合同会社を設立する場合は、自分の意思のみで進むのですが、複数人となるとこの最初の準備がとても重要になってきます。給与や利益配分についてもしっかり決めておかないと、あとあと問題になりやすいので、しっかり協議して決めましょう。 ②定款の作成 「定款」自体は、会社の決まりをまとめたものであるため、株式会社でも合同会社でも作成しなければならないものです。 記載内容は、商号、目的、本店の所在地、資本金の額、代表者の氏名及び住所などがあります。株式会社の場合は、後で株主と経営者の間でトラブルが起こったときなどのために、定款がいつ・どのような内容で作られたのかを、国から認められた公証人に認証してもらう必要があります。一方で合同会社の場合は、株主という存在がいないため、出資した人が経営を行う仕組みになっており、そういったトラブルが生じにくいため定款の認証手続きは不要となっています。 ③印鑑の作成 合同会社設立時に、代表者個人の実印とは別に、会社実印、銀行印、角印を準備する必要があります。会社実印は、一般的に丸い形状で外側に会社名、内側に主に役職名が彫られています。登記の際、定款と同時に印鑑届書を提出しなければならないので、こちらは必ず準備しておきましょう。通帳作成の際には銀行印、領収書や請求書に使用する角印も後に必要となりますので、合わせて準備しておきましょう。 また、大きさも一辺の長さが1センチから3センチの正方形に収まるものと規定があるので要注意です。 ④資本金の準備 資本金の目安として、初期費用と運転資金6か月分、この2つを合わせた金額に設定することが一般的です。会社の設立直後は、売上がいくらくらいになるのか見込めないため、半年間ほどあまり売上がよくなかったとしても事業を継続できるようにするため、最低でも運転資金6か月分くらいは用意しておく必要があります。資本金は1円から可能ですが、目先のことだけではなく、しっかり将来のことを考えた金額を設定しましょう。事業内容によりますが、融資を受けることなども考えると100万円以上に設定していたほうがよいでしょう。 関連記事:会社設立時の「見せ金」はNG!正しい資本金の計上方法を解説 ⑤出資金の履行 社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません。 会社の通帳は、設立後にしか作成できないため、代表者の通帳に出資金を集める必要があります。登記申請の際に提出する『払込証明書』には出資額がわかるよう、通帳のコピーが必要となるので注意しましょう。出資者が一人の場合は、通帳の残高から出資額以上となる金額を出金し、改めて出資額を入金する必要があります。また複数人の場合は、それぞれの出資額をもらって入金するのではなく、必ず振込という形で代表者の通帳に名前と金額が残るようにしなければなりません。複数人の場合、代表者も同様に振込をする必要があります。 振込がすべて完了したら、「通帳表紙のコピー」「通帳表紙裏面(口座番号等が記載されているページ)」「実際に振り込んだ人と金額がわかる部分の明細」の3つのコピーを用意しておきましょう。 振込完了後、登記は2週間以内に行ってください。 ⑥登記 定款、会社実印、出身金の履行を終えたら、やっと登記の申請ができます。登記の申請は、書面(持参又は郵送)又はオンラインによりすることができます。書面申請の場合には、申請人の代表者又は代理人が登記申請書を作成し、所定の書面を添付の上、合同会社の本店の所在地を管轄する登記所(法務局)に提出する必要があります。自宅の最寄りの法務局で受付は出来ないので注意しましょう。 登記は書類を提出して3日~1週間程で登記が完成します。不備があった場合は、追加の資料の準備や、法務局とのやり取りが増え、さらに1週間程かかるので注意しましょう。 ちなみに、会社の設立日は書類を提出した日となります。 ⑦登録免除税の支払い 合同会社の設立登記の登録免許税額は、資本金の額に0.7%を乗じた金額です。ただし、これによって計算した税額が6万円に満たないときは、申請件数1件につき6万円です。(60,000円または資本金額 × 0.7%:どちらか高い額を納税)。書面で申請する場合には、登録免許税額分の収入印紙を申請書の余白等に貼る必要がありますが、収入印紙は郵便局等で購入することができます。 会社設立した後のやるべき手続き 前項では、会社設立の流れをご紹介しましたが、会社設立が完了してからもやるべき手続きがいくつかあります。それぞれ見ていきましょう。 1、登記簿謄本の取得 合同会社の設立後、法務局で登記簿謄本の取得が出来ます。 このとき請求するのは履歴事項全部証明書になります。登記事項証明書交付申請書に必要事項を記載し、取得することが出来ます。この謄本は、銀行、税務署などでも後ほど使用するので、最低3通は取得しとくと手間が省けます。1通あたり、1,000円の印紙代がかかりますので、現金も用意しておきましょう。ちなみに、登記簿謄本の取得は誰でも取得することが可能です。 2、印鑑証明書の取得 印鑑証明書は法人口座の開設等で必要となりますので、登記簿謄本の取得で法務局に行った場合は、一緒に印鑑証明書も取得しておきましょう。 こちらは、印鑑証明書交付申請書に必要事項を記載し、取得することが出来ます。 1通あたり、500円の印紙代がかかりますので、この分の現金も用意しておきましょう。 印鑑証明書の取得は誰でも取得することが可能です。 3、法人口座作成 合同会社の場合、事業目的を明確にし、資本金を用意することで法人口座を開設することが可能です。法人口座の開設により、事業の健全性を判断しやすくなります。事業における支払いや振込を全て法人口座で行えば、会社の財務状況がより把握しやすくなり、経理業務もスムーズに行えるようになります。先々を見越して資金繰りを考えていくためにも役立ちます。 また、法人口座を持つことで、銀行からの融資を受けることも可能になります。金融機関は、会社の信用性や返済能力により融資をするかどうかを判断しますが、法人口座を保有していることで信頼性が高まります。 法人口座作成時に準備するものは、会社の商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、会社の定款、代表者印、代表者印の印鑑証明書、代表者の本人確認できるものです。銀行によって必要書類は異なってきますので、事前にホームページや窓口で確認しましょう。 また、資料がそろっていても、通帳作成の審査に通るとは限りません。事業目的が明確でない場合や資本金が少なすぎる場合、事業内容が怪しい場合、所在地が空地の場合などは通らない可能性が高いです。 4、法人カードの作成 また、法人口座を開設しておくと、法人名義のクレジットカードを作成することも可能です。法人カードのメリットは、会社の経費を立て替える必要がなくなることです。自分のクレジットカードから会社の経費を支払っていると、どの分が会社の経費か分からくなり、仕訳もとても大変になります。そのためにも、法人カードの作成は、会計処理に費やす手間が減り、とても便利です。 5、税務署への手続き 合同会社設立後、管轄の務署へ提出しなければいけない届出がたくさんあります。 提出書類を下記に分けて説明します。 法人設立届出書 法人設立届出書は設立から2か月で提出しなければなりません。このとき、「定款のコピー」が必要になりますので準備しておきましょう。 また、この手続きには法人番号の記載も必要となります。 国税庁から送られる法人番号通知書を参考に記入をしますので、書類はなくさないように保管しておきましょう。 国税庁HP|内国普通法人等の設立の届出 給与支払い事務所等の開設届 会社が役員や従業員に給与を支払う事業所を開設したことを届け出る書類です。 代表者一人のみの場合でも、役員報酬を支払う場合には提出が必要になります。会社を設立した時点では役員報酬の予定がなくても、将来的に報酬を支払う可能性を考慮して提出しておいた方が良いでしょう。 国税庁|給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出 青色申告の承認申請書 法人税の申告には、青色申告と白色申告があります。法人としては青色申告のほうがメリットが大きいので、ほとんどの会社がこの青色申告を選択しています。 国税庁|青色申告書の承認の申請 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 源泉徴収方式を採用すると、毎月納付の手続きをする必要があります。こちらは非常に手間がかかります。しかし、この申請をすることで10名以下の会社はその手続きを半年に一度で済むようになります。 国税庁|源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請 棚卸資産の評価方法の届出書 棚卸資産とは在庫のことを意味します。棚卸資産は、ものによって原価が異なるため、評価方法の選択が出来ます。この評価方法は決算時に大きく関係してくるので、税務署または税理士に相談して決めることをおすすめします。 国税庁|棚卸資産の評価方法の届出 減価償却資産の償却方法の届出書 建物や自動車などの大きな資産は減価償却資産とされており、一定の計算方法により複数年にわたって償却処理する必要があります。定額法や定率法といったものがありますので、こちらも税務署や専門とする税理士に相談して決めることがおすすめです。 国税庁|減価償却資産の償却方法の届出 6、社会保険の手続き 合同会社設立後、社会保険の加入手続きも必要となってきます。社会保険の手続きとは、健康保険と厚生年金保険のことを指します。社会保険の加入は、代表者一人しか社員がいない場合でも、役員報酬がない場合を除き、加入する必要があります。期限は法人登記の完了後5日以内となっています。未加入のままで放置しておくと、ペナルティを受けることになるので、社会保険の加入手続きは必ず行いましょう。 また、労災保険と雇用保険については、いずれも加入資格者は労働者であるため、労働者ではない代表者は加入することができません。労働者を雇い入れるときには必ず手続を行いましょう。 7、健康保険 健康保険は、病気やケガなどの治療や、出産・死亡時の保障などの費用を負担するための医療保険です。健康保険には国民健康保険と全国協会けんぽ、組合保険の3つがあります。 合同会社も含め、法人を設立した場合は基本的に全国協会けんぽで健康保険に加入します。 8、厚生年金保険 厚生年金保険は、厚生年金保険の適用事務所で働く勤労者を被保険者とした公的年金制度です。健康保険と同様、保険料は加入者本人に加え、事業主も折半で負担しています。こちらの手続きは、管轄の年金事務所とのやり取りになります。 その他手続き|法人ワンストップサービス 法人ワンストップサービス 法人設立ワンストップサービスとは、定款の認証や登記申請の手続きをマイナポータルを利用することでまとめて行えるサービスです。デジタル庁が運営しているサービスで、設立後に税務署やハローワークにて必要な手続きもすべて行えます。法人設立ワンストップサービスを利用することで、各種申請の手間を省けるだけでなく、登記申請処理に通常3日~1週間かかるところ、最短24時間以内に完了することも出来ます。そのため、通常よりもさらに早く会社を設立することが可能です。 デジタル庁|法人ワンストップサービス 株式会社との比較をしてみよう 次に株式会社との違いをみていきましょう。 株式会社とは株式を発行し、その株式を購入してもらうことで資金調達を行い、その資金で事業をする会社のことです。 所有している人と経営している人の役割が切り離された会社形態になっており、これを「所有と経営の分離」といいます。会社経営を行う取締役は、株主による集会である株主総会で選出されます。なお、小規模の会社の場合は、株主と取締役は同一になっていることもあり、経営者が株式を購入し出資することで、株主=経営者となる場合もあります。 株式会社のメリット ①資金調達ができる 合同会社とは違い、手元の資金が少ない場合でも、株式の発行により、資金調達することが出来ます。 株式によって調達した資金は、融資などと違って返済の義務はありません。 また、株式とは、株式会社が出資者である株主に発行する証券のことで、事業を始めるときだけでなく、事業の拡大の際にも株式を発行し、事業に必要な資金を集めることができます。 ②信用度や知名度があがる 株式会社では、株主が経営を監視しているので、決算書の書き換えや違法な証券取引などの不祥事を防ぐことができます。よって他の会社形態よりも信用度が高くなります。 また、株式会社が発行する株式を、証券取引所で自由に売買できるように株式上場をすることも可能です。上場するには、証券取引所へ申請し、証券取引所が定める基準に応じた審査を通過しなくてはなりませんが、株式が上場すると、資金はより集めやすくなり信用度や知名度も上がります。 株式会社のデメリット ①設立に時間や費用がかかる 定款の認証や登録免許税など、合同会社に比べて多くの設立費用がかかります。また、登記の内容も多く、公的機関との手続きにも時間が要します。 ②決算の公告義務がある 会社の状況を明らかにし取引の安全性を保つために、株主総会の承認後には、貸借対照表やその要旨を公告しなければならないという義務があります。一方で、合同会社の場合は必要ありません。 個人事業主との比較|2つを紹介 次に個人事業主との違いをみていきましょう。 個人事業主とは、個人で事業を行う人のことを言います。最近よく耳にするフリーランスと呼ばれる人たちも個人事業主になります。 個人事業主は手続きが簡単 個人事業主の場合は、法人化と比べて難しい手続きは必要ありません。「個人事業の開業届出書」を提出することで個人事業主になることが出来ます。また、クラウド会計ソフトも充実してきたおかげで、確定申告等も以前に比べ簡単になってきています。 個人事業主は信用度では法人に劣る 一方、手続きが簡易な分、信用度が低くあまり大きな仕事を受ける機会がないため、売上が法人よりも少ない傾向があります。また、事業資金と生活費が一体となっており、財務状況が不明瞭なため融資なども受けにくくなっています。 また、法人税とは違い所得税が採用されているため、利益が増えすぎると、場合によっては法人税よりも多くの税金がかかってきます。 合同会社設立にあたっての注意点 最後に、合同会社の設立を検討されている方へ注意すべきポイントを解説します。現在個人事業主として活動されている方や、いきなり法人設立を検討されている方など、さまざまなケースがあるかと思います。ご自身の状況に応じて判断しましょう。 売上が少ない場合 合同会社を設立するメリットを説明してきましたが、実際に法人化すると、設立費用や毎年かかる費用が出てきます。思うように売上が見込めず、結局、個人事業主としてやり直す人も多くいます。ある程度売上が見込める状態になるまでは個人事業主として経験を積むことも検討してみましょう。 短期的な売り上げしか見込めない場合 法人は継続して経営する必要があります。創業当初は順調でも、半年後、翌年、翌々年と、売上が見込めない場合など、短期的な売り上げしか考えていないのであれば、すぐに潰れてしまう可能性があります。会社を設立する場合は、先に数年単位での事業計画を立てましょう。 共同で経営する場合 共同で経営する場合は、意見の違いが生じたり、お金に関することで揉め事が増えていきます。売上の見込みがあるにも関わらず、社員の足並みが揃っていないと会社の存続は難しくなります。また、社員が辞めるとなると、出資金の払い戻しをしたり、資本金にも影響が出てきます。 共同で運営する場合はお互いの信頼関係がとても重要になりますので、設立前にはよく話し合い、ルールを決めるなどして、しっかりと考えて行動しましょう。 手間がかかるのが苦手な場合 合同会社の設立は、株式会社と比べれば簡単ですが、個人事業主と比べると大変なことです。設立時だけではなく、確定申告や決算申告など、さまざまな種類の手続きが増えて対応しなければなりません。 これらを疎かにしてしまうと法人としてのメリットが十分受けられなくなるので、手続きが面倒な方は、個人事業主のほうが向いている場合もあります。また、専門家に依頼することで解決できる場合がありますので、よく検討しましょう。 関連記事:会社設立は税理士に相談すべき?費用や相談するメリットなどを紹介! 短期間での設立には合同会社がおすすめ 本記事で説明した通り、合同会社は短期間で設立でき、費用の負担も少ないというメリットがあり、法人化を検討している方も始めやすい会社形態であります。 自分が行う事業内容や事業計画から逆算してどの会社形態が適しているのか検討して進めることをおすすめします。 税理士法人プロゲートでは、仙台市を中心に会社設立に関してお悩みの方、会社の財務状況など経理に不安がある方へのご相談やご支援も承っておりますのでお気軽にご相談ください!税務のプロとして経営者の皆様をサポートいたします。 関連記事:【必見】起業の準備でやること12選!リスト化して紹介 関連記事:合同会社の代表社員を変更したい!パターンや変更時の手続きと必要書類を解説 関連記事:会社設立は自分でする?専門家に依頼?費用と手続きについて解説
会社設立時の資本金の決め方とは?決め方のポイントや注意点も解説
いざ、会社設立をしようと思っても分からないことが多いと思います。 近年では、資本金が1円~でも会社設立が出来るようになっていますが、実際の資本金額が1円という会社は多くありません。 では、最適な資本金額はいくらなのでしょうか。業種や設立する会社の状況によって異なりますが、目安となる資本金額や、考え方のポイントを解説します。 この記事を読んで、「資本金の重要性を理解した上で間違いのない会社設立をしたい」と思っている方の参考になればと思いますので、ぜひ最後までお読みください。 中小企業の平均額は300~500万円 資本金とは、会社設立または増資によって出資者から払われたお金のことを指し、円滑な会社経営を行う際の元手となる資金のことです。純資産である資本金は、負債とは異なり返済義務がなく、負債利子も発生しません。そのため、資本金は会社の信頼性を判断する一つの指標とされます。 会社法32条では、会社を設立するときには資本金を決める必要があると定められていましたが、2006年5月の会社法改正により、資本金1円からでも株式会社や合同会社の設立が可能になりました。 資本金の目安は、令和3年に総務省・経済産業省が発表した「令和3年経済センサス-活動調査速報集計 企業等に関する集計」によると、調査総数177万7291社のうち資本金で最も多いのは「300万~500万円未満」が3割以上を占めており、次に「1000万~3000万未満」、「500万~1000万未満」と続きます。 初期投資で店舗や設備機器、仕入れなどの費用が多く発生する業種は資本金が多い傾向があります。そのため、業種によって資本金の金額は異なりますが、中小企業の資本金の平均額は300~500万円といえます。 資本金を決める際は、これから開業する業種の資本金がどれくらいなのか、事業計画上どのくらいの資金が必要かを考慮して決めましょう。 関連記事:会社設立時の「見せ金」はNG!正しい資本金の計上方法を解説 なぜ資本金が重要なのか? 会社が初めて取引を行う際には、与信調査が行われる場合があります。 与信調査とは、取引を行う相手企業に対して、支払い能力など金銭的な信用度合いに関する情報を調査することです。「しっかりと商品代金を支払ってくれる」「商品を納めてくれる」といった信用が得られなければ取引をしてもらえません。 信用できるかできないかを判断する一つの基準として、資本金額をチェックします。 また、銀行から融資を受ける際にも、資本金額が重視されます。一般的に、銀行から融資してもらえる額は資本金額と同等から2倍までが相場とされていますが、融資を得て創業直後から一気にビジネスを成長させたいと考えている場合は、それ相応の資本金が必要です。 さらに、銀行の一般的な融資制度を利用する場合にも、売上高や未払い金額などの他にも資本金額がチェックされます。しかし、資本金はあくまでも出資金であり、創業や増資時など資本金にあてる目的での融資は受けられないので注意が必要です。 資本金の多さは、会社の信用と大きく関わります。 特に設立間もない企業は、資本金の額が対外的な会社の信用や事業の規模を表す指標として映るので、資本金をしっかり決めておくことが大切です。 関連記事:中小企業の適切な資金調達の方法とは?流れや注意点について解説 資本金の決め方を4つの点から解説 ここでは、資本金の決め方を順番に4つそれぞれ紹介します。 1、初期投資と半年分の運転資金を計算する 2、自分の業種が特定のもので最低資本金が決められていないか確認する 3、税金との関係を考慮して決める 4、実店舗がある銀行の口座開設または融資が欲しい場合は100万円以上にするか決める 1,初期投資と半年分の運転資金を計算する まずは、初期投資の金額と半年分の運転資金を計算しましょう。 株式会社を設立するには、設立時にかかる費用や事業を行うための初期投資が必要です。また、会社設立後すぐには売上が見込めないことが多いので、運転資金も準備しておきましょう。 会社を設立する際には、登録免許税や定款認証印紙代、謄本の発行手数料などさまざまな初期費用がかかってきます。初期費用に加えて、会社の初期投資+半年分の運転資金の他にも、業種によっては機械の設備や車両なども購入して用意しなければなりません。 また、運転資金には、自分や従業員の給与、事業を行っていくための諸経費などが含まれます。 半年の間、全く売上がないと想定した際に出ていくお金は何があるか、具体的に考えてみましょう。 2,起業する業種の最低資本金額に決まりはないか確認する 次に、自社の業種で最低資本金額が決められていないか確認しましょう。理由としては、自社の業種が許認可が必要な業種だった場合、最低資本金が決まっているからです。 最低資本金が決められている業種では、その資本金額を上回っていないと事業が始められません。 下記の業種は、最低資本金額が決められているものの一部です。 【最低資本金が決められている業種と最低資本金】 業種 最低資本金 有料職業紹介業 500万円以上 一般労働派遣業 2,000万円以上 第1種旅行業 3,000万円以上 第2種旅行業 700万円以上 第3種旅行業 300万円以上 地域限定旅行業 100万円以上 一般建設業 500万円以上 特定建設業 2,000万円以上 貨物利用運送業 300万円以上 3,税金との関係を考慮して決める 資本金は多ければ多いほど良いと思われますが、資本金が多くなると収める税金も増えていきます。 資本金を設定する前に、納税義務の有無や許認可の要件、運転資金などとのバランスを考えながら設定しましょう。 資本金の額から影響を受ける税金として、「消費税」「法人住民税」「法人税」「地方税」「登録免許税」の5つについてどのような影響を受けるのかを解説します。 消費税 資本金を1000万円以下で設立した会社は、原則として設立1期目と2期目の消費税の納税義務が免除されます。 ただし、2期目に関しては、1期目の前半6か月の売上が1,000万円を超え、かつ役員報酬を含む人件費が1000万円を超えた場合は、消費税の課税対象となります。 また、資本金が1000万円以上になると最初から課税事業者となるため、初年度から消費税を納税しなければなりません。 少しでも節税したい場合は、資本金を1000万円未満に設定するようにしましょう。 なお、2023年10月から始まったインボイス制度により、取引先との関係から消費税の免税事業者となれないケースも想定されるので注意が必要です。 法人住民税 法人住民税には、法人税割と均等割の2種類あります。 法人税割は個人住民税の所得割にあたるもので原則として国に納付する法人税額に応じて課税されます。 均等割は赤字であっても資本金や従業員数に応じて課税されます。課税額は資本金などの額によって変わり、道府県民税が2万円から80万円、市町村民税が5万円から300万円です。 また法人住民税の法人税割の税率に関しても、資本金の額や従業員数に応じて異なる税率を適用している地方自治体もあるので、調べておきましょう。 法人税 法人税の税率は、資本金が1億円を超えるかどうかで変わります。資本金1億円以下の法人で所得が800万円を超える場合、所得800万円超の時の税率は23.2%、800万円以下は税率が15%となります。 また資本金が1億円以下であれば中小企業とみなされ、法人税率の一部軽減も認められます。 国税庁|法人税の税率 地方税 地方税は、資本金額によって地方税率が調整される仕組みとなっており、資本金が少ない場合に軽減措置が受けられます。 1000万円以上1億円以下であれば一定の軽減税率が適用されます。 よって、1000万円を境に資本金額の設定と地方税については十分に検討しましょう。 登録免許税 登録免許税は、不動産登記と商業登記の際にかかる税金をいいます。 会社を設立して会社を登録するためにも必要な税金であり、資本金額だけでなく株式会社か合同会社かによって納税する金額が変わります。 具体的な内容は次の通りです。 会社の種類 登録免許税 株式会社 150,000円または資本金額×0.7%のどちらか高い額 合同会社 60,000円または資本金額×0.7%のどちらか高い額 4,融資を検討している場合は最低100万円以上にする 実店舗がある銀行の口座開設をする場合や、融資を検討している場合は、資本金を100万円以上にしておきましょう。 資本金がとても少ない場合、そもそも法人口座の開設ができなかったり融資を受けられなかったりする可能性があります。過去に法人口座を振り込め詐欺などに利用する事例があったため、資本金が少ないと「詐欺をしようとしているのではないか」と思われ、法人口座を開設できないケースがあるのです。 「資本金がいくらあれば確実に口座開設や融資を受けられる」と明言はできませんが、実店舗がある銀行の法人口座を開設したい場合や融資を受けたいと考えている場合は、最低100万円以上は必要と思っておくといいでしょう。 会社設立時|資本金の払込の流れ 会社設立時の資本金の払込みには、次の3つの手続きがあります。 ①銀行口座を用意する まず、個人の銀行口座を用意する必要があります。 会社設立時はまだ法人になっていないため、新しく口座を用意する必要はなく、普段から使用している個人の銀行口座でも可能です。また、発起人が複数人いる場合は発起人の代表の銀行口座を使います。 ②通帳のコピーを作成する 振込の際に注意すべきなのが、通帳のコピーを用意する必要があることです。 通帳の中でコピーすべきなのは、銀行名と支店名、銀行印が判別できる表紙の裏表と振込内容が記載されたページになります。インターネットバンキングなどを通じて資本金を振り込む場合は、振込日や口座名義人、振込金額などが記載されたページを印刷する必要があるので注意しましょう。 ③払込証明書を作成する 次に払込証明書を作成します。 払込証明書とは、資本金の払込があったことを証明する書類となります。払込証明書に必要な項目は次のとおりです。 ・払込証明書に必要な項目 ・払込みの総額 ・払込みがあった株式数 ・1株あたりの払込金額 ・払込みがあった日付 ・会社の所在地 ・会社名 ・代表取締役の名前 払込総額と株式数は定款に記載した内容と同じもの、1株あたりの払込額は総額を株式数で割ったものを使用します。払込証明書には、会社の代表の捺印が必要で、払込証明書の左上と代表取締役の名前の右横の部分に押印しなければなりません。 現物出資を行う場合 次に、現金振り込みではなく、現物出資で資本金を準備する場合について解説します。 現物出資とは、金銭以外の財産を出資する方法で、購入したときの金額ではなく、現時点での市場価値で計上されることになります。不動産であれば専門家に価格調査を依頼することになり、車の場合は中古市場の価格が出資額となります。 また定款に下記の必要事項を記載する必要があります。 現物出資する人の氏名と住所 資産の詳細情報(名称・メーカー名など) 資産の価格 さらに、調査報告書・財産引継書・資本金の額の計上に関する証明書を作成します。 調査報告書は現物出資する資産の価格が適切かどうかを調査した結果をまとめた書類で、財産引継書は資産が個人から会社へ所有が移ったことを表す書類です。 そして資本金の額の計上に関する証明書は、現金以外の現物出資がある場合には、添付が必要となる書類です。 これらを登記申請書に添付し、法務局へ提出します。 資本金についてよくある質問 最後に、これまでの本文でも解説した内容にはなりますが、資本金の決め方についてよくある質問を4つ紹介します。 ・資本金の最低金額は? ・法人用の銀行口座は必要? ・資本金を使うタイミングは? ・会社設立後に資本金を増額したい場合は? 資本金の最低金額は? 新会社法によって、資本金1円から株式会社などを設立できるようになりました。ただし、資本金1円の会社経営はあまり現実的ではありません。 会社を設立した直後は決算書がないので、融資を受ける際には資本金が重要になります。資本金の少ない会社の信用力はないので、このような形で金融機関の融資審査にも不利になります。さらに、資本金額は顧客や取引先からの信用といった面でも影響します。資本金は運転資金も兼ねているため融資も期待できないと、継続的な入金がない限り経営の継続自体が難しくなります。 資本金に返済義務はありません。資本金額が多いほど、余裕を持った会社経営を行えるでしょう。 法人用の銀行口座は必要? 銀行の法人口座は、会社経営において法律上は必ずしも必要ではありません。 経営者の個人口座をそのまま法人用として使え、会社として問題なく事業を行えますが、経営者の個人名義の口座と会社の財産との区別ができなくなり、会社の財務状況とお金の流れの把握が難しくなります。また、顧客や取引先に銀行口座を伝える際、口座名義が法人名でないと、顧客や取引先に「本当に実在する企業なのか」と不信感を持たれる場合もあります。 融資を受ける際や法人名義のクレジットカードを作成する際に金融機関の審査手続きをスムーズに行うためにも、法人用銀行口座があった方が良いでしょう。 資本金を使うタイミングは? 資本金は、使ってはいけないお金と思われがちですが、資本金を使うタイミングや使い道は特に制限されていません。 会社の経費として、必要な時に使っても良いものです。 資本金は会社に関することに利用することはできますが、社長であっても自分の生活などには使用できないので注意が必要です。 会社設立後に資本金を増額したい場合は? 会社を設立した後に資本金を増資するという選択肢もあります。増資とは、資本金額を増やすことです。資金調達方法のひとつとして一般的に広く扱われ、増資の方法として公募増資や株主割当増資、第三者割当増資などがあげられます。 公募増資:新しい株式を発行し、証券市場を通じて一般の投資家から出資を募る方法。 株主割当増資:既存の株主に、出資金と引き換えに新たな株式を取得できる権利を与える方法。 第三者割当増資:親会社など、特定の第三者に対して新規株式を発行する方法。 資本金を増資するメリットとしては、資金調達ができたり会社の信用度が上がる、会社の支援者が増えることがあげられます。 一方で、資本金を増資するデメリットとして、増資をしすぎると、発行済み株式数が増加するので、1株あたりの利益が下がってしまう点が挙げられます。 会社設立時の資本金額は自由に決められますが、あまりにも少なすぎる場合は、経営の継続に支障がありますので、慎重に決めましょう。 ただし、増資をするには株主総会の決議や法務局への登記申請などの手続きが必要になるうえ、増資額の0.7%の登録免許税がかかります。 特に中小企業は、許認可の関係で資本金を増やさなければならない場合を除き、資本金を増やす必要性はありません。「資本金が足りなくなったら増資すればいい」と安易に考えるのではなく、会社設立の段階から慎重に資本金の金額を設定することが大切です。 プロゲートは200社以上をご支援 今回の記事では、会社設立の資本金の決め方をまとめました。 自身が起業する業種や状況によって必要な額は変わります。特にはじめての会社設立では分からないことが多いでしょうか。その際は、必要に応じて顧問税理士に相談してください。 税理士法人プロゲートでは、宮城県仙台市を中心に法人及び個人事業主様の会計業務をサポートしております。会社設立の支援実績も200社以上ありますので、ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。経験豊富な税理士が、お客様の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。 関連記事:会社設立は税理士に相談すべき?費用や相談するメリットなどを紹介! 関連記事:持株比率とは?比率ごとの株主権利と創業時に注意するポイント 関連記事:会社設立は自分でする?専門家に依頼?費用と手続きについて解説 関連記事:【会社設立】定款の事業目的の書き方を一覧で紹介!ポイントや注意点を解説 関連記事:合同会社の設立期間は最短でどのくらい?株式会社の場合との比較や設立までの手順も解説
中小企業の適切な資金調達の方法とは?流れや注意点について解説
企業にとって、資金調達は事業を円滑に進めるためにも重要なファクターです。しかし、融資や投資など、方法が複数あるため簡単には選択できません。 「資金調達にはどのような種類があるのか」 「中小企業はどうやって資金調達をおこなっているのか」 など、気になる経営者の方も多いのではないでしょうか。本記事では中小企業の資金調達の現状や、方法、流れなどについて詳しく解説します。ぜひ、最後までご覧ください。 中小企業の資金調達の現状 企業の設立や運営をしていく上で、活動資金というのは必ず必要です。ただ、現状として中小企業は大企業と比べると資金調達が難しいというのも事実です。理由としては、以下のような内容が挙げられます。 ・経営の基盤が整っていない ・担保がない 経営の基盤が整っていない 中小企業では、大企業と比べると、組織の規模が小さいことや、運営していくための体制が整っていないという傾向にあります。そのような状態の場合、ちょっとしたアクシデントやトラブルから事業が運営できなくなる可能性も高く、資金調達を行うことがリスクだと捉えられることで、資金調達を受けるのが難しいです。実際に2019年からのコロナウイルスによって、多くの中小企業が想定外のアクシデントに対応できず、倒産しています。 このように、想定していないアクシデントやトラブルに直面した時に、対応ができる体制が整っているかどうかは、金融機関や投資家など、資金調達をする側としては大きなポイントの一つとなります。 担保がない 事業の実績が悪い時や、アクシデントやトラブルがあった際でも、不動産などの担保がある場合は資金調達を受けやすくなります。しかし、中小企業は大企業と比較した時に、保有している不動産などの資産が少なく、担保できるものがないことから、資金調達を受けるハードルが高くなります。 他にも中小企業には、赤字経営の企業も多いことから、中小企業は資金調達が難しいと言われています。 資金調達の方法7選を紹介! 実際に資金調達をする際には、色々な方法があります。本記事では、その中でも、一般的に利用されている資金調達の方法についていくつか解説します。 日本政策金融公庫 創業間もない中小企業におすすめしたいのは、日本政策金融公庫の創業融資です。 日本政策金融公庫とは、一般の金融機関が行う金融を補完することがメインですが、他にも中小企業や個人事業主を支えることを目的としている機関です。 大きな特徴として、金融機関より融資を受けやすいことや、金利が低いことがあります。対象としては、新たに事業を始める企業や事業開始後おおむね7年以内の企業、事業の再建を図る企業など、様々な企業を対象としています。 一般貸付の場合、融資限度額は4,800万円となっており、金利は無担保の場合2〜3%、有担保の場合1〜2%と低金利での融資を受けることができる可能性があります。 参考:日本政策金融公庫|主要利率一覧表 日本政策金融公庫の一番のメリットとして、民間金融機関では難しい長期的な資金が調達できることが挙げられます。これは制度により前後はありますが、最長で20年の資金調達をすることが可能です。他にも、中長期的な視点で中立な立場から経営課題の解決に役立つ情報提供を受けられるのも大きなメリットとして挙げられます。 ただし、融資の詳しい条件や内容については、その時の事業の状況や内容によっても大きく異なりますので、資金調達が必要であれば、まずは相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事:起業家必見!日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の必要書類を紹介 制度融資 制度融資とは、中小企業や個人事業主が事業に必要な資金を円滑に調達するために、地方自治体や金融機関、信用保証組合が連携して提供する融資のことです。 大きな特徴として、企業の将来性を重視した審査が行われることから、実績が少ない企業や、起業してからの期間が短い企業でも、比較的融資を受けやすいということが挙げられます。理由としては、返済が滞った時に、信用保証協会が保証してくれるため、金融機関側としても融資しやすい体制が整っているためです。また、これらのことから連帯保証人が不要のケースも多くあります。 また、日本政策金融公庫と同じく、長期的に低金利で融資を受けられることも大きな特徴の一つとして挙げられます。対象としては、自治体によって融資を受ける理由や条件などが異なるため各自治体の条件などの確認が必要になります。 例えば、宮城県では新規開業で3,500万円で最長10年の運転資金の制度融資があります。 山形県では、融資限度額は5,000万円で最長20年の制度融資があります。 制度融資は、中小企業にとって利用しやすい資金調達の方法ですが、手続きに時間がかかったり、各自治体によって制度の内容が異なりますので、融資を受ける時にはしっかり確認をした上で申し込むようにしましょう。 銀行融資 銀行融資は、一般的に企業や個人が銀行から融資を受けることです。日本政策金融機関や制度融資と比べると、金利が少し高くなることもありますが、高額の融資を受けられることから資金調達の方法としてはよく挙げられます。 銀行融資の大きな特徴として、経営に介入されないということや、取引実績を作ることで融資が受けやすくなるということが挙げられます。返済をきちんとしていれば、基本的に経営に介入される心配がなく、余計なストレスを受けずに済みます。また、銀行側としては純資産や経常利益の数字を重視しますので、プラスになっていることで次の融資が受けやすくなる可能性もあるのです。 ただし、銀行融資を受ける場合には、事業計画書や確定申告書などを提出し、事業の詳細を細かくチェックされるため、審査自体は厳しく融資を受けられないケースも多くあります。例えば、返済能力や資金用途に対しての信用性が低いことや、担保が乏しいこと、現在の収入や資産の状況が悪いことなどが挙げられます。 また、融資を受けるまでに数ヶ月程度の期間が必要になりますので、計画的な準備が必要です。 銀行融資をご検討される際には、しっかりと事業計画書を作成したり、融資を受けたいタイミングを考えるなどの事前準備をするようにしてください。 関連記事:銀行から創業融資を受けられる?創業融資が可能な金融機関を紹介 ビジネスローン ビジネスローンとは、法人や個人事業主に融資をすることを目的としたローンのことです。金融機関だけでなく、消費者金融やクレジットカード会社など様々な企業で取り扱っています。 審査がやさしいことや、入金までの期間が短いことが大きな特徴として挙げられます。審査の基準としては機関によって異なりますが、一般的には「2年以上の実績がある」または「2期分の決算書がある」と考えられています。しかし、ほとんどの場合、審査基準を公開していないため、上記の基準を満たさなければビジネスローンを組めないというわけでもありません。 入金までの期間として、最短で即日入金されるというケースも多く、事業資金の融資をすぐに受けたいという企業にとってはとても魅力的なローンです。 しかし、注意しておかなければならない点もいくつかあります。 それは、受けられる融資額が少額なこと、金利が他の資金調達の方法と比べ高いことです。ビジネスローンの融資限度額としての目安は数十万円〜1,000万円程度です。また、金利については幅広く、低いところであれば1〜5%程度ですが、基本的には10〜18%と高めに設定されています。 ビジネスローンでは、素早く融資を受けることができる反面、金利が高いことや少額の融資になるケースも多いため、現在の状況や希望融資額などをしっかりと把握した上でご検討することが重要です。 ファクタリング ファクタリングとは、企業が保有している売掛金(売掛債権)など未回収の債権を売却することです。ファクタリング会社に手数料を支払って未回収の債権を売却し、現金化できます。 ファクタリングは、これまでに解説したような融資を受けるというものではないため、返済の必要性がないことが大きな特徴です。また、ファクタリングを利用する企業の実績や、財務状況よりも売掛先の企業の信用性が高いことが重要視されることも特徴の一つです。 ただし、ファクタリングを利用する場合、手数料がかかります。手数料については、ファクタリング会社によっても異なりますが、一般的には2〜15%です。 担保が不要になることや短時間で現金化しやすいこと、融資ではないため返済が不要なことなど、企業にとって利用しやすいのが特徴です。しかし、本来受け取ることができる売掛債権から手数料を引かかれてしまうことや、利用するファクタリング会社によっては高額な手数料が発生する場合もありますので、日本政策金融公庫や制度融資などの融資を受けることができない時や、すぐに資金が必要な時に検討されるのが良いでしょう。 クラウドファンディング クラウドファンディングとは、企業経営の趣旨や考え方に賛同してくれる不特定多数の人からインターネットなどを通じて、資金を集めることです。「Crowd(群衆)」と「Funding(資金調達)」を組み合わせた造語です。 クラウドファンディングには大きく分けて3つのパターンが存在しており、「購入型」「寄付型」「融資型」が存在します。 購入型クラウドファンディングは、事業やプロジェクトに対して賛同する支援者がお金を支援し、支援者は返礼品を受け取るというものです。返礼品の中には、まだ世の中に普及していない製品や、限定の製品がある場合も多いため、支援者は十分なリターンを受けることができます。 寄付型クラウドファンディングは、購入型クラウドファンディング同様、事業やプロジェクトに対して賛同する支援者がお金を支援します。ただし、返礼品がなくお礼としての手紙やはがきを受け取ることが多いです。返礼品がない代わりに支援金額によっては、寄付金控除が受けられる可能性があります。 融資型クラウドファンディングは、事業に対して資産運用を考えている個人投資家から資金を集め、企業に融資するというものです。言葉の通り、融資をすることになるので利息が発生し、支援者はそれを受け取ることができます。 このように、クラウドファンディングの中にも色々な方法があるため、事業内容や事業計画に適切な方法を選択することが重要になるでしょう。 自己資金 自己資金とは、言葉の通り企業が保有している資金のことです。預金や、有価証券などが含まれます。使途が問われず自由に使うことができ、利息や手数料なども発生しないため、最も理想的な資金調達の手段です。 自己資金を多く準備しておくことで、有事の際にスムーズな対応ができることや、自己資金の金額によって融資を受けられる可能性も高まりますので、なるべく多くの自己資金を準備しておくと良いでしょう。 また、自己資金とは異なりますが、資産の売却などによって資金調達をする方法もあります。不良資産や遊休資産がある場合、それらを売却することで一時的な資金繰りの改善ができたり、コストの軽減につながることもあります。ただし、希望の金額での売却ができない可能性や、売却までに時間がかかる場合もありますので注意が必要です。 自己資金や資産の売却についても事業の内容や状況をもとに、しっかりと検討してください。 関連記事:自己資金なしでも創業融資は受けられる?注意点を解説 資金調達の流れを理解しよう 資金調達をするにも、手続きや準備が必要になる場合がほとんどです。本記事では、中小企業で最も利用されている融資の流れについて解説します。 融資での資金調達をする時には、一般的には以下のような流れです。また、ここでの融資には日本政策金融公庫、制度融資、銀行融資が含まれます。 ①相談、申し込み まずは、融資を受けたい機関(日本政策金融公庫や銀行など)の窓口にて、融資の相談を行います。相談の際には、事業計画書や決算書をもとに、具体的な融資についての内容を相談します。相談後、融資を申し込むということであれば、申請書の提出などを行います。申請書には、融資の目的や用途、返済計画、担保についてなどの情報が必要です。また、機関によっては、事業計画書や財務諸表などの提出が必要な場合があります。 ②審査 提出した申請書を元に融資先の機関が審査します。審査の基準は企業の信用性や返済能力、担保の有無など機関によって様々です。融資先の機関によって異なりますが、審査の結果がでるまでに、2〜4週間程度かかります。審査が通れば、借用証書などが送られてきます。また、融資先の機関によっては、面談などが実施される場合もあります。 ③契約締結 融資条件などが合意されると、実際に融資の契約を締結します。その際には必要書類なども準備をしたうえで契約を進めます。契約書には、融資の詳しい条件や、融資金額、返済スケジュールなどが明記されています。 ④資金の受け取り 契約が問題なく締結されると、融資先の機関から企業の指定口座に資金の入金が行われます。最短で融資先に契約書が届いてから3営業日程度です。ただし、契約をするために必要書類や入金の準備などある程度の時間が必要ですので、1週間程度は見ておくべきです。 関連記事:日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の流れをプロセスごとに解説 資金調達時の注意点とは? ここまでは、さまざまな資金調達の方法や特徴について解説しました。では、実際に利用する際にはどのような注意点があるのでしょうか。 下記に資金調達時の注意点をまとめましたので見ていきましょう。 事業の許認可を受ける 事業内容によっては、事業の許認可を受ける必要があります。これは、事業を行う上で法的な義務を果たすために必要な手続きです。そのため、事業の許認可を受けずに申し込みをした場合、融資先の審査時に問題があると判断されてしまい、融資を受けられない場合があります。許認可が受けられるタイミングや融資の申し込みをするタイミングなどをしっかり考えておきましょう。 また、機関によっては、融資を受け始めた後から許認可を取得することが可能な場合もあります。ですが、融資を受ける前に許認可を取得しておくことで、融資先からの信用につながる場合や、必要な手続きに追われるリスクの回避につながることもありますので、可能であれば早めに許認可を取得しておきましょう。 中小機構|許認可が必要な業種 補助金を利用する前に資金を用意する 事業を行う上で、補助金を利用するというのも一つの手段ではあります。補助金の場合、返済が不要なことや審査を通った上で受給できるため、社会的な信用があがることなど、メリットの多い手段です。ただし、補助金の場合、先に必要な資金は企業で支払わなければなりません。そのため、事業で支払う費用がなければ補助金の対象から外れ、受給できません。 つまり、まずは前述したような資金調達を行ってから補助金を活用しなければなりません。 現在の状況に合った手段を選択する 資金調達の方法はさまざまあり、それに伴いメリットやデメリットも考えられます。そのため、現在の事業の状況にあった資金調達の方法を選択し、利用することが何より重要です。 例えば、事業が立ち上がったばかりであれば、日本政策金融公庫の創業融資がお勧めです。銀行融資などを選択する場合、実績や担保が少ないことから、審査が通りづらく融資を受けられない可能性もあります。しかし、日本政策金融公庫の創業融資であれば、中小企業や個人事業主の資金調達の支援をメインに行っているため、比較的審査が通りやすくなっています。また、創業融資は無担保で申し込めるものもありますので、事業を立ち上げたばかりであれば、とても魅力的な方法です。 自社の状況をきちんと把握した上で、適切な資金調達の方法を選びましょう。 最適な資金調達を選択しよう 本記事では、経営者の方に向け、中小企業にとっての資金調達の方法や流れ、注意点について紹介しました。 事業を始める時、運転資金の確保など、資金調達はほとんどの企業が直面する課題です。その際に資金調達の方法やタイミングを間違えると事業に失敗する可能性も出てきます。特に中小企業や個人事業主であれば、資金調達の難易度が上がるため、顧問税理士など信頼できる専門家に相談しながら検討すると良いでしょう。 税理士法人プロゲートでは、資金調達のプロとして創業融資を中心に200件以上の支援実績がございます。また、当社は着手金なしの完全成功報酬です。資金調達に不安を感じている方や何から始めてよいのか分からない方など、お気軽にご相談ください。下記、お問い合わせフォームよりお待ちしております。 関連記事:融資を受けるなら税理士に相談した方がいい?依頼するメリットを紹介
勘定科目の雑費とは?経費にできる金額や注意点などを解説!
勘定科目のひとつである「雑費」とは、ほかの勘定科目にどれも該当しない経費のことを言います。はっきりとした定義のない「雑費」ですが、「とりあえず雑費として計上しておこう」という判断は非常に危険なので注意しましょう。 自分で記帳業務を行っている経営者の方は、なんとなく「雑費」に仕訳をしている方は意外に多いように思います。 本記事では、会計業務を自分で行っている経営者の方に向け、勘定科目の「雑費」について詳しく解説していきます。 具体例なども交えて記帳の方法を紹介していきますので、会計や経理業務、確定申告を行う方は是非参考にしてみてください。会計ソフトを利用されている方は、領収証などを自動で読み取って勘定科目を推測してくれますが、これも100%正確というわけではないので、知識として身につけておきましょう。 雑費=どの科目の対象ではない勘定科目 雑費とは、損益計算書の販売費および一般管理費(以下、販管費)に含まれている費用科目のひとつです。 一言に、販管費と言っても様々な科目が存在しますが、なかでも「雑費」は、「どの科目の対象ではない勘定科目」のことを言います。 他の費用と比較して少ない支出で、臨時的・一時的に発生し、わざわざ勘定科目として別途設定するまでもない場合に「雑費」として計上されることがあります。 雑費に当てはまる経費とは? 実際に「雑費」として計上される場合によく見かける項目は、以下のような内容が挙げられます。 ・キャンセル料等の手数料 ・一時的な機材等のレンタル費用 ・ごみの処分にかかった費用 ・事業所、オフィスなどの引っ越しにかかった費用 ・振込手数料 ・クレジットカードの年会費 ・掃除やクリーニング等の手数料 ・サービスの解約違約金(但し、少額に限る)など 上記のように、経営上の重要度や優先度が低く、少額で一時的な支出であれば、「雑費」として計上することができます。また、中には「雑費」以外の勘定科目で仕訳できる費用も存在するので、必要経費を何の目的で使用したのかをはっきりとさせるために適切な勘定科目を設定するようにしましょう。 これといった決まりがないので分かりにくいかもしれませんが、雑費以外の勘定科目で仕訳できる内容であればそちらで仕訳を行い、どれにも該当しないということであれば雑費で仕訳するようにすると良いかと思います。 「消耗品費」との違いは? また、雑費とよく似た勘定科目として「消耗品費」が挙げられます。では、消耗品費とはどのような勘定科目なのでしょうか。 消耗品費=日用品など消耗する物品を購入した場合の勘定科目 消耗品費とは、日常の業務や事業を行っていく場合に使用する物品を購入した際に計上する勘定科目のことを言います。 例えば、コピー用紙や文房具、切手など、使用することで消耗・消費してくような物品を購入した場合の費用は、「消耗品費」として計上されます。 具体的な条件として以下のどちらかに該当すれば、「消耗品費」として計上することが可能となります。 購入金額が10万円未満である 使用可能期間が1年未満である 国税庁|「帳簿の記帳のしかた」 一つ目の「購入金額が10万円未満」という条件は分かりやすい基準ですが、「使用可能期間が1年未満」という基準は判断が難しく感じる方もいるでしょう。例えば、仕事に使う洋服だと上記の条件を満たす場合もあるかもしれませんが、そもそも経費計上できるかどうか。という判断も必要なため、個別の内容については税理士など専門家に相談するようにしましょう。 「雑費」と「消耗品費」の使い分けはどのようにするのか? 「雑費」と「消耗品費」は、具体的な定義のない勘定科目です。事業主や経理担当者の判断で比較的自由に経費計上が可能である反面、「雑費」と「消耗品費」の線引きの判断に迷う方も少なくないでしょう。 「雑費」は、臨時的・一時的に発生した費用のうち、ほかの勘定科目にも該当がないものに適用されます。消耗品費との明確な違いは、以下が挙げられます。 使用することによって消耗してくものかどうか 頻繁に発生するのか、それとも臨時的に発生するのか 物なのかサービスなのか 以上のポイントをふまえて「雑費」と「消耗品費」を使い分けるようにしましょう。 「雑損失」との違いは? 「消耗品費」と同じように、「雑費」と似ている勘定科目に「雑損失」というものがあります。「雑損失」は、事業の売上とは直接関係のない「営業外費用」に区分される経費の中のでも、ごく少額のために勘定科目を設定するほど重要性がなく、発生頻度もほとんどないといえる支出に対して使われる勘定科目のことです。 「雑費」と「雑損失」を区別するポイントは、本来の事業の売り上げに関わる支出かどうかという点です。 ここで紹介した「雑損失」も日々の仕訳業務ではほとんど使わない項目なので「雑費」との違いを理解するようにしましょう。 「交際費」との違いは? 「雑費」と明確に線引きしておくべき勘定科目なのが「交際費」です。「交際費」とは、取引先との関係性を維持するためや、よりよい経営を実現するための交渉をする際に発生した経費のことを言います。 例えば、取引先との交渉の際に食事を伴った場合の飲食代は「交際費」として仕訳します。またその際、取引先へ物品の贈与をした場合にかかった代金は金額によってですが、「雑費」として仕訳される場合もあります。 雑費にできるのはいくらまで? 「雑費」として計上できる金額の上限ですが、特に定められていません。事業を行う上で必要な経費はいくら使っても問題はありません。しかし、「雑費」は実際にどのようなものに支払った費用なのか把握しづらい勘定科目です。決算書は、事業の状況を正確に判断するためのものなので、雑費が多すぎる決算書は「事業の状況がよく分からない企業」として判断され、税務調査を実施される恐れがあります。税務調査には実地調査に1~2日間かかるため、その間の事業がストップしてしまい売り上げにも影響を及ぼす可能性があります。 また、実地調査後も税務署が必要に応じて書類を持ち帰り、税務署内で引き続き調査を進められるので1~2か月ほどの調査対応をしなくてはなりません。 調査の結果、申告内容に誤りがあった場合、「不足分の税金+加算税+延滞税」を徴収されるので、事業活動に支障が出ること以外に追加納税という支出まで生じてしまいます。 では、「雑費」として計上して問題ない金額はいくらぐらいなのでしょうか?望むなら限りなく「0円」に近い方がいいのですが、一般的には、かかった経費の5%~10%程度が目安かと思います。 雑費が多くなってしまった場合 まずは「雑費」が多くなりすぎないような工夫をすることですが、どうしても多くなりそうなときは、新しく適切な勘定科目として仕訳しましょう。また、内訳をしっかりと把握できるよう、摘要欄に「何にかかった費用」なのかを記載しておくことも重要です。 雑費として計上するときの注意点 「雑費」として用いる場合、ほかのどの勘定科目にも当てはまらない費用を仕訳けするときです。勘定科目に迷ってしまったときに「わからないからとりあえず雑費にしておこう」と安易に計上してしまっている方も多いかと思いますが、それは得策とは言えません。「雑費」を計上する際は注意しなければならないことがいくつかあるので以下でご紹介します。 ①他の勘定科目として計上できないか検討する 【雑費に当てはまる経費とは?】という部分でご紹介した、「雑費」によく使われている項目は、実は他の勘定科目として設定することが可能です。では、実際にどのような勘定科目で計上できるのかを一覧で解説していきますので、雑費が多くなってしまった場合は参考にしてみてください。 キャンセル料などの手数料 会議室を利用するために予約を取っていたが、どうしても都合が悪くなり急遽日程を変更しなければならなくなった際、キャンセル料が発生してしまいます。その時に発生してしまったキャンセル料は、「支払手数料」として処理することが可能です。 一時的な機材などのレンタル費用 事業運営の際に必要な機器や機材などの一時的なレンタル費用は、「賃借料」という勘定科目で仕訳することが可能です。会議などで会議室やレンタルオフィスを利用し発生した費用については、「会議費」として仕訳することが可能です。 ごみの処分にかかった費用 事業を進める際に発生したごみの処分にかかる費用は、「雑費」のほか「支払手数料」や「設備維持費」と言った勘定科目を設定できます。設備のメンテナンスの際に不用品を処分した際は「設備維持費」、自治体が発行するごみ処理券を購入した時は「支払手数料」と言うように計上することができます。 事業所、オフィスなどの引っ越しにかかった費用 事務所やオフィスを移転する際に発生する費用は「荷造運賃」でも処理が可能です。また、従業員が転勤を伴う引っ越し費用を会社で負担する場合、「福利厚生費」で処理をすることが可能です。 振込手数料 銀行での振り込みをした際に発生する振込手数料や代引き手数料は「雑費」以外にも勘定科目の「支払手数料」という項目で仕訳することができます。そのほかに、税理士などの報酬費用も「支払手数料」として処理をすることができます。 クレジットカードの年会費 法人用のクレジットカードの年会費も「支払手数料」や「諸会費」として処理することができます。クレジットカードの年会費以外にも、商工会議所や自治会、各業界の組合など、業務に関連する団体への会費も「諸会費」で仕訳することが可能です。 ②摘要欄に詳細を記載し、わかりやすくする 仕訳の際、帳簿の摘要欄に何のための費用として支出があったのかの詳細を記載することで、帳簿を分かりやすい状態にしておきましょう。摘要欄とは、伝票や各種帳簿にあるメモ欄のような役割となる部分です。 ボールペンを購入した場合、「文房具代として」だけ記載するのではなく、購入店舗や本数、購入するにあたっての目的など具体的に記載することで、ほかに購入したものとの区別がつきやすいというメリットがあります。 ③消費税区分をひとくくりにしない 「雑費」として支出の計上をする場合、消費税区分を間違えることの無いように注意することが重要です。取引には、消費税がかかる「課税取引」、消費税のかからない、または免除される「不課税取引「非課税取引」「免税取引」の3つがあります。「雑費」で計上するほとんどは「課税取引」に分類されますが、「不課税取引」や「非課税取引」に分類されるものも存在しているので注意しましょう。 「非課税取引」の例は、クレジットカードの分割払い時に発生する金利手数料や決済手数料などが挙げられます。 ④固定資産は雑費として計上ができない 固定資産は「雑費」として計上することができません。固定資産に当てはまる条件は以下の通りです。 1つあたりの購入金額が10万円以上である 使用可能期間が1年以上である 長期にわたり事業に使うものを固定資産と言います。一時的に発生した費用や、年会費などの雑費とは性質が全く異なる勘定科目となります。 固定資産の勘定科目は「減価償却費」として仕訳することができます。個人事業主や中小企業であれば、2026年3月31日までに取得の30万円未満の減価償却資産は、1事業年あたり300万円までは全額を経費計上が可能です。計上可能な金額に限度額が設けられているため、注意しておきましょう。 雑費の仕訳例をケースごとに紹介 「雑費」の仕訳をするうえで、実際の具体例を紹介したいと思います。以下の例を仕訳する際の参考にしてみましょう。 ボールペンを100本購入した場合 取引先への粗品としてボールペンを100本購入し10,000円を支払った場合、本来文房具は「消耗品費」として仕訳されますが、今回のケースだと「雑費」として処理します。 借方 貸方 雑費 10,000円 現金 10,000円 摘要:粗品用ボールペン代(〇〇文房具店) 事務所の移転で引っ越しをした場合 事務所やオフィスを移転する際、引っ越しで発生する費用は、「雑費」として仕訳されます。 借方 貸方 雑費 500,000円 現金 500,000円 摘要:引っ越し費用(〇〇引っ越しセンター) 機材のレンタル費用をクレジットカードで支払った場合 一時的な機材のレンタル費用を、今回は「雑費」として仕訳します。 クレジットカードで支払いをした場合の仕訳ですが、「決済時」と「引き落とし時」の2回に分けて記載する必要があります。決済時は「未払金」、引き落とし時は「普通預金」と記載しましょう。 [決済時] 借方 貸方 雑費 30,000円 未払金 30,000円 摘要:機材レンタル代(〇〇商会)、クレジットカード決済 [引き落とし時] 借方 貸方 雑費 30,000円 普通預金 30,000円 摘要:機材レンタル代(〇〇商会)、クレジットカード引き落とし 経理・記帳代行はお任せください 本記事で紹介した「雑費」のメリットは、どこにも分類しない費用を計上する上で便利な勘定科目だということです。一方で、雑費が多くなりすぎると何に使用したかわからなくなったり、税務調査の対象になってしまう可能性があったりとデメリットも存在します。雑費の詳細を正確に記載し、帳簿の内容をしっかりと把握しておくことが重要です。 当社では経理・記帳代行も行っております。中小企業や個人事業主の方で、簿記や会計作業にお困りの方はお気軽にご相談ください。税の専門家として決算対策はもちろん、税務全般にわたりお客様に合った適切なアドバイスをいたします。 関連記事:青色申告の個人事業主がパソコンを経費計上する場合の勘定科目や仕訳例を解説 関連記事:経費はレシートでもいい?領収書との違いや活用するメリットなどを解説 関連記事:経費計上のタイミングはいつがベスト?考え方を解説