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持株比率とは?比率ごとの株主権利と創業時に注意するポイント
持株比率は、企業の株主が所有する株式の割合を指します。 複数のメンバーで創業する場合、創業時に決定しなければならないのが、誰がどれだけの比率の株を保有するかという「持株比率」の決定です。 持株比率(出資する比率)を適当に決めてしまったせいで、後々、創業メンバーと揉めてしまうというケースも少なくありません。 これは今後の会社経営において重要な要素となるため、慎重に配分を決めなければなりません。 そこで、この記事では、比率ごとに異なる株主権利と創業時に注意すべきポイントを解説します。 持株比率とは何か? 持株比率は、特定の企業の株主が所有する株式の割合を示す指標です。一般的には、企業の発行済み株式総数に対する個々の株主が所有する自己株式の割合を計算します。 持株比率が高い株主は、企業の経営方針や意思決定に影響を与える可能性が高くなります。また、持株比率が一定の割合以上になると、議決権行使や企業経営への介入などの権利が発生する場合もあります。持株比率は、企業の株主構成や株主間の権力関係を把握する上で重要な要素です。 株主には3つの権利がある 持株比率が高い株主は、次の3つの権利を持ちます。 1. 議決権:高い持株比率を持つ株主は、企業の重要な意思決定に関与する権利を持ちます。これは、株主総会での議案に対する投票権を指します。持株比率が高いほど、株主が企業の経営方針や役員の選任に影響を与える力が増します。 2. 配当権: 株主は、企業が利益を出した場合にその一部を配当金として受け取る権利を持ちます。持株比率が高い株主は、より多くの配当金を受け取る可能性があります。 3. 情報開示権: 株主は、企業の経営状況や業績に関する情報を適切に開示する権利を持ちます。持株比率が高い株主は、企業の内部情報や戦略についてより広範な情報を入手しやすくなります。 持株比率によって行使できる権利が異なる 一般的には、持株比率が高い株主ほど、企業経営における様々な権利をより強力に行使できる傾向があります。ただし、持株比率が一定の割合以上に達すると、特定の権利が発生することがあります。例えば、多くの国や地域では、株主が特定の持株比率(しばしば5%以上)を超えると、以下のような権利が発生する場合があります。 持株比率ごとに行使できる権利 持株比率が高い株主が行使できる権利は、法律や企業の規則によって異なる場合がありますので、具体的な条件や規定に注意する必要があります。 1株持っていると行使できる権利 配当受取権、株主総会の議決権 持株比率1%以上で行使できる権利 株主総会の議案提案権 持株比率3%以上で行使できる権利 会計帳簿閲覧謄写請求権 持株比率33.4%以上で行使できる権利(1/3以上) 単独で特別決議を阻止することが可能 持株比率50%超で行使できる権利(1/2以上) 単独で普通決議を通すことが可能 持株比率66.7%以上で行使できる権利(2/3以上) 単独で特別決議を通すことが可能 持株比率90%以上で行使できる権利 株主の強制買い上げ(スクイーズアウト)を実行が可能 持株比率100%で行使できる権利 株式総会の全ての決議を単独で可決可能 複数で創業する場合の注意点 複数で創業する場合の持株比率にはいくつかの重要な注意点があります。以下にいくつか挙げてみます。 持株比率を均等にすると、トラブルに発展する可能性も 持株比率を均等にすることがトラブルに発展する可能性もあります。以下にいくつかのポイントを挙げてみます。 1、貢献度や役割の不均衡 均等な持株比率を確保する際、実際の貢献度や役割に不均衡が生じる場合があります。特定のメンバーがより多くの労力や資金を貢献しているにも関わらず、持株比率が均等であるために公平性に疑問を抱くことがあります。 2、意見の相違 ビジネスに関する意思決定や戦略において、均等な持株比率を持つ株主間で意見の相違が生じることがあります。意見の対立が解決されない場合、トラブルや企業の停滞につながる可能性があります。意見の相違によって解散するケースも少なくありません。 3、リスクへの対応の不一致 ビジネスに関連するリスクに対するメンバー間の認識や対応が異なる場合、均等な持株比率を持つ株主間で対立が生じることがあります。特に、資金調達や成長戦略に関する重要な決定において、異なるリスク許容度や優先順位が存在する可能性があります。 4、経営権の分散 均等な持株比率を持つことで、経営権や意思決定権が分散されるため、効果的な経営や意思決定が難しくなる場合があります。特に、迅速な意思決定や企業の方針の統一が必要な場合、経営権の分散が進むことで効率性や経営の一貫性に影響を与える可能性があります。 これらのポイントを考慮すると、均等な持株比率を確保する際には、事前の計画や約束事の文書化、コミュニケーションの強化など、トラブルを未然に防ぐための対策が重要です。また、柔軟性を持たせるために、持株比率に応じた役割や貢献度に基づく報酬や権限の調整が必要となる場合もあります。 代表者の持株比率は最多にする 代表者の持株比率を最多にする理由(メリット)はいくつかあります。 1、意思決定の効率性 企業の意思決定は、時に迅速かつ効果的なものである必要があります。代表者が最多の持株比率を持つ場合、経営方針や重要な決定に対して迅速かつ一貫した指針を与えることができます。このため、経営権が集中することで、組織の効率性や意思決定のスピードが向上することが期待されます。 2、責任とリーダーシップの強化 代表者が最多の持株比率を持つことで、組織の責任とリーダーシップが強化されます。彼らは企業の成功や失敗に直接的に責任を負い、そのためにより積極的に経営に関与し、企業の方向性を決定することが期待されます。 3、 投資家や取引先への信頼構築 代表者が最多の持株比率を持つことは、投資家や取引先にとっても信頼感を生み出す要因となります。企業のリーダーシップが明確であり、代表者が経営に積極的に参加していることは、企業の持続的な成長と安定性を示唆するものとして評価されるでしょう。 4、組織の一体感の強化 代表者が最多の持株比率を持つことで、組織内での一体感や協調性が強化されることがあります。彼らは自らが企業の一員であることを示し、組織全体の成功に向けて努力することで、従業員や他の株主により大きな影響を与えることができます。 これらの理由から、特に創業時は代表者が最多の持株比率を持つことを強くおすすめします。 共同創業したメンバーの一人に経営の権限が過度に集中することで意思決定の偏りが生まれ、創業メンバー同士の対立に繋がる可能性もあるため、創業時に十分に話し合っておきましょう。 行使できる権利を考えて持株比率を決める 持株比率を決める際には、創業するメンバーの人数によってもその比率のバランスは異なります。その配分をどうするかは重要な検討課題です。 当然ですが持株比率が高い株主ほど、より大きな影響力を持ち、企業の経営方針や戦略に対してより大きな影響を与えることができます。創業時のメンバーの人数によって誰がどれだけの比率を持つか、よく検討しましょう。 持株比率で失敗しない為に! 起業する際、創業メンバーごとの持ち株比率を決定することは、会社の舵取りの方向性に大きな影響を与えます。どの程度の持ち株比率がどの程度の権利を与えるのかを正確に把握し、比率を決めましょう。 特に、創業メンバーが経営権を維持したい場合、将来的には増資によって今より多くの株を発行する場合の希薄化によるリスクなど、様々な検討事項が存在します。創業メンバーの持株比率の違いが原因で人間関係が破綻することもあります。 プロゲートでは、これまでに数多くの会社設立を行い、創業者の意思と経営におけるリスクのバランスを考慮した持株比率の提案を行ってきました。持株比率でお悩みの場合や、複数人での創業を検討している方は一度プロゲートにご相談ください。下記、お問い合わせフォームよりご連絡お待ちしております。 関連記事:合同会社から株式会社に組織変更するには?費用や変更手順を紹介!
銀行から創業融資を受けられる?創業融資が可能な金融機関を紹介
融資=銀行というイメージを持つ人も多いでしょう。 しかし、創業初期となると銀行から融資を受けることは簡単ではありません。 個人や小規模なビジネスに対する創業融資を提供している銀行が全てではなく、創業融資を行っている銀行に相談しなければなりません。国内には900以上の銀行がありますので、創業融資を受けるために最適な銀行を見つけるのは難しいかもしれませんね。 今回の記事では、銀行から創業融資を受けたいとご検討の方に向け、創業融資が可能な金融機関を紹介していきます。 創業融資が可能な銀行や金融機関 国内には様々な金融機関が存在します。その中で、創業融資が可能な金融機関をご紹介していきましょう。 創業融資とは? 創業融資とは、新しいビジネスを始める事業者に必要な資金を融資する制度です。開業には仕入れや人件費、店舗の準備費用など、さまざまな経費が必要ですが、これらを全て自己資金でまかなうのは難しい場合があります。そのため、金融機関など外部から資金を調達することが一般的です。 創業融資にあたっては、個人事業主や法人であっても創業する事業体でのビジネスの実績がないため、創業者のこれまでの経験が創業するビジネスと関連があるのか、ビジネスモデルはしっかりしているか、収益性が確保されているかなどが融資のポイントとなります。 創業融資はどの銀行で受けると良い? 「信用金庫、地方銀行などの金融機関の中でどこが最適か?」という質問に対して、一概には答えられません。各種の銀行や金融機関にはそれぞれ利点と欠点があります。 別の記事でもご紹介しておりますが、創業期に限っては、日本政策金融公庫をお勧めしております。しかし、様々な側面で銀行から創業融資を受けるメリットもあります。 企業が最適な銀行を選択するには、自社の状況をよく理解し、それぞれの特性を考慮する必要がありますので、創業融資が可能な銀行を紹介していきましょう。 創業融資が可能な銀行 創業融資を行なっている銀行は大きく分けると2種類あります。それは地方銀行と信用金庫です。それぞれの金融機関の概要と特徴をご紹介していきます。 創業融資が可能な銀行(1)地方銀行 地方銀行は、地域に密着したサービスを提供しており、金利が比較的安く、大規模な資金ニーズにも対応しています。ただし、次に紹介する信用金庫よりも一歩敷居が高い場合もあります。 創業融資については主に保証協会付きの融資を提供しており、信頼性が高い信用保証協会を通じて融資を受けることができます。場合によっては、メガバンクからの断られた融資でも地方銀行からの融資を受けられることもあります。地元では強い存在感があり、地域経済に貢献しています。創業融資先を検討している場合には、まず事業を始める地域の地方銀行に融資を依頼してみると良いでしょう! 創業融資が可能な銀行(2)信用金庫 2つ目の銀行が信用金庫です。信用金庫は地域に密着した金融機関であり、小規模な会社や新興の企業にも親身になって資金を提供してくれます。ただし、金利は高めです。また、貸し出し規模が小さいため、顧客あたりの事務コストが高くなります。したがって、貸出金利はやや高めに設定されています。地方銀行よりも平均して0.5%ほど高くなりますが、地方銀行での創業融資を断られた場合の選択肢としては有効です。金利が高いというデメリットはありますが、信用金庫は地元の小規模事業者との取引が多い場合が多いので、まずビジネスを始める際に信用金庫にビジネスマッチングを頼んでみるなど、融資以外の点での活用方法もあります。メインバンクに地方銀行が決まったとしても、一度創業融資の相談をしてみると良いでしょう。 銀行から創業融資を受ける場合のポイント 銀行から創業融資を受ける際のポイントは以下の通りです。ポイントを押さえて、確実に創業融資を受けられるように準備しておきましょう。 ビジネスプランの準備 銀行は、貸し倒れのリスクを最小限に抑えるため、しっかりとしたビジネスプランを提出することが求められます。冒頭にご紹介したように創業融資は融資を受ける事業体でのビジネスの実績がないことから、経営者のこれまでの経験やビジネスモデル、ビジネスの実現可能性や将来の収益性が重視されます。創業計画だけでなく返済計画やリスク管理策などを明確に示す事業計画書の作成が必要不可欠です。 資金使途の明確化 融資を受ける目的や資金の使途を明確にし、具体的な資金の必要額を計画しましょう。銀行は、資金の使途が明確な場合に融資を行いやすくなります。創業時の資金用途は人件費・設備投資費・広告費・研究開発費などが主になりますので、どの項目で資金を使用するかを資金計画としてまとめ、どの時期に黒字化するのか、また、いつまでに返済するのかを計画していきます。特に返済計画は融資審査の際に最も重視される内容ですので、しっかりと作り込んでおきましょう。 自己資金の準備 創業融資を受ける際には自己資金の準備も重要です。銀行は、創業者自身がリスクを負担し、事業に真剣に取り組んでいることを見せることを期待しています。創業融資で希望する金額の、最低でも1割は自己資金として用意したいところです。 営業実績や信用履歴の確保 創業者や事業者が過去に持つ営業実績や信用履歴があれば、それを銀行に示すことで、融資の審査が有利に進むことがあります。 担保の提供 創業融資を受ける際には、担保の提供が求められる場合があります。土地や建物、機械設備などの資産を担保にできるかどうかを確認しましょう。 審査にかかる時間や手続きの確認 銀行によって審査にかかる時間や手続きが異なるため、それらを事前に確認し、十分な準備を行いましょう。 金利を含めた銀行に返済するための金額と期間を計画しておく 創業融資を受けた場合、返済時には創業融資の元本に加えて利子の支払いが必要となります。返済計画には、創業融資の元本に加えて月々の利息を加算した計画を立てましょう。短期間で返済ができればその分支払う利子は少なくなりますが、その一方で事業に必要な資金まで返済に充ててしまってはビジネスを進めることはできません。事業に必要な資金と返済の資金のバランスを取った計画を心がけましょう。 自己資金がどれだけ必要かを確認 多くの場合、銀行や信用金庫から融資を受ける際には、創業資金の1割〜3割程度の自己資金を用意することが求められます。 ただし、この割合は金融機関によって異なり、また自己資金の割合が高ければ必ずしも融資を受けられるとは限りません。金融機関からの融資は、自己資金だけでなく、経験や実績などの要素も総合的に審査されます。そのため、自己資金の割合は審査の一部であることを認識しておくことが重要です。 関連記事:自己資金なしでも創業融資は受けられる?注意点を解説 信用保証料の金額や代表者の個人保証があるかを確認 信用保証協会は、中小企業や小規模事業者の資金調達を円滑にするために設立された公的機関です。中小企業や創業者が金融機関から融資を受ける際には、大企業と比べて経営リスクが高く、信用面でのハードルが高いことがあります。しかし、信用保証協会が事業者の債務保証を行うことで、金融機関からの融資がより容易になります。具体的には、信用保証協会が債務保証を行うことで、金融機関が融資先事業者の倒産などで債権回収が困難になった場合でも、信用保証協会が残債を代位弁済するため、金融機関は債権回収を行うことができます。これにより、金融機関は中小企業などへの融資をより安心して行うことができます。 融資実行までの期間と経営のタイミングを確認 多くの場合、事業を開始する前に創業計画書などを提出し、事前融資を受けるケースが一般的です。ただし、事業が開始されてから税務申告を2期終えていない場合でも申請することが可能です。この期間は金融機関によって異なる場合がありますので、地元の地方銀行や信用金庫で確認することをおすすめします。 法人の場合、税務申告は会社設立日から始まり、初めての決算日が1期目の終わりを示し、2期目の終わりは2度目の決算日になります。会社設立日は創業日ではなく、法人登記日を指します。決算日は各会社によって異なるため、創業融資の利用期間も会社ごとに異なります。 一方、個人事業主の場合、税務申告は12月31日で1期が終了し、開業届を提出した後、最初の12月31日が1期の終了を示し、2回目の12月31日が2期の終了を示します。個人事業主の場合、1月1日に開業届を提出すると、創業融資を最大限に活用できる期間が確保されます。 創業融資実行率90%以上! 今回は、創業融資はどの銀行から受けるべきかについて解説してきました。 冒頭でもお伝えした通り、創業融資においてまず考えるべきは日本政策金融公庫でしょう。 税理士法人プロゲートでは、宮城県仙台市を中心に地域密着で中小企業や個人事業主の方々をサポートしております。 創業期の第一の課題である「資金調達」を全面的にサポート致します。 完全成果報酬でお受けしておりますので、まずはご相談だけでも下記お問い合わせフォームからお待ちしております。 関連記事:日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の流れをプロセスごとに解説 関連記事:起業家必見!日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の必要書類を紹介 関連記事:融資を受けるなら税理士に相談した方がいい?依頼するメリットを紹介
フリーランスの開業届の書き方と出すメリットとは?
これまで会社員など組織で働いていた人が独立して、フリーランスとして活動する場合に気になるのが「開業届を出すべきかどうか」です。開業届の提出にはどんな意味があり、どんなメリットがあるのでしょうか。また、開業届を作成する際にはどんな注意点があるのでしょうか。 今回の記事では、そんなフリーランスの開業届の書き方について解説し、提出方法や開業届と一緒に提出すべき書類や注意点についても紹介していきます。ぜひ、参考にしてください。 フリーランスは開業届を提出するべき? 結論からいうと、開業届の提出は必須ではないです。しかし、メリットが多いのも事実なので開業届を提出する場合とそうでない場合の違いなど知っておくと良いでしょう。 では、フリーランスが開業届けを提出する理由と、そのメリットについて解説していきます。 開業届とは? 働き方が多様化した現在、独立や副業で何か新しい仕事を始めることは珍しいことではありません。職業の幅も広がり、オンラインで仕事をしている方も多いでしょう。 例えば、趣味を活かしてそば屋を開業したり、子育てが一段落してからネイルサロンを自宅で営んだり、海外での経験を生かして翻訳業務を始めたりする人がいます。このように自分でビジネスを始める際や、ビジネスを辞める際に税務署に提出する書類が「開業届」です。この書類は正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。 開業届を提出することにより、個人事業主として税務署に登録され、確定申告の時期になると申告書類が郵送されます。開業届は、事業開始から1か月以内に提出することが所得税法で定められていますが、出さなくても罰則はありません。開業届を提出しなくても、その年の事業収支をまとめて確定申告すれば、それが開業届の代わりになります。 しかし、対外的に「独立開業しました」と宣言するためには正式な手続きを踏むことが重要ですので、ビジネスを始めるタイミングで開業届を提出すると良いでしょう。フリーランスや副業で継続的に収入を得ている場合も、事業として認められる場合は開業届を提出することで、様々なメリットを享受できます。 フリーランスが開業届を提出することで得られるメリット フリーランスが開業届けを提出するメリットは「青色申告」を行えることにあります。開業の際には「白色申告」「青色申告」という2種類の選択肢がありますが、青色申告を選択することによる最大65万円の税控除を得られるメリットがあります。 青色申告をすることで受けられる最大65万円の控除は、複式簿記に基づく記帳やe-Taxを通じた申告など特定の要件を満たす必要があります。また青色申告は家族への給与支払いを経費として計上できたり、損失を3年間繰り越したりすることが可能です。また、30万円未満の備品を一括で経費計上することもできるなど、様々なメリットがあります。 青色申告を行うためには、原則として「所得税の青色申告承認申請書」を事業開始から2ヶ月以内に提出する必要があります。開業初年度から青色申告を希望する場合は、開業届とともにこの申請書を提出しましょう。 他にも、開業届けに屋号を記載して提出することで、事業用の銀行口座を屋号名で開設することができます。これにより、個人の資金と事業の資金を区別しやすくなり、経理処理や資金管理が容易になります。また、屋号があることで事業の正式性が高まり、取引先からの信頼を得やすくなります。 また、個人事業主として事業を営んでいることの公式な証明書となります。これは、オフィスや店舗の賃貸契約、融資の申込み、保育園の入園申込みなど、様々な場面で必要とされます。 小規模企業共済への加入は、退職金制度の一種で、個人事業主や小規模企業の経営者が対象です。退職後の生活のための積立として機能し、掛金は全額所得控除の対象となります。事業開始後すぐに確定申告を行っていない場合は、開業届の控えが加入の際に必要となります。 総じて、開業届を提出することは、手間と感じるかもしれませんが、その後の事業運営や税務処理において多くの利点があります。 フリーランスの開業届の書き方 続いて、開業届の書き方を紹介していきましょう。 税務署かインターネットで開業届を入手する まずは開業届を入手しましょう。開業届は最寄りの税務署で入手するか、検索して国税庁webサイトからダウンロードして、印刷する二通りの方法で入手可能です。 開業届を入手したら、ボールペンなどで必要事項を記載していきます。 所得税の青色申告承認申請手続き 提出先と納税地 提出する税務署の名前と提出する日付を記載します。 所属する税務署は、国税庁のwebサイトで確認できます。 住所(現住所)、居所地(一時的住所)、事業所の中から納税地を選び、住所と電話番号を記入します。納税地をどこにするかは任意ですが、基本的には事務所がある場所の住所を納税地としましょう。 創業者の個人情報 氏名、任意、マイナンバー: 氏名、任意と12桁のマイナンバーを記載します。使用する印鑑は個人名でも屋号でもどちらでも可能です。屋号の印鑑を用意していない場合には、個人の印鑑で対応しましょう。 屋号と事業の概要 屋号がある場合は屋号名を記入します。屋号を記載すると、その屋号の名義で銀行口座を開設できるようになります。個人のお金と事業用のお金を分けて管理するのは事業の透明性の確保や、確定申告や決算時に便利ですので、屋号を登録しておくことをおすすめします。 また事業の概要の項目では、主として取り組む事業内容を具体的に書きます。事業内容がわからない場合には産業分類から近いものを見つけ、事業内容を記載しておくのが良いでしょう。 従業員と給与について 従業員情報欄は、従業員が存在しない場合は記入不要です。ただし、家族など青色事業専従者を雇っている場合は「専従者」欄に人数を、その他の従業員がいる場合は「使用人」欄に人数を記入してください。 給与の源泉徴収義務に関する項目では、従業員に給与を支払う場合、源泉徴収して所得税を納税する必要があるため、「有」を選択します。この項目は、従業員に給与を支払う際に源泉徴収を行う必要があるかどうかを確認するためのものです。 開業届の提出期限は開業から1ヶ月以内 開業届の提出期限は開業から1ヶ月以内とされています。開業日は任意ですので、自分の希望とする日を開業日にして記載すれば問題ありません。多くの場合「大安」や「一粒万倍」など日柄が良い日が選ばれたり、自分や家族の誕生日などの記念日を選択します。 フリーランスの開業届の提出方法 開業届が完成したらいよいよ提出です。続いて開業届の提出方法について紹介していきます。 フリーランスの開業届は税務署に提出 作成した開業届は、作成時に記載した管轄の税務署に提出します。開業届の提出方法は税務署の開庁時間に窓口で提出するか、税務署に設置されている時間外収受箱への投函、郵送での提出、e-Taxでの提出などの方法があるので、任意の方法で提出します。 提出時に準備するもの 開業届を提出する前に、すべての必要書類が揃っているかをチェックしましょう。提出方法によって準備する書類が異なるため、以下の項目を確認しておきましょう。 1、直接提出する場合に必要な書類 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)と開業届のコピー マイナンバーカードまたはマイナンバーの確認書類 直接税務署へ提出する際は、マイナンバーカードを忘れずにご持参ください。また、開業届の控えは自分で用意する必要があるので、事前にコピーを準備しておくと良いでしょう。開業届の提出が完了するとコピーに受付印が押されます。この受付印があることで開業届の控えが公的な書類として認められるため、注意しておきましょう。 2、郵送または時間外収納箱を利用する場合に必要な書類 開業届と開業届のコピー マイナンバーカードのコピー 返信用封筒(自分の住所記載、必要切手貼付) 郵送や時間外収納箱で提出する場合、マイナンバー確認書類のコピーと返信用封筒が必要になります。 郵便用封筒には自宅や事務所などの住所を記載し、正しい切手を貼ってください。 税務署への書類送付は、書留郵便やレターパックなど追跡可能な方法で行うことをお勧めします。 開業届以外にも提出するべき書類がある 開業届を作成して提出するのであれば、一緒に提出しておくと良い書類がいくつかあります。何度も税務署に足を運ぶのは手間なので、事業形態にあわせた書類を作成し、一緒に提出しましょう。書類の種類については次章で解説していきます。 開業届と一緒に提出するべき書類 開業届の作成と提出に併せて提出すると良い書類がいくつかあります。一緒に提出すべき書類がある場合には、そちらも作成して提出しましょう。 青色申告承認申請書 青色申告承認申請書は正式には「所得税の青色申告承認申請書」といいます。フリーランスが開業届を提出する最も大きなメリットが冒頭に紹介した青色申告での確定申告です。 確定申告を青色申告の方式で行う際には、その年の3月15日までに、開業届と合わせて所属する税務署へ提出する必要があります。この申請書を提出しないと、自動的に白色申告として扱われるので、忘れずに提出しましょう。 青色事業専従者給与に関する届出書 事業主が家族に給与を支出することは一般的に認められていませんが、青色申告で「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出するとことで家族への給与を経費として計上することが可能になる「青色事業専従者給与の特例」が利用できます。 青色事業専従者給与を適用する条件には、 給与徴収家族が事業主と居住している配偶者や親族であること その年の12月31日時点で15歳以上であること 専従者事業として6か月以上従事していること 支払われる給与がその従業員に対する適切な金額であること が含まれます。これらの条件を全て満たした上で、「青色事業専従者給与に関する届出」 を税務署に提出することで家族への給与を経費計上できます。 ただし給与の金額設定に際しては、労務の対価としての考慮性を考慮し、他の従業員との比較や業務内容の価値を適正に評価することが求められますので、極端に高い給与を家族に支払うことはできません。 源泉所得税に納期の特例の承認に関する申請書 フリーランスが従業員を雇用している場合、雇用主として従業員の源泉徴収し、翌月10日までに支払う義務があります。毎月、手続きを行うことは大変なので、「源泉所得税の納期の特例」によって年間の納税回数を12回から2回に軽減されます。この特例の申請資格は、従業員数が10人未満の小規模事業者に限定されています。 この特例を利用すると、源泉徴収税の納税は年2回、前期(1月から6月)の税金を7月10日まで、後期(7月から12月)の税金を翌年の1月20日までに納税することで源泉徴収の手間を省くことができます。従業員を雇用している場合には「源泉所得税に納期の特例の承認に関する申請書」も忘れずに提出しましょう。 個人事業開始申告書 個人事業開始申告書は、自分が事業を立ち上げたことを都道府県や市町村へ報告する際に必要とされる文書です。これを提出することで、地方税に関わる手続きを進めることができます。開業届は事業開始を国税局へ報告するためのもので、主に所得税の申告に使われます。 これに対して「個人事業開始申告書」は地方税である個人事業税に関する報告用です。個人事業開始申告書は税務署ではなく都道府県事務所と市町村役場の税務関連部署で入手し、その場で提出します。この時に開業届の控えを見せる必要があるので、開業届を提出してから個人事業開始申告書を提出しましょう。 結論:開業届は提出しよう 今回は、フリーランスの開業届の書き方や提出方法についてご紹介してきました。 フリーランスとして開業するのであれば、開業届と同時に青色申告承認申請書を提出することで様々なメリットがありますので、一緒に提出しておきましょう。また、他にも開業届と同時に提出すると良い書類がありますので、ご自身のビジネスで必要な書類があれば作成しましょう。 開業届を提出するデメリットを挙げるとすれば「手間がかかる」ことくらいですので、提出すべき書類がよく分からないという方はいつでもご連絡ください。 税理士法人プロゲートでは、フリーランスや個人事業主の方々のサポートを提供しており、開業届の提出だけでなく税務全般の支援を通して事業主様が本業に専念できるようサポートしています。もし起業に関するお悩みや不安があれば、お気軽にご相談ください。
日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の流れをプロセスごとに解説
新しいビジネスを立ち上げる際、最初に立ちはだかるハードルが「資金調達」です。 自己資金のみで事業をスタートさせるのは簡単ではなく、多くの場合は創業融資などの資金調達を行って初期投資の費用を調達します。その際におすすめなのが日本政策金融公庫の創業融資です。 そこで今回は、日本政策金融公庫での創業融資を受ける流れについて基本から詳しく解説していきましょう。これから会社を設立される方、開業される方は是非参考にしてください。 関連記事:起業家必見!日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の必要書類を紹介 日本政策金融公庫がおすすめ そもそも、なぜ創業融資の際に銀行よりも日本政策金融公庫がおすすめなのかを解説していきましょう。 日本政策金融公庫とは 日本政策金融公庫は国が全ての株式を保有している政策金融機関で、「株式会社日本政策金融公庫法」によって設立されました。2008年10月に国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫の3つの金融機関が統合され、主に民間の金融機関が対応しづらい中小企業への支援や、個人への支援、これから新たに事業を始める起業家に対して融資を提供することを目的としている金融機関です。 日本政策金融公庫と他の金融機関の違い 日本政策金融公庫の役割は、民間金融機関を補完することにあります。民間の金融機関から見るとリスクが高く融資しにくいケースでも、日本政策金融公庫が支援を提供することで、多くの中小企業の成長や起業家の育成を手助けしています。 日本政策金融公庫は国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3つの分野で事業を展開しています。これらは、それぞれの対象者に特化した融資や経営支援サービスを提供しており、日本経済の成長と地域社会の活性化に貢献しています。この中の国民生活事業で小規模事業者や起業家には、無担保融資の選択肢も含めて、経営面での多角的な支援を行っています。 創業融資を受ける場合の流れ 続いて、日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の手続きについて解説していきます。 創業融資を受ける前にチェックしておくこと ます、日本政策金融公庫の創業融資を受けるためには事前にチェックすべきポイントがあります。一つでも該当すると創業融資を受けるハードルが高くなるので該当項目がないかチェックしておきましょう。 過去にクレジット関連の問題はない? 光熱費や家賃などの支払いが遅れていない? 税金の支払いを滞納していない? 過去5年以内に自己破産や一時整理をしていない? 消費者金融やクレジットカードの多重借入はない? 自己資金が適切に準備されている?(事業に必要な資金の1割以上) ①日本政策金融公庫への面談申し込み 続いて申請準備に移ります。申請書類の提出は郵送やオンラインでも可能ですが、書類に不備がないかなどが心配であれば、直接支店へ訪問して窓口で申請することも可能です。宮城県の場合、仙台支店と石巻支店がございます。 また日本政策金融公庫の「事業資金相談ダイヤル」に電話して、融資制度の詳細やプロセスについて相談することもできるので、申請手続きが不安な場合は相談してみても良いでしょう。 ②日本政策金融公庫の創業融資に必要な提出書類の準備 申込方法を理解したら、次は提出書類の準備に移ります。必要な提出書類については別の記事で詳しく紹介していますので、書類の内容について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。 日本政策金融公庫の創業融資の申請に必要な書類リストは以下の通りです。 借入申込書 創業計画書 資金繰り計画書(任意) 履歴事項全部証明書(法人の場合) 見積書(資金利用目的が資金設備の場合) 不動産登記簿謄本または登記事項証明書(不動産担保希望の場合) これらの書類を準備したら、いよいよ融資担当者との面談に移ります。 ③日本政策金融公庫の担当者との面談 申請書類を提出すると、日本政策金融公庫から面談の日程調整に関する連絡が入ります。 通常、申請後約10日程度で面談が設定されることが多いです。 この面談で、提出された書類や事業計画の実現可能性がチェックされ、申請者の信用情報も同時に確認されます。ここで最も重視されるのは起業家の熱意と覚悟、そして十分に作り込まれた事業計画かどうかです。事業計画だけでなく、現在の事業の状況に関する質問もされるため、全般にわたって回答できるように準備しておきましょう。 また、自己資金をどのように捻出しているか、これからの資金繰りをどのように考えているかは詳細に確認されますので、しっかり計画を立てておきましょう。面談の時間はおおよそ1時間程度です。面談の際は、正しい服装選びやマナーも評価の対象になりますので、十分に注意しておきましょう。 ④日本政策金融公庫からの創業融資決定 面談後に日本政策金融公庫の内部で融資の可能性が審査されますが、事業内容によっては融資担当者がオフィスや設備投資を計画している工場などの現場確認を行います。そのため融資決定がいつ下されるかはケースバイケースですが、基本的には1週間から2週間程度で融資されるかどうかが決定します。 融資審査を通過した場合、資金契約を結ぶために必要な契約書や借用書などの文書が送られてきます。これらの文書に必要な情報を記入し、日本政策金融公庫に返送することで、融資契約が成立します。 ⑤創業融資の入金と返済 融資契約の完了後、日本政策金融公庫から融資金が振り込まれます。 通常、契約関連書類が公庫に届いてから3営業日以内に、指定された銀行口座に資金が入金されます。 その後、返済スケジュールに基づいて借入金の支払いが始まります。仮に据置期間が設定されている場合、その期間は利息のみの支払いで借入金の支払いは行われません。スケジュールに従って、計画的に返済を行わないと追加融資が受けられない、他の金融機関での借入にも影響するため、返済計画は必ず守るようにしましょう。 創業融資決定までの期間 ここまで日本政策金融公庫の創業融資の流れを紹介してきました。次は創業融資が決定するまでの期間について紹介していきます。 創業融資までの期間は1ヶ月半程度 日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合、1ヶ月〜1ヶ月半で融資が決定されます。しかし、実際には書類準備に時間がかかることや、提出書類に不備があったり、融資担当者とのスケジュール調整が難航し面談日が設定されにくいなど、創業融資までの期間が長くなることがよくあります。特に融資額が大きい場合は、審査に必要な書類が多く、審査期間も長くなる傾向にあります。 そのため、資金が必要な時期の2〜3ヶ月前から、余裕を持って準備を始めることをお勧めします。 審査期間が延長する主な理由には以下のようなものがあります。 提出した書類に不備が存在する 現地調査が必要とされる ビジネスモデルが複雑である場合 保証や保証人の条件がある場合 このように審査期間が延長する原因は、日本政策金融公庫の状況だけでなく、申込者自身の都合によることもあります。これらの原因が複数ある場合もあるので、申込者自身に該当する可能性がある項目を事前に確認し、準備することが肝心です。 創業融資の審査に落ちた場合は半年〜1年後に再度申請する もし、創業融資の審査が不合格となった場合は、期間を空けて再度申請することが可能です。この場合、最低でも半年、できれば1年は期間を空けると良いでしょう。 融資審査に不合格となった場合、まず行うべきは不合格となった原因の分析です。 融資の希望額、事業計画の質、信用情報に問題があるなど、原因は多岐にわたります。基本的には結果の通知のみですが、融資担当者が不合格の理由を通知してくれる場合もあるので、その情報を元に状況を改善していきます。 関連記事:日本政策金融公庫から電話がかかってくるのはどんな時?対応の仕方や注意点を解説 成果報酬!創業融資サポート 今回は、日本政策金融公庫の創業融資の流れについて説明しました。日本政策金融公庫の創業融資の申込から実行までには、最短でも1カ月〜1ヶ月半程度の時間が必要です。融資をスムーズに進めるためには、事前の準備が重要です。 税理士法人プロゲートでは、日本政策金融公庫の創業融資を含む融資サポートを提供し、事業主様が本業に専念できるようサポートしています。もし融資に関するお悩みや起業の不安があれば、お気軽にご相談ください。実績も多くございますのでご安心ください。 私たちは起業の成功を目指し、不安や悩みを解消し、着実に準備を進めていくお手伝いをいたします! 関連記事:銀行から創業融資を受けられる?創業融資が可能な金融機関を紹介 関連記事:仙台市|会社設立をするなら専門家に依頼するべき?失敗しない方法や創業サポートについて 関連記事:融資を受けるなら税理士に相談した方がいい?依頼するメリットを紹介
起業家必見!日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の必要書類を紹介
新しいビジネスを始めようと考えた際、避けて通れないのが「資金調達」です。 自己資金だけで事業を始めることは難しく、多くの場合、外部からの調達が必要です。店舗を開業したいけれども、資金の調達方法や自己資金が限られている場合、開業できるのか。また、融資を受けるために必要な具体的な書類は何かを知りたいと思うのではないでしょうか。 今回は、資金調達の手段の一つである「日本政策金融公庫」の創業融資を受ける際のプロセスや必要な書類に焦点を当ててまとめてみました。 関連記事:日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合の流れをプロセスごとに解説 日本政策金融公庫|主な創業融資 まずは、日本政策金融公庫でどのような創業融資が受けられるかを紹介していきます。 日本政策金融公庫とは 今回紹介するのは、日本政策金融公庫の創業融資についてですが、まずはこの機関がどのような存在なのかを理解しましょう。 日本政策金融公庫は、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫など4つの機関が統合され、2008年10月に新たに設立された政府系金融機関です。 この公庫は、主に民間の金融機関が対応しづらい中小企業やこれから新たに事業を始める起業家に対して融資を提供することを目的としています。そのため、通常の銀行からの融資が難しいとされる層に対して、積極的な支援を行っていることが特徴です。 日本政策金融公庫で受けられる主な創業融資 日本政策金融公庫で受けられる主な創業融資は以下の4点です。創業融資を受けるタイミングや条件、事業内容からどの融資を受けるかを検討していきましょう。 新規開業資金 「新規開業資金」とは、新しく事業を始めるか、事業を始めてから約7年以内の個人や企業を対象にした、公庫が提供する創業関連融資の一種です。新規開業資金を利用する場合の条件は以下のいずれかの条件に合致している必要があります。 創業予定の業種で通算して6年以上の経験がある 創業予定の業種が大学等で修得した技能に関連しており、創業予定の業種で2年以上の経験がある 技術革新やイノベーションの促進など、多様なニーズに対応する事業を新たに始める 創業によって雇用の創出が期待できる 市町村が実施している「認定特定創業支援等事業」を受けて創業する 経済産業省が認定した創業スクールを受講して創業する 日本政策金融公庫が参加する地域の創業支援ネットワークの支援を受けて創業する 銀行などの民間金融機関と日本政策金融公庫による協調融資を受けて創業する 上記の条件に該当しない場合でも、適正な事業計画を策定し、計画を実行できる能力がある 生活衛生新企業育成資金 飲食業や理・美容業、ホテルや旅館業で創業する場合には「生活衛生新企業育成資金」の利用が可能です。これは、地域経済の活性化には生活衛生分野での創業支援が必要という方針のもとに実施されている制度で、適用される業種は飲食店や喫茶店、理・美容、旅館、クリーニングなどです。 新創業融資制度 「新創業融資制度」は、基本的には無担保・無保証人で大規模な融資を受けることが可能です。この制度は民間の金融機関よりも金利が低いことが特徴です。 創業時の資金調達は、通常の経営時とは異なり、過去の実績がないため事業計画書が中心となります。自己資金の割合が融資条件に影響する点も留意すべきです。一般的に、自己資金の要件が厳しい中、「新創業融資制度」は自己資金割合が比較的低いため、多額の融資が可能です。 この制度は無担保で、最大3,000万円(そのうち運転資金は1,500万円)までの融資が原則として可能です。ただし、「新創業融資制度」は「新規開業資金」と組み合わせて利用されることが一般的であり、組み合わせる融資制度によって金利や返済期間が変わります。融資条件は申込者の状況や事業計画に基づいて窓口で紹介されます。 挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン) 「挑戦支援資本強化特別貸付」は資本性ローンとも呼ばれ、無担保、無保証人での借り入れることができる融資です。返済期間は5年1ヶ月以上20年以内で、期限一括返済のため元本分の返済が不要という大きなメリットがあります。 ただし、毎月の返済では元本ではなく利息の支払いが必要です。この利息は年ごとに業績に応じて変動し、業績が低調な場合は低い利率で、好調な場合は高い利率で利息負担が増加します。 公庫で創業融資を受ける流れ 日本政策金融公庫で創業融資を受ける流れを紹介していきます。 ①創業融資の申込み 書類提出は郵送やオンラインで行うことが可能ですが、書類の不備が心配な場合は、支店を訪れて申し込むことも一つの選択肢です。ただし、注意が必要なのは、事業計画の実現可能性が低いと判断されたり、希望額が計画に不釣り合いだと判断される場合、面談前に公庫から断られることがあるという点です。 自ら日本政策金融公庫に創業融資を申し込む場合、実行確率はわずか50%程度と言われています。そのため、公庫への申込み前に、公庫融資の実績が豊富な税理士などの専門家に相談し、創業計画書の内容を専門家視点で確認してもらうことをお勧めします。 ②担当者との面談 申込書類を提出すると、融資担当者から連絡があり、面談を実施します。面談では提出書類の内容や事業計画が適正かを確認し、併せて申込者の信用情報が確認されます。 ここで最も重要なのは事業の実現可能性です。事業計画の作り込みが甘いと事業が成功する可能性が低いと判断されてしまい、融資が受けられなくなってしまいます。 また、信用情報はクレジットカードやローンなどの信用取引における利用履歴であり、日本政策金融公庫の担当者は融資の可否を判断する際に申込者の信用情報を参照します。信用情報には、申し込みや契約に関する情報だけでなく、返済状況や取引履歴などが登録されています。事業の実現可能性が高くても、信用情報に問題があると判断されると返済能力が無いとされ、融資を受けられない場合があります。 ③審査結果の通知 審査の結果は、面談後10日から数週間ほどで、郵送にて通知されます(繁忙期などは遅れることもあります)。税理士などの専門家を介して公庫融資を申し込んだ場合、審査結果通知までの期間が短縮されることもあります。 融資が承認された場合、借用証書などの書類が郵送されます。しかし、公庫での融資だけでは計画していた資金調達額に足りない場合は、他の調達方法を考えるべきです。複数の金融機関から借り入れる場合、返済プランが複雑になる可能性があるため、その際は専門家に相談してみましょう。 ④入金 借用書を提出したら、数日で指定した口座に入金されますので、入金された金額が借用証書に掲載された金額と一致しているか確認するようにしましょう。入金後は、事業計画に記載した内容に沿って資金を活用していきます。 関連記事:日本政策金融公庫から電話がかかってくるのはどんな時?対応の仕方や注意点を解説 創業融資|申込み時の必要書類6点 申し込みが確定したら、新創業融資に必要な書類を整備していきましょう。 以下が新創業融資に申し込む際に必要な書類の一覧です。 特に、借入申込書と創業計画書は、どの業種であっても必須の書類です。 1、借入申込書 借入申込書は、創業融資を受けるための申込書です。借入申込書には氏名、申込金額、借入希望日、返済期間、使用用途などを記載します。借入申込書を入手するためには、近くの場合、日本政策金融公庫の仙台支店で受け取るか、日本政策金融公庫のウェブサイトからダウンロード可能です。 日本政策金融公庫_公式サイト 2、創業計画書 創業計画書は、事業開始の動機、経営者の略歴、提供するサービス、必要資金と調達方法、事業計画などを具体的に記述する書類です。一般的には「事業計画書」と呼ばれる計画書を作成しますが、日本政策金融公庫では、創業前は「創業計画書」、創業後は「企業概要書」を事業計画書として取り扱い、審査などで使用します。創業計画書は創業融資において最も重要な書類ですので、しっかりと作り込んでおくことが必要です。 創業計画書を記入する際には、起業の背景と独立に至るまでの具体的な準備過程や取り組んできたことを明示し、事業で実現したい具体的な目標や社会貢献に焦点を当てましょう。また、企業としての実績が無いので経営者の経歴が重視されます。経営者が持つべき知識や経験があることを具体的にアピールすると良いです。 関連記事:融資を通しやすい事業計画書の書き方とは?ポイントなどを紹介 3、資金繰り計画書 資金繰り計画書は、創業後の資金の出入りを計画するために作成します。企業において損益と資金繰りは別の概念であり、利益が多くても手元の資金が十分でないことがあります。資金繰りを怠ると支払いの遅れが生じる可能性があります。計画を通じて資金の動向を把握すれば、支払いに備えて資金を調達するなどの対策が可能です。資金繰り計画書の提出は任意ですが、融資の際には提出するのが一般的です。 4、履歴事項全部証明書(法人の場合) 履歴事項全部証明書は、法務局に登録された企業情報を証明する文書です。この証明書には現在の企業情報に加えて、請求日の3年前以降に変更または抹消された情報も含まれています。法人の場合は会社設立時に登記されており、履歴事項全部証明書は法務局で入手可能です。 5、見積書(資金の使用用途が設備資金の場合) 創業融資で設備を購入する場合、設備の見積書の提出を求められる場合があります。創業時に設備が必要なのであれば、創業融資の申込前に見積書を取得しておきましょう。 6、不動産の登記簿謄本または登記事項証明書(不動産の担保を希望の場合) 不動産を担保として融資を申し込む場合、不動産の登記簿謄本か登記事項証明書が必要です。これは、担保にする不動産の所有権が申込者にあるか、不動産にどれだけの価値があるかを評価する必要があるからです。不動産の登記簿謄本は法務局で入手可能です。 創業融資|面談時の必要書類6点 創業融資の申込に必要な書類を提出すれば、次は融資担当者との面談に移ります。面談で融資の可否を判断されるので、必要な準備物は必ず揃えて面談に臨みましょう。 面談時に必要な書類は以下の6点です。 1、預金通帳 まず準備するのは預金通帳です。預金通帳は直近6ヶ月以上の取引明細が記載された普通預金、定期預金、積立定期預金の通帳原本です。 また、公共料金(水道、電気、ガス代)や住宅ローン、クレジットカードの引き落としが行われている通帳や自己資金を積み立てた通帳、家族名義の通帳(家族名義で公共料金などが引き落とされている場合)の提出が必要な場合がありますので、事前にどの通帳を用意すべきかを担当者に確認しておきましょう。 2、勤務時の源泉徴収票または確定申告書直近2年分 創業前に会社員であった場合は、直近2年間分の源泉徴収票が必要です。自営業や会社員の場合でも自分で確定申告を行っている場合は直近2年間分の確定申告書を用意します。 3、借入金の返済予定表 代表者が個人的に借入をしている場合は、返済予定表を持参します。併せて借入金の毎月の支払額や残高が明確に記載された通帳や書類を用意します。 4、固定資産税の課税明細書と固定資産税の支払い領収書 もし所有している不動産(例えば持ち家)がある場合は、固定資産税課税明細書と固定資産税の領収書を持参します。固定資産税課税明細書は通常、自宅に毎年4月から5月頃に郵送されてきます。もし手元にない場合には不動産がある自治体の税務関係の部署に問い合わせて入手することも可能です。 5、動産の賃貸借(予約)契約書又もしくは物件概要書 創業時に店舗や事務所を借りる際には、その物件の「賃貸契約書」または「物件概要書」を持参します。また、自宅で事業を始める場合でも、自宅が賃貸物件であれば、自宅の「賃貸契約書」を持参する必要があります。 もし、融資の申し込み時点でまだ賃貸契約が結ばれていない場合は、「賃貸予約契約書」または「物件概要書」を不動産会社から入手して提出します。 6、本人確認書類 代表者の本人確認書類(免許証・パスポート・マイナンバーカード)を持参します。事前に本人確認書類のコピーを提出している場合には、事前に提出したものと同じ本人確認書類を持参してください。 融資実行まで1ヶ月ほど必要 今回は、日本政策金融公庫の「創業融資」の申込時と面談時に必要な書類について説明しました。日本政策金融公庫の創業融資の申込から実行までには、最短でも1ヶ月程度の時間が必要です。スムーズに進めるためには、事前の準備が重要です。日本政策金融公庫の「創業融資」の融資審査を通過するためには、創業計画書をしっかりと作り込んでおくことが大変重要です。 税理士法人プロゲートでは、日本政策金融公庫の創業融資を含む融資サポートを提供し、事業主様が本業に専念できるようサポートしています。 融資に関するお悩みや不安があれば、お気軽にご相談ください。 関連記事:銀行から創業融資を受けられる?創業融資が可能な金融機関を紹介 関連記事:仙台市|会社設立をするなら専門家に依頼するべき?失敗しない方法や創業サポートについて 関連記事:融資を受けるなら税理士に相談した方がいい?依頼するメリットを紹介