- 会計関連
黒字倒産の真実!利益とキャッシュがズレるわけとは?
前回、黒字倒産の理由として利益とキャッシュのズレについてお伝えさせていただきました。今回も続きとして解説していきます。

利益とキャッシュがズレる理由とは
減価償却
減価償却も利益とキャッシュのズレに繋がります。
例えば500万円の社用車を一括で購入した場合、5年間で減価償却していくと仮定すると会計上は最初の年に固定資産として500万円が車両運搬具として資産に計上されます。使用する期間は5年のため、減価償却費が5年間に渡って100万円ずつ経費として計上されます。
一方キャッシュの流れを考えてみると、購入時に一括で500万円支払うため支出は最初の年に500万円出ていきますが、費用は1年分の減価償却費100万円しかありません。そうすると利益としては減価償却費という費用の−100万円なのですが、キャッシュは500万円出ているので、400万円のズレが生じます。2年目以降はキャッシュの支出はありませんが、減価償却費が100万円生じるので、利益は−100万円ですがキャッシュは±0なので、利益よりもキャッシュの方が多い状況になります。
売掛金のタイミング
今売上を上げて入金が1年後の場合、利益は出ますが、回収が1年後であれば当然お金は足りなくなります。売掛金の回収期間が長いと資金繰りが悪くなることになります。
また売掛金は回収するまでは貸し倒れするリスクもあります。そのため、しっかりと取引先の与信の状況などもチェックすることが必要です。
利益とキャッシュの関係はどう考えるべき?
利益がどうキャッシュに影響するかということですが、最初は利益分はキャッシュが増えているという考え方からスタートして良いでしょう。ただ、例えば今年1,000万円利益が出たけれどお金が500万円減った場合、利益分がそのままキャッシュになるとすると1,500万円の現金が減っているということになります。その原因は貸借対照表をみることで発見することができます。貸借対照表の左側にある資産の現金・現預金以外のものが昨年より増えた場合はキャッシュにマイナスの影響があります。反対に貸借対照表の右側の負債が昨年より増えているということは、キャッシュにプラスの影響を与えています。
ただ、注意すべきなのは、これは昨年と今年を比べた今時点の話ということです。借入金などの負債が増えれば確かに今時点のキャッシュは作れますが、将来的には返済するため借入金の負債は返済と共に減っていきます。つまり負債が減っていくということは将来的にはキャッシュも減っていくということになります。逆に将来的に資産が減っていけば、車なども減価償却で価値は減っていきますがキャッシュはプラスになっていくということになります。
このように将来的な面で考えるか、今の面で考えるかによって、逆の考え方になります。
黒字倒産が多い業種とは?
前回の記事でもお伝えしましたが、在庫が多い業種は黒字倒産のリスクが高いです。黒字倒産のケースで多いのが建設業だと言われています。これは工事完了前に外注費や人件費、多額な材料費などの経費が発生します。工事が完成するまでの期間が長く、さらに工事が完成して売上が確定し、その売掛金が入金されるまでの間に資金繰りが悪化して倒産してしまうという場合があります。また、資材の高騰などで見積もりしていた金額よりも実際に工事に取りかかった時にかかった材料費の方が多かったということが発生した場合、契約にもよりますが工事を請け負った人が責任を取らなければならないというケースもあります。
また、公共工事などは財務状況などによって請け負える工事の範囲が変わるため財務状況がよくないといけないという場合があり、赤字にしにくいという面が建設業はあります。そのためそれが結果的に黒字倒産につながっているという面はあるかもしれません。
その他、製造業や卸売業は在庫や売掛金が多くなりがちな業種と言えるでしょう。売掛金の回収までに時間がかかったり、売掛金の管理がしきれず貸し倒れてしまったりということもあります。
また、世間の影響を受けやすい業種というのもリスクが高いです。アパレルなどはトレンドが変わると売れ残ってしまい、在庫を抱え処分してしまうということで、黒字倒産につながってしまうというケースもあります。
十分に検討しましょう
急成長・急拡大した時に資金繰りが急激に悪化するケースもあります。売上規模が拡大すると当然その前に仕入れが多くなったり、在庫を大量に抱えなくてはいけなかったり、各拠点に倉庫の設備投資が出てきたりと様々な経費が売上の回収よりも先に出てしまうため、かなり資金繰りは悪化します。そのため、そういった場合には金融機関と事前に十分な打ち合わせをして、その拡大するものにかかる資金を十分に検討して拡大していくということが重要です。
今回も、利益とキャッシュのズレについて解説させていただきました。
ご不安点やご相談がある場合は弊社までお気軽にご連絡ください。

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投稿日: 2025年8月11日 3:54 pm